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頑張れ! 『トゲアリトゲナシトゲトゲ』 令和スタイル女芸人(?)

厳戒態勢にある令和東京、会議室で待機中のパワーパフガールズのような。
福田麻貴(3時のヒロイン)、加納(Aマッソ)、サーヤ(ラランド)による20分番組『トゲアリトゲナシトゲトゲ』を、毎週期待と不信が入り混じった少し複雑な気持ちで見ている。

『アメトーーク』で「若手女芸人」回が放送されたのが20年9月。
『トゲトゲ』を”注目の女性芸人による番組”と括っていいものか逡巡していたのだが、番組HPに「令和スタイルでお笑い界に革命を起こす女芸人3人が、好き勝手喋り倒します」と記載されていて肩透かしを食らった。

令和スタイルとはなんだろう。
演者の3人よりも番組の建付けの方がよほど令和スタイルだと思う。

「お笑い第七世代」という言葉を持ち上げてみたものの、コロナ禍のリモート収録番組が増加してじったテレビ。視聴者の生活変化に合わせ、芸人は各々YouTubeチャンネルを持つようになった。音声配信アプリも隆盛したし、お笑いライブの配信ビジネスも確立した、そんな令和。

バラエティ周辺のことでいうと、
・芸人自身が複数のメディアを持つようになり、
・大体のものがスマホで視聴できる動画・音声コンテンツへ均され、
・テレビ局が世帯視聴率を気にしない番組作りを開始するようになった。←new!!
といったところだろうか。

その姿勢を分かりやすく打ち出したのが、『ネオバラ』枠を解体したテレビ朝日の『バラバラ大作戦』だと言える。

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手掛けるのはテレビ朝日に所属する20代から30代のプロデューサー・ディレクターで、動画配信の時代に対応した「地上波の枠にとらわれない多角的な展開で攻めていく」バラエティ放送枠となっている。また、TVerやABEMAなどといった見逃し配信サービスで気軽に視聴が出来るように各番組枠が20分になっているのも特徴である。(wikiより)

印象的だったのは、20年10月からの放送開始に先駆け、『バラバラ大作戦』メインのツイッターに、担当スタッフと演者が「どんな番組にしようか」と対談する短い動画を上げ出したことだ。

この構えで、YouTubeに親和性のある視聴者に向けて本腰を入れていると分かる。番組の放送自体を物語化し、視聴者へ共感や応援を呼び掛ける、テレビとしてようやく舵を切った、新しい価値観の提示だった。
チャンネル登録者100万を目指すYouTuber(芸人含む)のように、番組公式自らTVerの視聴数やSNSの重要性を明かし、特番化をかけた『バラバラ総選挙』というイベントも用意した。

放送尺を20分にして番組数を増やすことで、スタッフを育てる狙いもあるのだろうか。新しい姿勢に注目しつつ、前提として芸人が活躍できる場所を創出する姿勢を好ましく思っていた。

しかし、気になることはある。
番組の人気に比重を置く以上、もともと人気のある演者を採用することが絶対条件になりやすい。そして令和の人気者は、独自のフィールドで活動しながら、企画力を武器に戦っている場合が多い。テレビが漁夫の利を得ようと立ち振る舞いたくなる土壌は無視できない。

(予算の面でできることの可能性も広がるのかもしれないが、「地上波の枠にとらわれない多角的な展開で攻めていく」以上、テレビ放送に乗らなかった素材を未公開動画としてYouTubeやツイッターで公開するなら、特番化(=長尺化)する意味合いが分かりにくい)


情報解禁された際、『トゲアリトゲナシトゲトゲ』に感じた胸の支えが一番大きかった。
それぞれがファンからの厚い指示と企画力に加え、関係性も構築したメンバーだったからだ(その点で『イグナッツ!』と異なる)。加納とサーヤは「余韻と脚色」のユニット活動すらしている。各々YouTubeチャンネルもラジオもある。
だからこそ、放送開始から番組継続を賭けた生き残り合戦が始まる枠で、既存のファンを集める意思があるならば、この3人だからできる企画や角度を期待するのがファンの心理だろう。

だから、初回放送(「ひとまず3人の距離を詰める夜」)の肩透かしはキツめに食らった。
スタジオで横並びに座った3人が、関係性やポジショニングについて議論を交わすものの、キャラや話の流れを「テレビらしさ」に落とし込みすぎていると気づいた結果、落としどころが見つからなくなる。ディレクターが撮れ高を不安視する発言もそのまま放送に採用してヌルッと終わった。

シュッとした番組ビジュアル、こだわりが見え隠れするBGM、タイトルについた「夜」など、演者の脳内と離れた、” 側”のこだわりが強そうなぶん余計怖くなる。

その後すぐにさらば・森田ゲスト回が入り、
第5回(「福田のツッコミの可能性を広げる夜」)のツッコミビンゴ、第6回(「大喜利を大喜利する夜」)のEDM大喜利風ゲームは既視感がある企画。第7・8回(「相方タイムショックに挑む夜」)、第9回(「普段ネタを書かない相方がネタを考える夜」)で3人が各々コンビの優位に位置することを改めて整理している。これで大丈夫か、2ヶ月も経っている。


そんななか、ようやく第10回「私のルーツを辿る夜」が面白かった。
加納とサーヤが自身のルーツを紹介するロケVTRを撮影してくるのだが、2人とも福田のルーツを自身のことのように語っていることに気づいた福田がツッコんでいく企画。相方との力関係では強い側にいる二人が、福田にツッコまれる画はこのメンツならではのものだった、加減もちょうどいいように思った。

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それは、その後の第14回(「ボケとツッコミをシャッフルする夜」)、第16回(「恋愛バラエティのように本音をさらけ出す夜」)にもいい塩梅で残っている。いい流れが来ている。

『バラバラ』の構え上、なんとなく喋るだけでも、ゲームをするだけでも、単純なドッキリも、YouTubeチャンネルでできることだと思われやすい。
だからせっかくなら、テレビでしかできないこと、この3人が毎週画面に映るからこそできることを見せてほしい。
(『トゲトゲ』は一度の収録で放送4~5回分をまとめて撮っていると知り、決めてかかるには早すぎるかもしれないが)

ツッコみの福田が一番ネガティブで、ボケとツッコミをできる加納が底抜けに明るく、ボケしかできないサーヤが最適解を出す能力に長けている、不思議なバランスの3人ならではの何か。

比較できるものではないけれど、『ざっくりハイタッチ』のようにスタジオでもロケでも面白い番組になってくれればいいなあと思う。とりあえず集められた3人が、特番化を呼びかけるインスタライブは見ていて寂しい気持ちになった。応援にコミットした熱量を提示するより、面白い企画を淡々とこなす方がこの3人には合っている気がする。「令和スタイルでお笑い界に革命を起こす女芸人3人が、好き勝手喋り倒します」だけで消費されるのは、もったいないし寂しいじゃないか。

そんな気持ちで、また来週も見る。


ちなみに、番組の人気を図る一つの指標であるTVerの登録者数は以下。
『バラバラ大作戦』に限らず冠番組を継続してきた、さまぁ~ず、くりぃむしちゅーが頭一つ飛びぬけている一方、
次点で5万人台に乗っているのが『イグナッツ!』『NEWニューヨーク』『キョコロヒー』そして『トゲアリトゲナシトゲトゲ』だ。
人気者たちの冠番組に続いて、異なるコンビ3人の座組バラエティがこの位置についているのは、面白いことだと思う。

図1

(オケタニ)

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