ジャパニーズ・ポップパンクリバイバルとしてMyGO!!!!!を聴いてみる
バンドリ発のバンド、MyGO!!!!!のファーストアルバム、「迷跡波」がリリースされた。
アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」を見て知ったのだが、あまりにもアニメもバンドの曲も自分の好みにドンピシャで、ドはまりしてしまった。アルバムがリリースされてからは何度もリピートして聴いている。
アルバム収録曲のほとんどがシングルでリリースされているため、純粋な新曲は5曲目の「歌いましょう鳴らしましょう」だけだが、アニメ内で流れたもののシングルカットされていなかった「春日影」が聴けるようになり、しかもその後の曲順が「詩超絆」、「迷路日々」と続くのが本当に良い。アニメ第9話のライブシーンを見たときの感動が蘇ってくる。
MyGO!!!!!の曲のほとんどがメロコア系の疾走感あるナンバーなのも自分がドはまりした理由だ。学生時代、ギターロックばかり聴いていた自分にはたまらないサウンド。これがアニメのひりつく人間性を核にした青春ドラマと非常にマッチしていた。
ところで、私はアルバムを聴いてふと、「MyGO!!!!!を日本のメロコア・ポップパンクの流れに位置づけられるんじゃないか」と思った。昨年大ヒットした「ぼっち・ざ・ろっく」の作中バンド、結束バンドが下北系として位置づけられたように。
ただ、正直言うとあまり音楽を歴史的、系統的に聴いてこなかったので、日本のメロコア史的なものもちゃんと把握できていない。なのでここではMyGO!!!!!の音楽的な特徴を、日本の他のアーティストと関連付けられないかということを思いつくままに書いてみたいと思う。
ちょうどいま、世界的にポップパンク・リバイバルというブームが起きている(いや、起きていたか? 2023年現在だと少し下火になっている気もする)。それにちなんでMyGO!!!!!もそういったリバイバル的に歴史を参照したバンドと捉えてみたいと思う。
ハイトーンボーカルとフォーリミ
私が最初に聴いたMyGO!!!!!の曲はアニメOPの「壱雫空」だった。
これを聴いて真っ先に思ったのが「フォーリミっぽいな」だった。
04 Limited Sazabys、確実にテン年代の日本のメロコアを語るうえで外せないバンドだろう。
個人的にも初めて聴いたときは衝撃を受けた。その理由はなんといってもベースボーカルGENのハイトーン。男くさく荒々しい海外のメロコアやポップパンクを聴いていた身としては、こんなに高い声でメロコアやるんだとびっくりした。メロディもキャッチ―で洗練されている印象を受けた。
同時期にはKANA-BOONやゲスの極み乙女なども出てきて、邦ロック全体でハイトーンボーカルのバンドが人気になっていた記憶がある。
そしてその後、MyGO!!!!!がフォーリミの「swim」をカバーしていることに気づく。自分の直観は間違っていなかったようだと安心した。
このカバー、上に貼った原曲と比べてほしいが、驚くほど原曲に忠実なカバーである。バンドリやD4DJといったコンテンツのカバーは、原曲からどうアレンジを加えてくるかという点もお楽しみの一つだと思うので、その点では不満もないわけではない。
注目してほしいのは、キーまで原曲と同じことだ。GENのキーが非常に高いために、女性ボーカルの高松燈(CV.羊宮妃那)でも原曲キーのまま歌えたのだろう(ほかのカバー曲ではキーを変えている)。
もちろん、フォーリミ以前から女性ボーカルのポップパンクバンドなどは数多くいたし、一バンドだけの功績にするわけにもいかないけど、高音のボーカルのメロコアを受け入れる土壌をフォーリミは日本に用意してくれていたのではないだろうか。
アルペジオとエルレ
ギター好きの自分の視点からだと、アニメのライブシーンで印象に残るのは、リードギターの要楽奈のアルペジオだ。これが7話では悲劇の引き金になったし、9話では感動のクライマックスへ導いていった。
アルペジオは他のMyGO!!!!!の曲でも多用される。アルバム一曲目に配置されている「迷星叫」もギターのアルペジオからスタートする。
GREEN DAYの「Minority」のようにまったくないわけではないが、ポップパンクやメロコアバンドでアルペジオフレーズを多用するバンドは少ない気がする。
ただ日本においては例外どころか、それをシグネイチャーサウンドにしているバンドがいる。言うまでもなくELLEGARDENだ。
ギターの生方真一のアルペジオは一部で「ウブペジオ」などとも呼ばれている。
この解説動画で説明されているペダルトーンのテクニックは「迷星叫」のAメロでも使われているし、アルペジオでメロディを作る手法は「迷路日々」のサビなどで確認できる。
これは主観だが、アルペジオは曲調をエモくする効果がある気がする。MyGO!!!!!の曲が持つアニメに合うような疾走感とエモさは、エルレから継承していると私は感じている。
アルペジオ関係ない余談だが、「壱雫空」と「Red Hot」の出だし、とても似ているなと思わないだろうか。どちらも全音符パワーコード、しかもおそらく最初三小節のコード進行は「I→V→VIm」まで同じで、四小節目も「Red Hot」は「I」で「壱雫空」は「Ⅲm」だが、「Ⅲm」は「I」の代理コードでもあるので、おおむねコード進行が一致するのである。
ポエトリーリーディングと春ねむり
MyGO!!!!!の最大の特徴はメロコア・ポップパンクサウンドにポエトリーリーディングが組み合わさることだ。
これを実践しているバンドを私は知らない。ただ、シンガーソングライターなら知っている。春ねむりだ。
春ねむりの曲調はメロコアど真ん中というわけではないし、むしろロック以外のエレクトロなどの要素を取り入れている曲も多いが、その根底にあるのはパンクであることは間違いないだろう。
しかも2023年現在最新のEPである「INSAINT」は全曲バンドセットでレコーディングし、ハードコアパンクを奏でている。
書いていて「もはやリバイバルじゃないじゃん」とは自分でも思ったが、歌詞に合わせた感情の表現の仕方はとても似ている気がするし、ポエトリーリーディングを入れた曲はかなり春ねむりを参照して作られているのではないかと思う。
おわりに
あまりちゃんと歴史も踏まえず、思いつくままに書いてしまったので、「これも参照点としてあげられるのではないか」みたいなのがあったら教えてください。
結束バンドの盛り上がり方を見ていて、アニソンバンドもこういうように邦ロックと接続される回路があった方がいいと確信したのがこの記事を書いた理由なので、この記事を批判する形であってもMyGO!!!!!を邦ロックにつなげるような語りのたたき台になるのであれば幸いです。
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