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中村佳穂×月見ル君想フ

ASAYAKE 01企画「天然記念日in Tokyo」を観に青山月見ル君想フに行った。
この日、中村佳穂は一人でステージに立ち、主催者との物語を語り、再会を果たす奇跡が祝福された。

音楽は振動なのさ。音楽は共鳴なのさ。
貴方の振動をつかむ勇気ができました。
京都から来ました、中村佳穂です。

いつものように、綺麗で青みがかった月を背に始まる。いつもは絡み合ったリズムと歌が、今日は手をつないで歩いているような、やわらかい関係のまま客席に降ってくる。完売公演の半数は恐らく彼女目当て。

有名に繰り上がるということは
誰かにとっての悪者になることかもしれない
私はずっと、みんなの楽しいでいたいな

「口うつしロマンス」「きっとね!」「アイアム主人公」
流れるように三曲を歌い終える。

月が見える。
景色が回る。

***

遥か昔、火星に音楽を送ろう作戦があったじゃないですか。
違ったっけ、宇宙人宛の、地球文化の幕の内弁当みたいなやつ。
そう。ボイジャーのゴールデンレコード。
1977年に打ち上げられた宇宙探査機に乗っかった円盤で、いろんな国の挨拶と音楽が載っている、あれだよ。ベートーベンとチャックベリーが同じレコードに入ってるそいつに、日本からも一曲収録されている。「鶴の巣籠り」って知ってる?知らないでしょう、当時の日本人も全く知らなかったんだって。当時NASAに勤めてた日本人が、うちはコレで、なんて好きな曲入れたらしいよ。
そんな簡単に決められるもんかね。だってその曲さ、まだ宇宙漂ってんだよ、海王星より遠くで。ロマンだね。見上げちゃうよね。

逆に、ライブハウスって絶対地下にあるべきだと思うんですよ。
バイトの先輩が思わず言っちゃったらしい。「てめえ、道路でごちゃごちゃうるせえな、ライブハウスに蹴り落とすぞ」って。渋谷のある箱のスタッフなんだけど。これ最高の脅し文句じゃない?相手も、本望だよ、なんて答えたりして。
地下に降りれば、今日も音楽が鳴っていて、歌が回っているんだから。
地下には月だってあるんだから。

6年前、絵を描いていた私は急に歌を歌いたくなったのです。
その時はまだビートルズが生きていると思っていたし、「ブギーバッグ」の人たちは死んでると思ってたし、テレビで歌を歌う人が音楽のすべてで、地下のライブハウスの音楽がこんなに素晴らしいだなんて、名もなき音楽家の演奏がこんなに素晴らしいだなんて。あの時、私は全く知らなかったのです。
京都から来ました、中村佳穂です。

即興で歌い上げる前口上。
この日は、月見ル名物企画「パラシュートセッション」
天井に貼られたパラシュートの下で、2組が交互に一曲ずつ演奏するライブ。
パラシュートの下では平等に歌が届く。喋りも、呼吸も、笑い声も、全てが音楽になる力。
中村佳穂とあっぱの対バンは、フロアでバンドセットが向かい合い、ステージを含めてぐるりと観客がそれを囲む。
一対一タイマン勝負のリング、もしくはグルーヴを生み出す真空管。
音源通りであること、アドリブであること
芸術であること、スポーツであること
科学的であること、遊戯的であること
閉鎖的であり、日常的である
音楽に親しみを感じる人が、どうそれに触れて来たのかはそれぞれ。
ただ、そこに音楽があるということ。
それに対する喜びが広がっていく。
相手の歌詞、ビート、メロディーを即興で取り込む、素晴らしき音楽家の力。
歌と音楽を楽しむこと。演者も客も、パラシュートの下では平等。
このパラシュートはどこかに着地するのか、それともしばらく宙を漂うのか。

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音楽というものは
音楽というものは

あの時と同じ場所で同じ声を聴けた。
中村佳穂が売れるとか、ビッグになるとか、そんなことはいい。
あの月の下で、いつかまた見れたら僕はまた全部思い出せる。
台風が上陸する、嵐の前の静けさ。
見上げても、黒い雲しか見えない。
今も宇宙を漂ってる金色のレコード。

どっかの星の宇宙人が、宇宙的に発酵させた酒でも持ち寄って、適当な仲間と楽しんでくれるといい。できれば「鶴の巣籠り」の感想を聞かせてくれ。
土星の輪っかに針落としたらなんか音がなるんじゃねえか、なんつって。試してほしい。

<今日の一曲>
中村佳穂「AINOU」 

(オケタニ)
https://note.com/laundryland

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