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『爆笑問題のシンパイ賞!!』 爆笑問題と若手の親和性はどこからくるのだろう
テレビ朝日が秋の番組改編を発表した。
金曜深夜の『爆笑問題のシンパイ賞』が日曜21時55分、火曜深夜の『テレビ千鳥』が日曜22時55分に引っ越しする。
バラエティ番組が少しずつゴールデン帯に向かって再浮上してきたことが喜ばしい。
爆笑問題と霜降り明星がMCを務める『シンパイ賞』は、お互いの世代を代表する芸人たちによるロケVTRを見て、より”シンパイ”な方を決定する緩いルールの番組だ。
そして、なんとなく「オンエアバトル世代vs第七世代」の構図から始まった。
第七世代要素を含む番組が増加傾向にあるなかで、この番組一番のウリは、爆笑問題チームとして登場するかつての売れっ子たちだった。
BOOMER・松村邦洋・X-GUN・プリンプリンなど、タイタンライブか爆笑問題のラジオでしか名前を聞かないベテランたちが、久々のテレビ仕事でうまくいかないポンコツっぷりを見せ、爆笑問題が容赦なく嘲笑う。
その笑いは、もはや第七世代より新しいものとしてテレビに映った。
最近よく見かける霜降り明星・粗品の「誰やそれ(そいつ)知らん!!」と言い切るツッコミも冴えるメンバーたちだ。
ツッコミ間違えたときの粗品#ワンコインモノマネ#100円ぐらいのモノマネ#ABCお笑いグランプリでコンビで熱なってます#頑張るか#コウテイおめでとう pic.twitter.com/4sGzoWMn34
— 霜降り明星 せいや (@simofuriseiyam) July 12, 2020
終電が終わった後も駅前にいる人にインタビューする企画にも関わらず、長時間ロケに耐えられず眠りこけてしまったBOOMERのように、哀しきベテランのポンコツっぷりは面白い。とはいえ、人気者しかテレビに出れないなかで久々に見るベテランロケの純粋な面白さに腹をかかえて笑わせてもらうこともあった。
磯山さやかと松村邦洋が、売れてないモデルの相談にのる回なんて最高だった。
しかし、なぜこの二人のコンビ芸が冴えわたり、磯山さやかが松村邦洋の手綱を握る関係性はどこからきているかなんて、二人がレギュラー出演する『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』を聴いてなきゃ意味が分からない。
TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』で毎週この二人の放送を絶賛していた太田のトークが二人の起用のきっかけであることは間違いないのだが、メディアや局の垣根を飛び越える太田のトークがもたらすグルーヴ感は、彼が芸能人のゴシップやスキャンダルにアンテナを張る漫才師であることを考えれば当然でもある。
(面白い会話やエピソードを紹介する腕前で太田さん以上の人はいない)
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さて、コロナ禍でロケができなくなったタイミングから『シンパイ賞』は3週連続のネタ合戦を放送し、その後単発の特番にもなった。(6月13日放送『爆笑問題VS霜降り明星 第七世代と真剣勝負せよ!ネタジェネバトル2020』)
VTR対決が、ネタ見せ番組へと舵をきって成功を収めたのだ。
このときから、爆笑問題チームも若返りを果たす。EXITや四千頭身ら霜降りチームと戦ったのは、流れ星・とろサーモン・ルシファー吉岡・ニューヨークら中堅芸人たち。
ネタ番組でありつつも、ネタ終わりのトークで「第七世代vs第七世代にプレッシャーを感じている世代」の構図が新しく描かれるようになった。YouTubeチャンネル開設から地道に頑張ってきたニューヨークが『シンパイ賞』で第七世代に対して大活躍している姿は最高だ。
しかし、『アメトーーク!』で「第6.5世代芸人」の回が放送されるなど、芸人のタレント的側面をあぶりだす一連の世代論争は白熱しきった感がある。
せいやがラジオで口走った「第七世代」が黄金の額縁にいれられた結果、『アメトーーク!』『ゴッドタン』『しくじり学園お笑い研究部』などの比較的ニッチなお笑い番組では逆に、第七世代と対峙する先輩世代のリアルなトークがブームとなったからだ。
そんな、ハンパな世代として圧縮された芸人たちを総じて「爆笑問題チーム」として請け負う爆笑問題の存在感が占めされるのが『シンパイ賞』だ。
爆笑問題と若手芸人の親和性は、ほかの大御所やベテランたちとは一線を画す。
なぜかそれがずっと当たり前のこととして成立してきた。
メディアや番組を超えたイジりや悪ノリを連発する太田の無茶苦茶なキャラクターが、若手にツッコませたりバカにさせたりする余白を生んでいるからだろうか。
それとも、第七世代だろうが第6.5世代だろうがずっと後輩に当たる世代に交じって、常に新ネタを披露し続けるから現役感からだろうか。
先輩後輩関係が一大勢力をつくる事務所に所属していないからだろうか。
とにかく、爆笑問題の周りには事務所を問わず、常に若手芸人の話題があるのだ(ハライチ岩井、鬼越トマホーク、フワちゃん、空気階段、オードリーなど)
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現在、この国を代表する大御所MCを考えてみる。「芸人ひな壇ゲーム」を仕切る明石家さんま、「他ジャンルひな壇」を回すダウンタウン、「ファミリー座組」の中心にいるウッチャンナンチャン。
『いいともグランドフィナーレ』で同じステージに立った彼らに比べ、爆笑問題は視聴者目線でも親しみを覚えやすい距離にずっと居続けているのではないか。
かつて大型新人として成り上がってきた存在や、M-1優勝などを足掛かりにランクを上げてきた芸人に対して、爆笑問題のバランス感覚は奇妙に思える。(田中が『ケンミンショー』の司会をやることに何ら違和感はないのに)
テレ朝の改編や、『有吉の壁』の成功から見るに、従来のテレビバラエティの枠のなかで第七世代一人勝ちになるかと思いきや、もっとシンプルなネタ番組が有象無象の芸人たちをすくい上げる兆しが見えつつある。
自身に長寿バラエティ番組がないことや、今でも視聴率を気にすることを太田は話してきた。しかし数年ぶりにやってきたネタ全盛の時代において、ネタを披露する芸人の大きな器き爆笑問題がなるのではないか、数字をガンガン稼ぐ人気者になるのではないか。ワクワクしている。
オケタニ
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