『バーチャル地球を救え!』開発記 中編
ポパピスタジオ代表のアラスカ4世です。本記事では『『バーチャル地球を救え!』開発記 前編』に続き、私が公開したフルAI作画ノベルゲーム『バーチャル地球を救え!』の開発中に起こった事や考えた事を書き、読者の皆様と知見を共有したいと考えています。まだ前編を読んでいない方はまず前編を読むことを推奨します。
前編の概要
前編では作品紹介、自己紹介、開発に至る経緯を説明した後、次のような開発方針を決めました。
①ノベルゲーム制作のノウハウを得るために作る
②画像生成AIのテスト、デモンストレーションのためにAIを使って絵を生成する
③基本的にクオリティーよりも速度を重視し、一日でも早くリリースする
後編ではこの方針に基づいて進めた開発中に起こった事や考えた事について書いていきます。
開発ツールの選定
この作品はティラノスクリプトで開発することにしました。
シンプルなシステムのノベルゲームを作ろうとしている事、筆者がWebプログラミングに関する最低限の知識を持っている事、ブラウザ環境でプレイできるようにしたかった事を考慮すると、使い方の習得が簡単かつプログラミング初心者向け過ぎでもないティラノスクリプトを選んだのは正しい決定だったと思います。
テキストの表示形式と画面サイズをどうするか問題
多くのノベルゲームは、下の画像のように画面の下側にテキストウインドウを表示し、そこに文字を表示するスタイルになっています。
これだと画面の下側がテキストウィンドウで隠れ、AIの生成した背景画像がAIの意図通りに見えにくくなってしまいます。そのため、画面全体にテキストウィンドウを表示するスタイルを採用しました。
筆者はこのスタイルのゲームをあまりプレイしていないので、演出が見づらくなったり、不自然になったりしても気付きにくいというデメリットがあります。
早く決める必要がある上に悩ましかったのは、ゲームの画面サイズをどうするかについてでした。画面サイズを決めない限りStableDiffusionくんに作中で使用する画像を生成してもらう事ができないし、一度決めてしまった後で再度画面サイズを変更したら、画像を1から生成し直す必要が出てきます。StableDiffusionは生成する画像の縦横比によって大きく違った画像を生成するはずなので、たとえ同じランダムシードを入力したとしても当初の意図通りの画像が生成される可能性は低いです(未検証)。つまり、この決定は事実上やり直しがききません。
ティラノスクリプトのデフォルトの画面サイズは960px✕640pxで、アスペクト比は3:2なのですが、多くのノベルゲームはスマホや多くのディスプレイの大きさに対応するために16:9を採用しています。16:10の作品もありますし、昔の作品は4:3が主流でした。
画面全体にテキストウィンドウを表示するスタイルで16:9の画面にすると横長になりすぎてしまう(テキストウィンドウが横に長くなると文字が読みづらくなる)ので、16:10を採用し、960px✕600pxで作る事に決めたのですが、その後すぐにStableDiffusionは16の倍数のピクセル数のイラストしか生成できない仕様になっている事に気づき、1024px✕640pxに再変更しました。この選択が正しかったのかどうかは現時点ではよくわかりません。
AIに描画させた事を加味せずに評価すると、ちょっとヘンな仕様のゲームになってしまった気がしますが、こちらは他の人間が作ってくれた背景画像やUIなどの素材を利用しないので、互換性を気にする必要が乏しく、影響は限定的だと思います。
開発を進める
基本的な仕様が決まったので、次はあらすじ(バーチャル地球をテロリストから守るために各地を冒険する)を決め、StableDiffusion様に絵を描いてもらいつつ、ティラノスクリプトの書き方を学んだり、音楽素材を探したり、ウマ娘を育てたりしていました。
ウマ娘に関してですが、完凸したミスターシービーを持っているにもかかわらず、新シナリオでの育て方を考える余裕があまりないので、育成は上手く行っていません。
i2i機能の活用に失敗する
9月4日にはコミティアに一般参加し、ついでにimage to image機能を使って何か面白い画像が生成できるんじゃないかと思って色々な写真を撮ったりしました。
できれば「腐肉に覆われた東京ビッグサイト」みたいなものの画像も作ってみたかったのですが、現時点の私の力では無理でした。
もっとたくさんのi2i画像をゲームに登場させるつもりだったのですが、結局一枚しか採用しませんでした。
立ち絵について
この時期に主人公の相棒のアイリスというaiの女の子の立ち絵を生成しました。当初は腰から上の画像を生成しようとしたのですが、頭頂部が画面内に描かれていなかったり、肩から上しか描かれていなかったり、ポーズやアングルが立ち絵としては不自然だったり、可愛くなかったり、目などのパーツがやばかったりする絵しか生成されなかったので(どれか一つでもダメだとダメ)、肩から上のイラストで妥協することにしました。
萌え絵に特化したAIを使えばもっといい絵が作れるかもしれませんが、そこにこだわるつもりはないし、それより早く完成させたかったのでこの絵を使い、表情差分なども作成に時間がかかりそうなので用意しませんでした。この子は感情の起伏に乏しいAIという設定なので違和感も少ないはずです。
この時期には完成品と比べてシナリオをもっと長いものにする予定だったのですが、シナリオのネタを考えるのに苦労していました。
コンキスタドールの侵略と天然痘で大変な事になっているアステカ帝国を冒険するアステカ編とか、テロリストの破壊工作によってバグった哲学者のAIを論破したりする古代ギリシャ編とかをおぼろげに構想していたのですが、不謹慎になりがちなネタやAIを活用する必然性に乏しいネタ、つまらなさそうなネタが多かったのでボツにしました。
フランス編でもダリやゴッホ以外の何人かのAI画家に絵を描いてもらうつもりで色々検討しましたが、ちょうどいい画家がいませんでした。そもそもほとんどの画家はゴッホほど有名ではないし、ダリほどキャラが立っていないので、ゲームに登場させづらい。登場させても美術オタク以外のプレイヤーは「コイツ誰?」ってなってしまって面白くない。
後編に続きます!
まだ『バーチャル地球を救え!』をプレイしていない人はよかったらリンク先からプレイしてみてください!リンク先ページ下部の「ブラウザ版を遊ぶ」ボタンを押すとプレイできます!
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