パンフォルテのお話
1)シエナについて
トスカーナ州・シエナ(Siena)は、13~14世紀に、金融業で栄えた都市国家で、当時、勢力を広げていたフィレンツェ(Firenze)と、
トスカーナ地方の覇権争いをしていたほど経済力がありました。
ルネサンス芸術の中心地のひとつでもあり、その姿を残している旧市街は、貴重な歴史地区として、世界遺産登録もされています。
サリンベニ広場にあるのは、1472年創業・現存する世界最古のイタリア銀行「モンテ・ディ・パスキ・シエナ銀行(Banca Monte dei Paschi di Siena)」の本店です。(写真•右の建物)
ここ10年程は、経営難にあえいでいますが、イタリア各地に支店があり、私も、よくATMを使っていました。
2)パンフォルテの歴史
シエナで、中世の頃から作られていたパンフォルテ。
その起源、原型となるものは、シエナの南に位置する山の地域・アミアタ(Amiata)からマレンマ地方に伝わる「メラテッリ(Melatelli)」。
粉と卵、蜂蜜、くるみ、イースト、こしょう等で作られている焼菓子です。
ここに、季節のフルーツやスパイル類を追加して、
強い味わいにしたものが、中世時代から作られていた「パンフォルテ」でした。
転換期となったのは、1879 年。
イタリア王妃・マルゲリータが、シエナの歴史的な競馬祭・パリオを観るために訪れた時、それを記念して、レシピを一部を変えて作り、献上した。
それが、現在の「パンフォルテ・マルゲリータ」。
マルゲリータ王妃の名前が添えられました。
「マルゲリータ」という名がついた食べ物と言えば、
有名なのが、「ピッツァ・マルゲリータ(Pizza Margherita)」。
こちらも、1889年、イタリア王国の国王ウンベルト1世と、王妃マルゲリータがナポリを訪問した時に、イタリア国旗の三色•トレコローリ(トマト、モッツァレッラ、バジル:赤、白、緑)を模したピッツァを献上。
そのピッツァを「マルゲリータ」と呼ぶようになったと言われています。
現在は、大きく分けて2種類「パンフォルテ・ビアンカ」「パンフォルテ・マルゲリータ」があり、それぞれ、多くのレシピがあります。
イタリア全土では、クリスマス菓子としてのみですが、
地元・シエナでは、一年を通して作られ、食べられている、愛すべきシエナ郷土菓子。
メーカーによって、味わいも風味も違うので、食べ比べてみるのも楽しいものです。
******************
1827年創業のシエナの老舗菓子メーカー「FIORE」の工場見学に伺ったときの写真が、手元にありました。(1999年9月・撮影)
パンフォルテ同様、シエナの銘菓「リッチャレッリ(Ricciarelli)」「カヴァルッチ(Cavallucci)」「カントゥッチーニ(cantuccini)」を製造しているラインを見せてもらいました。
アルベロイタリア料理教室「2023年秋冬メニュー」のデザートとして、
この想い出のパンフォルテを、アルベロレシピで、ご紹介します。
3)シエナの伝統的な競馬祭「パリオ(Palio)」
公式記録が残っているのは、13世紀からですが、すでに、12世紀頃から開催されていと言われています。
一年に、2回(7月2日、8月16日)。
第二次大戦中(1940~1945年)、コロナでの中止(2020年、2021年)を除いて、毎年、開催されています。
私が、シエナで料理修業していたのが、1999年秋~2000年春。
その後、イタリアを訪れても、なかなか見ることが出来なかったのですが、
2010年7月2日に、やっと、パリオを、現地•シエナのカンポ広場で、見ることが出来ました。
その翌日の新聞一面です。
パリオの前後は、シエナの気温が、通常よりも2~3℃上がると言われているほど、街は、熱気溢れ、盛り上がっていきます。
実際、街中、パリオ一色に染まるので、街散策するだけでもワクワク、テンションが上がっていきますよ。
パリオについては、2010年の旅行記で、書き留めているので、
是非、シエナの旅行記とともに、下記・記事をご覧下さい。
シエナの街の長い歴史とともに、愛されてきたパンフォルテ。
クリスマス菓子「パネットーネ(Panettone)」のように、日本では、まだまだ、認知されていませんが、是非、食べて欲しいシエナの伝統菓子です。
******************
パリオについての記事(シエナ滞在記)は、こちらからご覧頂けます。