イタリア郷土料理のお話・ヴァッレ・アオスタ州(Valle d’Aosta)
久しぶりの「イタリア郷土料理のお話」。
今回は、イタリア最小の州・北西部に位置するヴァッレ・ダオスタ州について、見ていきます。
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1)ヴァッレ・アオスタ州
(Valle d’Aosta)について
2)州都:アオスタについて
雄大な山並に囲まれた盆地の街・アオスタは、2000年以上の歴史を誇ります。
アルプス越えの拠点として、古代ローマ時代からの重要都市であり、
遺跡や教会、美術品も多く残っており「アルプスのローマ」とも呼ばれています。
今でも、ヴァッレ・ダオスタ州内の各地、アルプス方面、フランス、スイスへの交通の起点、要所でもあります。
私も、ここアオスタから、滞在地・コーニェ(Cogne)、クールマイユール(Courmayeur)、ヌス(Nus)へ、向かいました。
アオスタは、いつも、滞在地へ向かう経由地として通過するのみ。
滞在したことがないので、再訪できれば、一度、ゆっくりと観て回りたいです。
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☆コーニェ(Cogne)
アオスタから、南へ15㎞程。
有名なグラン・パラディーゾ国立公園(Parco di Nazionale Gran Paradiso)の拠点として、賑わう村です。
「大いなる(グラン:Gran)天国(パラディーゾ:Paradiso)」と名付けられたこの地域は、イタリア最初の国立公園(1922年指定)で、イタリア唯一の4000m級の峰々を有します。
様々な野生動物をはじめ、色彩豊かな花や緑、木々が生息し、春夏秋冬、
それぞれ違う四季折々の大自然の姿を目にすることができ、
まさに、ここは「大いなる天国」なのです。
コーニェは、この国立公園への入口でもあります。
コーニェ滞在記は、こちらからご覧頂けます。
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☆アルプスの花・エーデルワイス
アルプスのシンボルでもある白い花「エーデルワイス(Edelweiss)」。
イタリア語では、「アルプス( alpina )の星( stella )」とも、呼ばれています。
コーニェ滞在中に、至る所で、エーデルワイスの花を、
そして、それを模した飾り、工芸品を見ることができました。
押し花の額は、今でも、我が家に飾っています。
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☆クールマイユール(Courmayeur)
アオスタから、西へ 40㎞程。
アルプス山脈モンブラン(Monte bianco)の麓にあり、
「アルプスの真珠」ともを呼ばれているリゾート地です。
モンブランからの流れ降りてきたミネラル豊富な天然水は、地名「クールマイユール」の名で、ミネラルウォーターとして愛されています。
( 日本でも販売されています )
クールマイユールから、ロープウェイで、アルプス越えができ、
フランス領側のシャモニー(Chamonix-Mont-Blanc)まで行くことができます。
アルプスの雄大な絶景を、上空から眺めることができる。
想像するだけでも、ゾクゾク、ワクワクしますよね。
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3)ヴァッレ・アオスタ料理の特徴
料理も、隣接するフランス、スイスの影響を受けています。
オリーブオイルは、ほぼ使わず、バター、ラード(豚の精製脂肪)が多用され、山の地域ということで、鮮魚を使った魚料理は、ほぼ、目にしません。
保存食として、畜肉加工品(ハム、サラミ等)が多く造られています。
山岳地域の身近な食材として、肉類では、野うさぎ、鹿、カモシカなど。
きのこ類、保存が利く豆類、そして、乳製品(バター、チーズ)。
パスタよりも、スープ類、ポレンタを、よく食べます。
料理法も、煮込み料理が多いです。
りんご、洋なし、栗なども栽培され、それらを使ったデザート、ジャムなども多く生産されています。
厳しい寒さを乗り越えるために、身体を温めてくれるリキュール類(食後酒)が造られ、ワインも温めて飲むことが多いです。
それぞれ生産量が少ないので、州内で、ほとんど消費され、州外では、なかなか口にできないのも、特徴のひとつです。
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① 肉料理・加工品
前菜のお薦めは、「サラミ・ハムの盛り合わせ(Salami misti)」。
どのレストランのメニューにも、載っていました。
鹿(cervo)も、よくメニューに載っていましたし、他の地域では、なかなか食べることが出来ない「カモシカ(Camosia)」等、珍しいジビエ類もあります。
強い繊維質、しっかりとした歯応え、食べ応えがある「カモシカ肉」。
珍しい食材、パンチのある食材を、初めて食べて、私の身体が驚いてしまったのでしょうね。
食後、色々な要素も重なって、腹痛に見舞われてしまいました。
今では、それも、懐かしい想い出です。
② チーズ料理
