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幼少期からの不審な電話、そして高校時代の出来事

幼い頃から我が家には、不審な電話がかかってくることがありました。今思えば、それらは恐らく全て母宛の不倫相手からの電話だったのだと思います。

高校生の頃、いつもとは違う気味の悪い電話が増えた時期がありました。当時、私は通信制の高校に通っており、昼間家にいることが多かったのですが、中年女性の声で母宛の電話が頻繁にかかってくるのです。

「母は留守です」と伝えると、用件も言わずに電話を切られることがほとんどでした。その声の主はいつも同じ人物のように感じましたが、ある時は「サトウ」と名乗り、別の時は「サイトウ」と名乗るなど、名前が変わることに混乱しました。

そんなある日、その女性が電話でこう告げてきたのです:

  • あなたのお母さんは浮気をしている

  • 私はその浮気相手の婚約者の親族だ

  • お母さんには浮気を止めてほしい

さらに女性はこう続けました:
「毎週日曜日にお母さんは自転車で出かけていますよね。その途中で自転車を停めて浮気相手の車に乗り込み、ホテルへ行っているんです。興信所を使って調べた証拠も持っています。」

事実、母は毎週日曜日の同じ時間になると、誰かと約束しているかのように自転車で出かけていました。行き先を尋ねても答えてくれず、私は自室の窓から母が出かけて行く姿を見つめるしかありませんでした。

今振り返ると、その女性と手を組んで何か行動を起こす選択肢もあったのかもしれません。しかし当時の私は恐怖で動けず、ただ電話越しに話を聞くだけで精一杯でした。その女性がわざわざ子どもである私に生々しい詳細を伝えてきたのも、きっと自身が辛い状況に追い詰められていたからなのだろう、と今では思います。

私はこのことを、5歳年上の姉に相談することにしました。しかし上手く説明する自信がなかったので、手紙を書いて渡すことにしました。姉はその手紙を読み終えると、こう言いました:
「そんなことありえないよ。だってその人、おじいさんだよ。」

姉の話によると、その「おじいさん」は、以前姉の成人式の送迎をした人物なのだそうです。姉は40代の母がそんな高齢の男性と浮気をするはずがないと言いたかったのか、それとも「おじいさん」に婚約者がいること自体がおかしいと言いたかったのか、よくわかりませんでした。しかし、姉はその手紙を母に見せてしまいました。

手紙を読んだ母は、私に何も言ってきませんでした。それからしばらくして、あの中年女性がとうとう家を訪ねてきました。ただ、家の外を見ただけで帰っていったようです。その理由を知ったのは、後日、祖母から聞いた話によります。

祖母が経営する食堂にその女性が訪れ、私たちの家の住所を尋ねたのだそうです。祖母は何の疑いもなく家を教えたとのことでした。

私はその時、修羅場になればいいと思っていました。しかし、何も起きることはありませんでした。

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