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Just drink it up baby

 冬、吹雪の夜。猟師小屋のなかで、二人の女性が暖炉の前に毛布を掛けて座っていた。

「その患者がは下半身がやけに太っているなと思って、彼女を掛けていた毛布を剥かしたら、なんと、彼女の下半身は二本の足の代わりに、鱗に覆われた鰭肢がありました。彼女はマーメイドだったんです」

 ぱちっ、暖炉に中で火花が跳ねた。

「『ここでの事は秘密にしてくれますよね?』と彼女が言いました。『もちろんです』と私は答えました。婦人科に訪れる中で人に知られたくない秘密を抱えているたくさんいます」

「でも今言ってしまいましたね?」狩人装束の女、スノの鋭い指摘に対し、シズは「あっ」と自分の手で口をふさいだ。

「やっちゃいましたね。でも名前出てないしセーフですね?」
「私に聞いても」
「そういうことにしましょう。彼女は人間にあたる産道の部分から、一匹のイール、その下半分がぶら下っていました」
「えっ」

 いきなりの急展開にスノは顔が引き攣ったが、その反応はシズを楽しませ、更なる火を点けた。

「人間は古来性的快感と好奇心を満たすため色んな物をケツ穴とヴァジャイに入れてきました。それが人魚たちも同じ発想に辿ったようです」

「えぇ……でも、イールの背びれは小骨が逆棘になっていますよね?」スノはシズが話した光景を想像力で再現し、思わず下腹部を意識した。「絶対いたいよ……うぅす……」

「その通りです。マーメイドのMさんはまさに自力でイールを抜けず、ここに来たわけ。私はため息、最近のプレイは進んでるな、時代の取り残されてしまった感嘆し、ハサミを手に取った。『よぉくわかりました。とりあえずイールをばらし肉塊にしますね』と言ったが、彼女は慌てた表情で『だめです!バラしてはいけません!彼は私の夫です!』と返した」
「えぇーー!!?」
「ただいま!」
「あ、お帰りなさい。結果はいかがでしたか?」

 扉は開かれ、冷たい空気が小屋に吹き込ん温度を少し下げた。入室した男は頭を左右に振り、コートに防寒コートについた雪を叩き落とて壁のフックに掛けた。彼の名はアクズメ。小説書きだ。

「いやぁ、だめだったよ。最終選考まで生き残れなかった」
「そうですか。残念です」
「今年はバッティさんがチャンピオンになったんだ。英雄出少年(若い人がすごい才能を持っているの意味)ってのはまさにこれのこと」

 アクズメとシズが話してる間に、スノはずっとそわそわしていた。さっきシズがしてくれた話、夫がイールのマーメイド、そのあとが気になって仕方がない。でも我慢、彼女は辛抱が強い狩人の娘だ。

「今年もCORONAもらえなかったが、ところがどっこい、チャンピオンでなくてもCORONAは飲めます。金さえ出せれば」と言った彼はバックパックから三本のコロナビールを取り出し、テープルに並んだ。「ちゃんと三人分買って来た。飲もう!来た道で冷やしたよ」

「まあ、気が利きますわ。なら私はピザを温めてきます」
「手伝います!」

 スノはシズの後について行き、アクズメは暖炉の前に手袋を脱ぎ、手を擦った。

 10分後、テープルにストーブで加熱したメキシコチリペッパーとマシュルームのピザが乗っていた。CORONAはすでに栓を抜いてある。

「コホン。それでは」アクズメは瓶を持ち上げた。「新たなチャンピオンの誕生に、最終選考通過者に、全作品を目を通したダイハードテイルズ審査員、なにより大いなる逆噴射聡一郎に、彼らの努力を最大の肯定と感謝をこめて……」
「そして全人類の健康を祈って」続いて、シズも瓶を掲げた。
「そして父さんにも」とスノ、彼女の目は微かに潤っている。「育ってくれた恩に」
「最後は高スキ数でも二次選考通らなかった勇者に……乾杯ィ!」
「「乾杯!」」

 三人は同時に瓶に口をつけてビールを流し込んだ。それからは湯煙立つピザを頬張り、メキシコチリペッパーの酸っぱい辛さを楽しんだ。

「お、もう振り返りや反省文などあげてるやつがいる。早いもんだな」
「書きませんか?反省文」
「うーむ。僕は傲慢なナルシストだからあまり自分を顧みない。強いていうのなら、出オチに拗らせすぎたところか?」
「ちゃんと反省しているではありませんか」
「あとはやはり日本語の母語話者じゃないので使える表現がネイティブと比べて限られているって感じ。文法も危うい」
「勉強不足ですね。でも出オチのところは賛同です。情報が過剰提供されたこの時代に、最初が面白くても、二回、三回やるともう誰も笑わない。私の続編を観ればわかりますね。スキ数は大賞投稿作と比べて遥かに少ないです」
「なんでだろうな。でも楽しいからまだまだ書くぜ。シズ先生はまたまた人のヴァジャイナと肛門を探らせもらうよ」
「ええ、もちろん。喜んで突っ込ませていただきますわ。ギュッーパッ!」

 シズはラバーグローブを嵌めるジェスチャーを取った。サウンドエフェクト付きで。

「……出れるだけで十分いいと思いますよ。私なんか、また父さんの墓の前で突っ立ってるから」アルコールで顔を赤らめたスノが呟いた。

「すまんな、スノ。そうだな。せっかくイラストまでもらっちゃったし、その内書こう」
「その内って、いつのうちですかぁー?まさかどの創作人物にも同じこと言ってるじゃないでしょうね?」
「キグッ。そ、そうだ!スノ、なんかやりたいことあるか?参考にする」
「あー、とりあえず沖の下の町にでも行って、服とかナイフを新調したいですね。父さんに旅に出ろと言われても十年間山ごもりだからどこに行くかわからないし」
「そうか。つまりカンファタブル・ゾーンから離れないといけない原因が必要ってわけか。承知したぞ。クックック……」
「それは酷いことが起こる意味ですか?ヤバい、自分で蜂の巣に手を突っ込んだ」

 と言いつつも、スノの瞳の奥に闘志が燃えていた。自分の出番が楽しみで仕方ない。

「(あっ、仕方ないといえば)シズ先生、さっきのヴァジャイナにイールが刺さったマーメイドの話、続きを言ってくださいよ」
「あそこにイールが刺さったマーメイド?何それ怖い。面白そう」
「そうですね。ではもう一度最初から。ある日、車椅子に乗った女性の患者が……」

(終わり)

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akuzume
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