アマゾンのフロレンシア
メキシコの作曲家ダニエル・カターンのオペラ「アマゾンのフロレンシア」。今年のメトロポリタンオペラの配信映画の一つ。
世界的オペラ歌手フロレンシアは、恋人を探すついでに公演しにマナウスへ向かう。オペラとマナウスという設定は、アギーレ・神々の怒り(ヘルツオーク)を彷彿とさせるが、これはオペラである。音楽はアマゾン川をゆっくり遡りながら、そこでいくつかの愛が語られる。
川だから音楽もゆっくりしている。ワーグナーが海を表現した「さまよえるオランダ人」と比べてはいけない。静かな海のような川には熱帯雨林が広がり、動物や魚や鳥がいる。音楽はそんな感じで進んでいく。退屈といえば退屈。なぜなら同じような景色が続くから。それは広くなったり狭くなったり、川であっても嵐が起きる。愛は川と同じように少しずつ変化していく。
舞台は沢山のマリオネットや魚や鳥の衣装を着たダンサーが色彩を添える。
歌手はもちろん素晴らしい。
最後に辛口。
ガルシア・マルケスの世界感というキャッチコピーで宣伝している。
でも何がマルケス風なのか? アマゾン流域の話だからか?極彩色の色調か?
コレラの時代の愛を書いた作家だからか?そんなコピーがなくても十分成り立つオペラなのに残念である。それにダニエル・カターンはメキシコ出身のガルシア・マルケスほどには有名ではないメキシコ人作家オクタビオ・パスと一緒に仕事をしていた人なのだ。宣伝とはつまりこういうことなのだ。
まあいい。こんなオペラをメトロポリタン劇場で見てうたた寝をする。というのが私の理想。この作曲家はイル・ポスティーノのオペラ化もしているから、そちらも見てみたいかな。