多人数授業を成功させる3つの秘訣
ここまで「経営史」第1回目の授業デザインについえ、15回にわたってお話ししてきました。たった1回の授業にしては、思ったより長くなってしまいましたが、ここまでの展開は下記のような感じとなっています。
(1)オープニング動画
授業への興味は最初の数分で決まる
(2)席替え・グループ編成
初回授業でグループ編成をするメリット
固定机でもグループ学習はできる
多人数授業でグループ分けをラクラクするには
スマートな人数調整で、スムースなグループ学習
(3)Good&News
グループ学習のアイスブレイクで使えるGood & News
授業ですぐに使える「Good & News」のやりかた
(4)今日のマインドセット
達成イメージが学生の主体性をつくる
スクリプト
(5)自己紹介
初対面でもラクラク自己紹介をしてもらう方法
(6)成績評価について
評価の透明化で学生が安心して受けられる授業をつくる
(7)学習の進め方
先生は話す努力より、黙る努力をしよう
(8)受講のルール
受講ルールづくりは環境づくり
(9)マインドセット
主体的な授業参加は120%の達成イメージから
(10)リフレクション
楽しい気分で授業を終えよう
初回の授業こそが全てを決める
私の大学では、初回の授業をガイダンスという名目で、短い時間でさっさと終えてしまう先生が多いので、学年が上がるほど初回の授業に来なくなります。
そういった先生方の授業は、最初から手を抜いているので、学生たちも腹の底を見透かしています。
適当にしか授業を受けません。
最初から先生がいい加減な態度で接していると、学生たちもいい加減な態度で授業に参加するようになります。
私は初回の授業が最も重要だと考えています。
マインドセットをするチャンスは初回にしかないのです。
まして、100人以上も受講している多人数授業となると、マインドセットなしには統制が取れません。
1人ひとりが達成イメージを持つことによって、貢献意欲を持って、主体的に授業へ参加するようになるのです。
さて、私が多人数授業のデザインで留意してきたことは、3つあります。
①授業に最後まで参加してもらうこと。
②他者へ配慮し、秩序を守ること。
③主体的に参加する仕組みを作ること。
授業に最後まで参加してもらうには
大学では授業を途中でドロップしてしまうことも可能です。「授業面白くないし、単位もいらないからやーめた」ということですね。
人数が多いと、1人ひとりの教室での存在感が薄くなります。目的も持たずに、ただ出席して授業が終わるのを待っているだけ、という受身の姿勢でいても問題になりません。
そうすると、1人くらい受けるのをやめたって、どうってことないのです。
ですから、学生には授業を受ける目的を決めてもらっているのです。
やりたいこともない、何に興味があるかも分からない、時間割の都合で授業を入れている。そういった意識でいても、とりあえずでも、無理矢理でもいいから、一旦目的を決めてしまったら、人間は達成へと動き出します。そうすることで、受講生はドロップすることなく授業を受けるようになります。
他者へ配慮し、秩序を守るには
多人数授業では、1人ひとりの存在感が薄くなるので、身勝手な行動を取りがちです。ですから、他者との関係性を意識してもらいます。
多人数授業が失敗するのは「ひとりくらいなら」という学生の意識を甘く見ているからです。それが「じぶんたちくらいなら」といった小集団に広がってしまいます。先生もモグラ叩きのように私語を注意し、しまいには怒鳴り散らすといったことも。それがさらに反発を招いて、しまいには教室崩壊となります。
これは教室の関係性を「先生対学生」といった、2元的な関係で見ていることから怒ります。教室とはいえ、一つの社会です。先生もその社会のシステムの一部です。ですから、1人の行動が全体へ影響を及ぼすということを、まず先生が自覚しなくてはなりません。多人数授業では、迷惑な学生を権力で抑えようとしてしまいますが、それが失敗の元です。
ですから、最初にルールを示しておくことが重要なのです。ルールを示し、その意義を話し、全体の合意をとっておけば、お互いに意識するので、教室の学習環境を守ることができます。
主体的に参加する仕組みを作るには
繰り返しますが、多人数授業では、1人ひとりの存在が薄くなります。ですから、1人くらい受身でいても、寝ていても全く問題はない、と学生は考えるようになります。多人数であるという状態が主体性を奪うことになります。
だったら、少人数にしてしまえばいい。多人数授業で、少人数を実現するために、グループ学習を取り入れているのです。グループという小集団になれば、他人に埋もれることはありません。お互いの顔が見えるので、受身でいることはできません。最初は受身であっても、お互いの関係性ができると、主体的な行動が生まれてきます。
アクティブラーニングで、主体的な行動が可能になるのは、達成イメージと教室の安全が確保されているからです。
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