023 眠り
目を閉じる。夜。どこからともなくひたひたと忍び寄ってきて私を訪う。それは初め、朧気で幽かな気配なのだが、ふっと虚を突いて私の端を捉えると意識の暗がりへと引っ張り込む。つ、と意識が消失する眠りの中へ、魚が釣り糸を引くように、強く弱く、私をゆらしながら引き込んでいく。
眠りの静謐さは死に似ている。眠る度に死が私の中へ溜まってゆく。眠りから滴る死は躰を満たし、やがて飽和する。すっかり死に浸された私は深く寝入ったままだろう。耳を澄まし、攲てる。夜に。死に。眠りに。淡く灯った意識が消えるまで、あと。
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日柳稀様のサイト、籠のなかの鳥より「創作家さんに100の主題」をお借りしました。