州内生産チーズで、原産地名称保護(DOC)されているのは、2種類です。
① フォンティーナ(Fontina)
② ヴァッレ・ダオスタ・フロマッツォ(Valle d'Aosta Fromadzo)
どちらも、原料は牛乳。
フォンティーナの方が、やや乳脂肪が高いですが、どちらも、同じように使われ、料理に多用されています。
代表的なチーズ料理が、こちら。
アオスタ風チーズ・フォンドゥ「フォンドゥータ(Fonduta)」です。
フォンティーナチーズをたっぷり使い、パンではなく、ポレンタを絡めて頂きました。
仔牛料理のひとつ、ミラノ風カツレツ(cotoletta alla milanese)が有名ですが、チーズを、肉の間に挟んで仕上げるのが、アオスタ風。
これが、美味しくて、チーズ好きには堪りません。
③ ドルチェ
りんご(Mele)をたっぷり使った「タルトタタン(Tarte tatin )」も、
食べておきたいデザートです。
りんごのデザートは、イタリア各地で食べることができますが、
特に、北イタリアの、りんごの名産地では、酸味がしっかりと立ったものが多く、加熱用として重宝されています。
栗(Castagna)も、栽培されています。
栗のデザートと言えば、やはり「モンブラン(Monte bianco)」です。
イタリアのモンブランは、日本のモンブランと、見た目が違います。
「白い(Bianco)山(Montagna)」という名の通り、上から、ホイップクリームをかけて、雪山のように見立てて、仕上げるのです。
スポンジ生地などを入れず、栗のクリームと、ホイップクリームだけの場合もあります。
チーズ盛り合わせと、一緒に運ばれてきたのが、自家製のジャム。
(写真・左奥)
りんご、洋なし、ブルーベリー、栗、の4種類で、レストランで作り、販売もされているそうです。
ジャムも、保存加工品ですから重宝します。
コーニェ村のスーパーで購入しました。
素朴な味わいの薄焼きクッキーで、パリパリっとした食感が軽やかです。
ちょっと、ハマってしまう焼き菓子でした。
④ ワイン
生産量が少なく、この地を訪れないと、飲むことができないワインが、ほとんどです。
イタリアでは、珍しいブドウ品種「ガメイ(Gamey)」の赤ワイン。
フランスの香りがします。
「ナポレオン(NAPOLEON)」という名の赤ワイン。
アオスタ周辺の山々は、ナポレオンのアルプス越えをした地域。
なかでも、特に、彼を悩ましたと言われるのが「要塞バール(Bard)ードンネス(Donnas)地域」です。
その地名から、名付けられたそうです。
ブドウ品種は、ネッビオーロ(Nebbiolo)です。
身体を温めるためのリキュール類、食後酒も造られています。
ヴァッレ・ダオスタ州特産の食後酒「ジェネピ(Genepi)」。
高山植物のジェネピ(アルプスヨモギ)から造られたリキュールで、独特の香りが、ちょっと癖になり、美味しかったのを覚えています。
数種のぶどうを過熟(Stramatura)させて造られた、レストラン自家製の甘口ワイン。
口の中で広がる芳醇な香りと甘さが、美味しかったです。
4)工芸品
アオスタと言えば、忘れてはならない木彫り工芸品の盃「グロッラ(Grolla)」です。
通称「カッフェ・アミッツィア(Caffe Amizia)」。
「友情(Amizia)のコーヒー(Caffe`)」という意味で、
リキュール入り熱々のコーヒーを入れて、友人と、回しながら飲み、
身体も温め、友情を深めるものです。
こちらは、100年以上前のもので、グロッラの原型。
宗教儀式の時に使われる聖杯を模して作られたもので、それが、段々と使いやすいように、横に広がり、飲み口が増えていき、現在のグロッラになったと言われています。
大きさは、様々。
小さいものは、手のひらサイズ。
大きいものは、直径30cmぐらいで、どのグロッラにも蓋の部分に、アルプスの花でもあるエーデルワイス(Stella alpina)が彫られています。
店内は、グロッラが所狭しと並んでいて、圧巻でした。
コーニェ村には、木彫りのオブジェが、いくつも置かれています。
さすが、アルプスの村、散策しているだけでも、楽しむことができます。
その他の、ヴァッレ・アオスタ州滞在記は、下記から、ご覧頂けます。
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いかがでしたか?
イタリア最小の州・ヴァッレ・アオスタですが、山の地域ならではの魅力が溢れています。
この記事を書きながら、改めて、再確認しました。
アルプスを、イタリア側から楽しみたい、イタリアの大自然を感じたいと思われたら、是非、ヴァッレ・ダオスタ州のことも思い出してみて下さいね。
今後も、引き続き、イタリアに関する情報を、様々な形で、お伝えしていきます。
どうぞよろしくお願いします。
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マガジン「オフィスアルベロ・レシピ集」からも、イタリア料理を楽しんで頂けます。
是非、ご覧ください。
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最後に
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