溶けた氷は夕暮れと共に…。
朝、鳥が鳴いてた。夏の主役達に負けないようにと…。周りの木々は占拠されてるから、電線に止まり美しく奏でてる。
きっと命の灯火を讃えてる。風に揺られた葉擦れ音さえも…。
***
今朝、ベランダからぼーっと外を見てると目の前にあった景色がそんな感じだった。
気温はそこからじりじりと上がり、太陽が空の中心を陣取った今、その時の涼しさはもうない。
だから今日は、室内で過ごすことを選んだ。
というより今日もか…。夏の魅せてくれる景色は好きだけど、このままだと夏を嫌いになってしまいそう。それくらい今年の暑さは耐えられそうにない…。突き刺すような直線的な日差しに、アスファルトの照り返し。まるで天然サウナの中を息をして、歩き、生活しているような気がする。
きっと、去年はずっと緊急事態宣言が出ていたからほとんど外に出なくて、太陽に対する免疫が下がってしまったんじゃないかなと思ってる。
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朝、友人から来た「土曜だしどっか行こ!」というLINEのお誘い。「ごめん、暑いからいい。」とだけ返し、部屋に引きこもることを決めた。
でも特にすることもなかった…。観たい海外ドラマや映画は全部見てしまって、先日記事にした【アウターバンクス】というドラマ、昨日新しくシーズン2が配信されたけど、7時間かけて1日で全部見てしまった。
半透明の青みがかったグラスに氷をいれ、コーヒーを注ぎながら少しの間考えて行き着いた先が、小説を読もうという考えだった。
読み書きから逃げ続けてきた人生をそのまま過ごしていたら考えられなかったけど、最近になって小説を何冊か買い、時間があれば読むようにしてる。ほんとにnoteで出逢えた全ての方々のお陰だと思ってる。この場所で読むことの楽しさを教えてもらった。勿論書くことも。
今は東野圭吾さんの【ラプラスの魔女】という小説を読んでる。紹介記事ではないので内容は省略するけど、これがほんとに面白い。
本を読む時、目で映像をみる訳ではなく心で作り出した映像を頭の中で投影しながら読み進めていくから、現実と本の世界の境界線を気づけば頭の中から取り払ってる。だからページをめくる度に、部屋の中が明るくなったり暗くなったり湿っぽくなったりする気がする。そんな非現実な時間が最近好きになった。
お昼から読み始め、読みながら空になったグラスに何度も氷とコーヒーを入れ直した。何度も…何度も。
でも3日間かけてじっくりと読み進めてきた物語も終盤に迫る頃、いつしかコーヒーの存在はどこか頭の片隅に消えてた…。そして読み終えた後、達成感と感動の感情で溢れた部屋の中を見渡すと、溶けた氷はグラスの底へと沈み、同時に窓から差し込む陽の光が夕暮れを教えてくれた。
どこか別の世界に行ってた気がする…。カチッカチと時を打つ時計の音も、今朝鳴いてた蝉や鳥の声さえも何も聴こえなかった。
気持ちのいい午後にソファーの上で微睡み、少しの間夢の世界へと誘われていた時のような感覚に似てる。目が覚めてここが現実だと気づくけど、夢の世界も覚えてる。気持ちくて、でも離れてしまった寂しさもあるような、そんな感覚。
夏の日差しから逃げるために、部屋で過ごすことを選んだ今日だったけど、ほんとに心地いい時間を過ごせた気がする。
もうあと数時間もすれば大好きな夜になる。次は何を読もうと、静かに心を踊らせた。
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