蒼翠の神殿
一つの意識が、蒼空の下で、大気中に放たれ霧散する、
それは、風の斥力で前進し、定まった路の上に、
偶然持ち合わせていた、二本の足を、器用に着地させる。
意識は、蒼の天蓋を司る、パルテノン神殿の、
無限の柱廊を、天の白い眼差しに睨まれて、
何処へともなく、連行される。
神殿を支える、植物じみたエンタシス(柱)は、
柱頭部が枝分かれし、緑の大きな装飾によって、
意識を、白日の下から、覆い隠している。
規則正しい柱間距離の間を埋めるように、
道際を、緑黄の噴水がざわめき、
神殿から放たれる、神妙な魔力を閉じ込める。
陰の深緑は、重圧的な力の象徴だ、
その剛健さで、天蓋のガーディアンとなり、
何人も彼岸へと通す事を許さない。
陽の新緑は、軽快な翼の象徴だ、
その柔和な羽で、天の使いとなり、
彼岸から送られた恵みを、此岸に届ける。
その中で、意識は、為す術もなく帆を進めるが、
神殿自体は、自由そのもので、
次の瞬間には、雄大な自然の覇者になっている。
それに比べて、意識は意識のままなのだ。
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