【#16 欠伸】フジテレビオンデマンド万歳
地方都市の片隅で、
夜中音を立てないようにそっと階段を降り、
暗闇のなかでリモコンを探す。
夜中にこっそりテレビドラマを見る。
それが原体験だった。
お相手はいつもフジテレビだった。
月9と木10が大好きだった。
高校の東京見学の際、お台場夢大陸で『リッチマン プアウーマン』のクリアファイルを買った。
木柄イラストに「NEXT INNOVATION」の文字が入っているものだった。
3つ買った。
数学なんて全然できやしないのに、数学プリント専用のクリアファイルにしちゃったりした。
いつからだろう、月9が恋愛ドラマをやらなくなったのは。
ここ最近の夏クールを振り返ってみた。
2013年 『SUMMER NUDE』
2014年 『HERO』
2015年 『恋仲』
2016年 『好きな人がいること』
2017年 『コードブルー THE THIRD SEASON』
2018年 『絶対零度』
2019年 『朝顔』
ちょっと前までは、「キャッキャ」言ってたきがする。
でも、最近、「キャッキャ」言ってない気がする。
「キャッキャ」言いたい、「キャッキャ」言いたい。
そう思いFODを開くと『素直になれなくて』がアップされていた。
2010年のドラマで北川悦吏子脚本、上野樹里主演。
上野樹里が今期の月9の主演だということで期間限定配信されていた。
『素直になれなくて』は物語はtwitterのオフ会で男女5人が知り合うところから始まる。今からすると考えられないが、
twitterというSNSを使っている、そのことだけで彼らは繋がっていた。
初対面のシーン、
「あれもしかして〇〇(アカウント名)?」
みたいなこともやっちゃう。
上野樹里と瑛太でも今となったら恥ずかしくて見てられない。
ただ、暗闇でドラマを見ていた頃の自分は、
「マジか〜東京はみんなこんなオフ会してんのか〜」
とキラキラした目で、「キャッキャ」していた。
残念ながらドラマ公式クリアファイルはなかったので買えなかった。でも毎日携帯サイトで番組公式twitterをログインせずに眺めていた。
それから5年後、上京した。
明るいところで堂々とドラマを見れるようになった。
だけど、ブックオフで開いたカルチャー雑誌、
『素直になれなくて』は文化の最前線では「ありえないtwitterドラマ」と揶揄されていた。
「マジか〜東京のセンスでは『ありえない』のか〜それに俺は『キャッキャ』してたのか〜」
とショックを受けたことを今でも忘れていない。
思春期に影響を受けた作品だから逆らえない、でも自分の指針となっている批評には評価されていない。
と、こんなことを書いたのも、
先日公開されたある動画がtwitter上でハラスメントを助長もしくは二次被害を誘発すると指摘を受けているのを目にしたからだ。
きっと地方都市にはあの頃と自分と同じように暗闇のなかでその動画に「キャッキャ」している子たちがいただろう。
彼らは最初見たときにもしかすると楽しんでしまったのかもしれない。でも、その翌日にはその感情を否定されてしまった。
「その部分は黒塗りにしなさい」と言われた。
もちろん動画の内容に問題はあった。
しかし、私は「一度でも『キャッキャ』してしまった誰か」のことを思わざるをえない。
でも、いつか冷静な目で今の感情を見つめられるときがくると思う。
少なくとも自分はそうなった。
再開させてくれたフジテレビオンデマンドありがとう。
今日も寝るのを抑えてあの頃の自分を思い出したい。