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介護保険制度の持続可能性

介護保険が始まって以来増え続けていた介護職員(ヘルパーその他)の数が減りました。介護保険が始まった当初は介護職の数は59万人だった。それが2022年には約225万人となり約4倍に増えています。これが昨年は約1.1%(2.5万人)の減少でした。日本人の人口の減少率が約0.7%でそれ以上の減少です。他産業の給与の増えた方が好調ですし、円安でアジア諸国の成長をみると今後海外から多くの介護職に来ていらしていただけるとは思えません。
そうなると介護保険制度の持続が心配になってきます。介護保険制度はこれまで何度もパッチを当てはめて救われてきた。それは介護保険が出来た時に始まっています。もし介護保険を完全な「保険」として、税金を入れない体制で始めていたら、かかった費用から自動的に保険料を計算していたはずです。しかし心配だから保険料では不安定な市町村もでると想定されて、市町村税、県税、そして国税が組み入れる仕組みとなりました。それでも財源が足りなくなりそうであったから、消費税が増税される時に福祉目的税として市町村への医療や介護保険給付その他補助金として割り当てらました。つまり、出来た時から出血防止のためのパッチを張られ、消費税増税の時にまたパッチが貼られました。
純粋な保険制度でないことの結果として、介護保険の給付を決める給付費分科会や財務省は、年率何パーセントで介護給付を上げるか、あるいは下げるか、が議論されることになってしまいました。本来は全国の介護職の給与がいくら必要か、食費や薬剤費がいくら必要か、という必要性に基づいて、介護給付費を決めるべきですが、人件費や食費や薬剤費は介護保険がはじまって以来正確に見積もられていないようです。実際に私の施設では、介護職の派遣業者に支払う費用が増えています。ところがこういう金額は介護保険給付の想定外に増えてきた支払いです。また私たちの施設では最近、給食業者が撤退し、あらたな業者に変えざるを得ない事態となりました。その結果業者に支払う給食費用は、これまでの約1.5倍となりましたが、利用者から頂く食費はほんの少ししか上げられず、大赤字になっています。
本来介護「保険」というのであれば、かかった費用を元に保険料が決められるはずです。しかし施設介護や在宅介護が何パーセントあげるかどうか、ということが先に決まり、施設で実際にかかっている費用は計算されないままです。

介護保険の持続可能性自体が疑問に付されてきています。国は、被保険者の範囲と受給者範囲の見直しや給付額の見直しについて検討するとしていますが、かかっている費用の継続的な見直しこそ、制度の基本部分に入れてほしものです。政権や一部の官僚に左右されない持続可能性こそ検討していただきたいものです。

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