見出し画像

ゲーテはすべてを言った

冬の間、自転車レースに明け暮れていると、だんだん知的な活動がが恋しくなってくる。高校の頃試験勉強をやっていると無性に運動がしたくなって大濠公園を走りに行ったのとはまるで逆だけど、反対のものが惹きつけあっているのだろう。

芥川賞のニュースが流れた。「鈴木結生、ゲーテは全てを言った」。この作者な男性か女性か、もわからないが、ゲーテについてのミステリー、であると言うから読みたくなった。とは言っても私はファウストは漫画でしか読んだことがない。私のルーツのことでもあり、興味を持っていたら知人がFacebookでこの人は高校の後輩らしい。しかも2000年代生まれ初の芥川賞受賞!

本屋にいくと当然目につくところに積んであり、序章からオーバーアマガウである。母の故郷にも近くオーバーアマガウの受難劇は小学生の頃に見たことがある。理解したとは言わない。オーバーアマガウの思い出は、木彫りの鳩時計ぐらいだけど(行ったらわかるよ)、もうこの本から逃げられなかった。

本はゲーテの格言についてである。「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」しかし原文は英語??
で[Love does not confuse everything but mixes]についての推理小説。つまりこの格言は本当にゲーテが言ったのか?を紐解く話。

そもそも格言っていうのはなんだ!という作者の遊びから生まれた小説なんだろうな。格言は偉い人が言った、書いたという言葉を他の人が大事に括弧で括って、抜き出し、さらには翻訳され、偉い人がこう言ったんだから・・・というのである。格言のさまざまなタイプ分類もある。時々ジョークを交えて衒学的になるのをうまく避けてストーリーは進む。芸亭學ってなんだよ!他にも存在しない小説や映画が出てくる・・・思い出したぞ「読んでない本について堂々と語る方法」にも出てきたパロディーだな、と著者を調べてみると「人にはどれほどの本がいるか」で林芙美子賞も取っているではないか。やるな、若いの!

で、今週も愛知県でレースなんだけど、ドライブが長いと途中はオーディオブックの朗読を聞いている。今年はテレビドラマにもなった侠飯(オトコメシ)をもうすぐ全巻聴き終わる。こっちはハードボイルドかつメシの話だから、書物の中でも肉体的だろう。「ゲーテ」は一部な身体化された表現も出てくるのだけど、どちらかというと頭脳派である。普段運動ばっかりやっていると、これが気持ちいい。その一方で運動にも肉体的なのと頭脳的なのがあるだろう。自転車競技や長距離走はほとんど肉体ばっかり。シクロクロスだとタイヤ選びや空気圧や、私が苦手なコーナーの処理など少しは頭を使うけど、ほぼ肉体。一方ダンスは・・・音楽脳という言語とは違う脳を使っての遊びだけど、肉体的だな。人間ってほんと面白い。体と頭を最大限に使って遊ぶ生き物だなあとつくづく思うよ。

ゲーテはすべてを言ったというけど、多分私たちが一番よく知っている格言は「もっと光を!」だろうか。これは啓蒙主義的な理想を追うゲーテの最後の言葉とされているけど、80歳まで生きたゲーテだから、きっと白内障だったんだろうと思うよ。私も脊柱管狭窄症で脚が痛むから「もっと薬を!」

いいなと思ったら応援しよう!