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「負けてたまるか」—脱サラのリアル

「くそっ、負けてたまるか。」
心の中で叫ぶ。

別に誰かと競争しているわけじゃない。
けれど、この収入ゼロの現実が、じわじわと牙を剥く。

それでも、自分への投資は必ず返ってくる——そう信じている。
いや、正確には、信じるしかない。
自分でも、その言葉の意味を深く理解しているわけじゃない。
ただひとつ確かなのは——ここで終わるつもりは、毛頭ない。

「3年間は我慢しろ。」
行政書士を開業したとき、先輩に言われた言葉だ。

「大丈夫、そんなにかからない。」
そのときの自分は、根拠のない楽観にすがっていた。

確かにビギナーズラックはある。
だが、問題はその先だ。

未知の世界に飛び込んだとき、最初は勢いでうまくいくこともある。
しかし、継続の難しさを知るのは、その後だ。
最初の運が尽きたとき、試されるのは——耐える力。

「閾値を超えろ」

士業の研修会で聞いた言葉が、いまも胸に刺さっている。

「スレッショルドを超える。」

講師は士業ではなかった。
トップアスリートだった。

ロケットを例に、彼は語った。

「人工衛星を軌道に乗せるには、あるスピードが必要だ。
それに届かなければ、ロケットは地球の引力に負け、落ちる。
必要な速度との差は、ほんのわずか——たったの数ミリ、いや数ミリ秒かもしれない。
しかし、そのわずかを超えれば、軌道に乗る。」

成功までの距離は、たった2ミリ

「もうダメか?」
そう思う瞬間に、あと2ミリの努力を積み重ねるかどうか。
それが、生死を分ける。

「継続は力なり。」

サラリーマン時代、この言葉は嫌いだった。
どれだけ頑張っても給料は変わらない。
ただ、無難に仕事を続けることが評価される世界。

そんなものと一緒にするな。

だが、脱サラした今、その意味が真逆に響く。

継続できなければ、終わる。
文字通り、生きるか死ぬかの話だ。

「安定」が消えた世界

公務員時代、毎月の給与は保証されていた。
辞めた瞬間、それがゼロになる。

この世界観の崩壊は、想像以上だった。

クレジットカードも新規では作れない。
退職金や、前年の所得がまだあるうちは、何とかなる。

だが、時間が経ち、収入がないままでは、貯蓄も底をつく。

そして、収入に見合った生活をしていれば、当然、借財もある。
家を建てた。
高級車に乗った。
子供の学費もある。
外食だって、普通にしていた。

すべてが、安定した収入を前提に成り立っていた生活。
それが、ある日、突然崩れ去る。

「負けてたまるか」

この現実を実感するにはタイムラグがある。
そして、それはボディブローのように、じわじわと効いてくる。

誰にも八つ当たりできない。
環境のせいにもできない。
結局、最後に残るのは——

自分が、頑張るしかない というプレッシャー。

そんなとき、思わず呟く。

「負けてたまるか。」

誰にでもない、自分自身への誓いとして。

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いなか侍すげさん|脱サラ×田舎ビジネス×自由な生き方
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