重症心不全患者の薬物動態 〜健康成人との違い〜
重症心不全患者では、薬物動態が健康成人とは異なっています。
重症心不全患者では、心臓のポンプ機能の低下によって、腸管の虚血が生じ、蠕動運動が低下したり、消化管うっ血による腸管浮腫がある場合には、経口薬の吸収率が低下します。
分布容積にしても、各臓器が虚血状態に陥れば、薬物の組織移行性が低下するために減少します。
肝うっ血や肝血流量が低下すれば、アルブミンの合成能が減少するので、蛋白結合率の高い薬剤はフリーで存在する割合が増えます。
代謝にしても、肝血流量が低下するため、肝臓代謝型の薬剤の半減期は延長します。
腎臓も同じく、腎血流量や糸球体ろ過量が減少すれば、腎排泄型薬剤による有害事象の可能性が高まります。
このように心不全患者では、薬物動態が健康成人のそれとは異なるので、医薬品の持つ性質を考慮した薬剤の選択、投与量の調整や副作用モニタリングを行う必要があるのです。
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