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【小説】ケータイを変換で軽体(鬱) 第8話

 「ただいまーっ」

 なるべく抑揚の少ない声で玄関を開けてから言うと、母が玄関まで一人で来るととりあえず怒っているポーズを取る為か眉間に皺を寄せ、「ちょっと最近遅い事が多いんじゃない?」と注意をした。

 「はーい、ごめんなさい」

 成美は一応は遅くなった事に対しての言い訳を帰り道で考えてはいたが、この様子だったら別に言わなくてもやり過ごせそうな雰囲気だったので、馴れ合いの状況を作って靴を脱いだ。

「パパにはボランティアの痴漢撃退講習を受けて遅くなったって説明してるから、ちゃんと口裏合わせときなさい」

 またよりによって尋問されたら答え難い言い訳を良くも考え付いたものだ。

 これならまだ真実を告げて小言を言われる方がまだ神経を使わなくて良いと成美は思ったが、これはきっと母なりの成美に対しての罰ゲームみたいなものではないかと感じた。

 食卓にはTVのバラエティ番組を見て子供のように笑い続けている父と、なんだか世の中の全てがつまらないような顔をした中学生の弟の尚人がいた。

「おっ、成美がやっと戻ってきたか。

 それで今日はどんな護身術を習ったんだ?」

 早速抜き打ちテストを言い渡されたような不意打ち難問を言われ、成美の頭の中は否応無く全速で回転させられていたが、何故か言葉が考えるよりも頭を突いて出てきた。

 「倒されて下着を脱がされそうになった時の反撃方法を習ったよ。

 まずピースサインをして油断させたところをそのまま目潰しに持っていき、相手が顔面を防御を集中させる瞬間を狙って、股間を膝で蹴り上げるの」

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