【#27 ドッキリ】実録・増税前日記〜Chelmico、愛はズボーン、C Case、Cody Lee(李)
「消費税10%、ドッキリでした〜ってならないかな。3日後」
そんな会話をしながら赤坂の地下を行く、9月28日、土曜日の夜。大通りは芸人たちのマラソン大会が行われていて、通れない。歓迎されない感謝祭。来年の夏はこれの1000倍規模のマラソンが連日行われるんでしょ?都会の真ん中で。冗談じゃないよ。何か言っているようで何も言っていない、環境大臣とか、愛知の補助金とか、16歳の少女を冷笑する大人とか、全部ドッキリみたいで、リアルじゃない。
この30分前、赤坂ブリッツでレイチェルはポケットに家の鍵を入れたまま「Oh Baby!」を歌っていた。満員の会場でラップをして、歌って、雑談をするChelmicoは、日常の延長線上の中でエンターテインメントを作り出していた。楽屋からそのまま出てきた感覚、というか。そういうのが一番リアルだよ。
「チェルミコ、メジャー行ってから歌増えたね、って言う人もいるけど、いつでもうちらの音楽はうちらの音楽だから」
鈴木真海子が言った何気ない言葉こそが、このライブの本質であり、リアルであった。
ライブが終わった後のピザ屋で、知らないお姉さんが「チェルミコはヒップホップの未来」て言っていた。その感想も最高にリアルだよ、と思いながら食べるピザはなかなか美味い。
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翌日の9月29日、日曜日は下北沢シェルターにいた。関西からやって来た、愛はズボーンのライブ。強靭なリズム隊と、ハードなギターサウンドの上で、ボーカルの金城と儀間は、ひたすらにおどける。どれだけクールで洗練されたサウンドを鳴らしても、彼らは次のMCでは「パンパンやで」とひたすらオール阪神・巨人のモノマネをせずにはいられないのである。
ただかっこいいバンドでいることを、愛はズボーンはひたすらに拒む。だからわざと泥臭く声を張り上げるし、自分たちの音楽を「テクノ・ブルース」だと言い張る。そんな不器用で、愚直な姿を見るだけで、エンパワーメントされてしまうのだ。
儀間は「ステージにいる自分のまま、生活したい」と言った。
金城は「生活をしている自分のまま、ステージに立つ」と言った。
まったく逆の話をしているけれども、どちらも同じことだ。どれだけリアルな姿でいられるか。それが多分一番大事なことだ。
そんな二人が最後に歌ったのは、「若者よ、さあパンケーキをほじくれ」と呼びかける歌だった。
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9月30日月曜日。走って新宿LOFT Barへ向かう。
「apartment.4」。
5組のアーティストたちが出るこのイベントを主催しているのは、僕と同年代の人だった。「バンドが本来以上の力を出せる場所を作りたい」と言う彼がブッキングしたアーティストたちは、ジャンルは異なれど、あらゆる音楽を吸収してオリジナルなものを作り出そうとしている人たちばかりだった。
C Caseというバンドは「大衆なんだけど大衆でいたくない人たちが集まってるんでしょう?」と言っていたけれども、大衆でいないことほど、難しいことはない。
それでも、The Flying Video Tapeも、尾崎リノも、LIGHTERSも、C Caseも、Cody Lee(李)も他の音楽とは、何か違うことをやろうとしていた。それは、実はすごいことなんじゃないか?と思っている。
最後にCody Lee(李)が、ステージを降りて演奏した「When I Was City Boy」には、そういう人たちにしか鳴らせない奇跡的なエネルギーが宿っていた。
そんな姿に背中を押されるように、増税2時間前の街を歩いて帰った。
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家に帰ってテレビをつけると、「増税前カウントダウン生中継」と題したニュース番組が映し出される。なんだか冗談みたいだ。それでも、リアルなものは確かに存在するし、そんなものがドッキリみたいなことたちを塗り替えていく。なんて綺麗事っぽいことを言うのも、リアルでいいかもしれない。
(ボブ)
<今日の一曲>
「Boys and Girls」Mom
新宿MARSで観たMomのライブもすごかった。「僕のため息が世界を変える」なんていい言葉を、みんなで歌えるから。