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プーリアの車窓から、電力を考える
<イタリア旅行記(2019年夏・南イタリア横断)no.32>
アッピア街道の終着地・ブリンディシ(Brindisi)。
駅まで戻り、列車でレッチェに戻ります。
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駅前にも、ヤシの木が…。
やっぱり南国の風が吹いています。
レッチェ滞在時に、何度も利用したイタリア鉄道。
その車窓から見えるプーリアの土地、景色は美しく、また興味深いものでした。
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プーリア州は、赤土の地としても有名です。
鉄分を多く含む赤土は、農地として、燦燦と降り注ぐ太陽を味方につけて、味が濃く力強い野菜類、そして、オリーブの木も育ててくれます。
「野菜が、味が濃くて美味しい」のも、プーリア滞在中に感じた事。
オリーブの名産地・イトリアの谷(Valle d'Itria)の土壌も、この赤土です。
白亜の街・オストゥーニの石灰質の地層の地域は、この谷の北にあり、
バーリ(Bari)まで続くムルジェ (Murgia) と呼ばれるカルスト台地。
ここは、テッラ・ディ・バーリ (Terra di Bari :バーリの地) とも、呼ばれています。
縦に長いプーリア州、南北の長さは、約400㎞と言われ、大阪・東京間程。
面積は、2万㎢。
ひとつの州内で、色々な地層があるのも納得の長さ、そして、大きさです。
列車の車窓から、こんな景色も。
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(Pannelli solari)
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(Mulino a vento)
イタリア各地で、少し郊外に行くと見かける事が多い、ソーラーパネルと大風車。
イタリアは、過去の歴史から、原子力発電を拒否している国。
風力発電、水力発電、そして、近年では、ソーラーパネルの太陽光発電を主流にしています。
ただ、それだけでは電力供給不足は必至。
必要な電力の 8割近くを、隣国のヨーロッパから買っているんです。
なので、もちろん、電気代も高い。
イタリア旅行中、街頭が少なくて、夜の街が暗いな、お店や、レストラン、宿泊部屋の中の照明も暗いなと、思われた方も多いと思います。
私は、3年間、イタリアに住んでいましたが、最初の頃は、その暗さに、
戸惑いました。
ルームシェアをしていた友人からは、私が、夜、電気を点けるのが早い、
電気代が高くなる、と、注意を受けたこともありました。
ルームシェアでは、電気代も一律シェア。
本当に、暗くなるギリギリまで、電気を点けないのですよね。
最初は、不便だなと思いましたが、段々と慣れていきます。
そんなに、明るくなくても良いのかな、この、ちょっと薄暗いくらいが、
ゆったりとした雰囲気を醸し出すのかも、と。
突然、パン!と、電気の容量を超えて、電気が落ちることもしばしば。
元々の契約している電気容量が低いですからね。
ホテルの厨房で働いていた時に、パン!とブレーカーが落ちた時は、さすがに、料理をしながら、ビックリしましたよ。
もちろん、イタリア人シェフの皆さまは、「おーい、電気落ちたぞ!」
「誰か、ブレーカー戻せ!」と、驚くことはなくて。
さすがだな。
2007年からは、電力事業の完全自由化が始まり、特に、フランスやドイツの電力会社参入、競争が激化。
不便さを解消できるよう、少しでも安く、少しでも多くの電力供給できるようにと始まった事業ですが、なかなか、思うようにスムーズには進んでいないそうです。
今も、室内の照明が少ないお店も多いですね。
屋外は、燦々と降り注ぐ陽の光で、本当に明るく、眩しいぐらいなのですが。
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(Macelleria a Lecce)
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店内のショーウィンドウを、許可を得て、撮影させてもらいました。
この写真、カメラ機能で、目一杯、明るさをプラス調整をしています。
店内が暗いと、最初は、入るのを躊躇してしまいますが、これも慣れると大丈夫になりますよ。
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日本も、2016年から一般家庭向け、小規模事業者向けにも電力自由化が始まっています。
もちろん、人が健やかに生きていく為の、必要な電力供給は大切です。
でも、利便性だけを突き詰めて、必要以上の電力はなくても、多少、不便であっても、良いのではと、思う時があります。
照明が暗いからこそ、見ることが出来る景色がある。
イタリアの地に居ると、そんな事を、感じてしまいます。
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