Pre-cure外伝:ダーヴィ、ジムでPre-cure !
Pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-Pre-cure!
Pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-Pre-cure!
おれたちはPre-cure! きみだってPre-cure!
大きな声で(Pre-cure!)
元気いっぱいで(Pre-cure!)
(Hey show some respect dude)
明日への希望だ(Pre-cure!)
やるぜ今日も(Pre-cure!)
Ooohhhh YEAH!
午前四時半、24時間営業のジムでは、自分に甘えない男女たちがウェイトトレーニングに励んでいる。リー・ミーシェンもその中の一人。
彼女はなぜ、大部分の人間また温かい布団の中でうずくまっている時間に、ジムに来たのか。理由は簡単。この時間は一番人数が少なく、上質なトレーニングができるからだ。昔は夜七時ぐらいジムを来ていたが、人混みがひどく、仲良しのグループが器具を占拠し、満足にトレーニングできないことが多く、空気も悪かった。そのため彼女は生活習慣を変えて、夜八時就寝し、三時に起床、ジムを通うようになった。
シーライオンみたいな姿勢上半身を両手で支え、床に伏して腹筋を伸ばすと、立ち上がった彼女はミラーに映る自分を見る。完璧なシックスパックだ。満足そうに腹筋を撫でて、今日のメインメニューに入ろうとレッグプレス器に来たが、シートの様子を見て、眉根を寄せた。夥しい量の汗の水滴が付いている。離れたところでベンチプレスしている赤いスポーツウェア男の仕業だ。ヒーローコミックのキャラめいた凄まじい肉体だが、器具を使う際はベンチやシートにタオルを敷かないし、付けた汗も拭かない。いわば迷惑なやつだ。ミーシェンは小さく舌打ちし、カウターへ行き消毒液と雑巾を取ってきた。今晩はもう何回もあの野郎の汗拭きをやらされたのだ。
本来マナーの悪い使用者を戒めるのはスタッフの仕事だが、スタッフだって人間。よほどのことにならない限り、面倒を避けたがっている。ミーシェンはストレスが溜まっていく。アルコールが揮発し、比較的にキレイになったシートに座り、重量を100キロにセットした。
「フッ! ハァー! フッ! ハァー! フッ! ハァー!」10回まではウォーミングアップだ。今度は重量を150キロにセット。「フッッッ! ハァーッ!フッッッ! ハァーッ! フッッッ! ハァーッ!」14回目、かなりキツくなったが15まで届けたい。ミーシェンは目を閉じ、歯を食いしばった。
「ヌゥゥァアアーッ!」全力で踏み込む! あとは大声を立てずにゆっくり戻せば……と思った途端、両足に掛かっていた重量がなくなった。訝しんで目を開けたミーシェンが見たのは、レッグプレス機の踏み板を片手で掴み、引止めている。
「女としてはなかなかやるではないか、えぇ?」
「……何をするんですか?」
ミーシェンは睨み返した。彼女はこういう威張る奴を心から軽蔑している。
「あのな、さっきから俺が残した、汗を拭きまくってよな。嫌味なの?嫌味だよね?俺の汗が気に入らないって言ってるみたいなもんだよね?」
「そりゃそうでしょう。気持ち悪かったから」「わざと残したんだッ!」「んあっ!?」
男は咄嗟に手を話し、踏み板に掛かった150キロの重量がミーシェンの両足に弾いた。
「知りもしないで……こんな身体で、ここまで汗をかかせるのがどれ程カロリーを消費したか」男は唸るように言った。ミーシェンは膝を抑えながら、男の苦悶とした表情から違和感を覚えた。
(この男、なんかおかしい……さっきから、まるで、体と表情が別人みたいな……)
「汗をまき散らして、いいボディの奴に伝染るのか俺の役目なのにお前……こうしてやる!」
男は咄嗟にミーシェンの腕を掴み、自分の汗だくの胸に当てた!
「ヒィッ!?」生理的不快!もはや嫌がらせの域を超えてセクハラに成立している!
「お前が悪いのだ……俺の計画を邪魔してよぉ……こんな時間までジムに来れば、朝になって汗が乾いて誰も気づかずに卵をばらまくことができたというのに……」
スポーツウェアに吸収された汗ミーシェンの手を濡らしていく、知り合いでもなんでもない人間の体温が伝わってくる、最悪だ。
「やめ、やめてよ!」「もう遅い、これでお前も仲間入りだへっへっへ」「放せ、レディが困っている」
声と共に三本目の手がスポーツウェア男の手首を掴んだ。二人が振り向くと、制服のオレンジ色のポロシャツを着た男がいた。首に「Coach:Gibson Drakewood」を札がぶら下っている。
「ほーほぉ、テイッギイィージー、兄弟。なんのこともないさ。ちょっとレディにの動きが気ごちなくて指導してあげただけさ」男は白けて手を引っ込めだ。コーチギブソンはミーシェンの方に向いた。
「大丈夫か?必要があれば、警察をよんでもいいぞ」「いや、私は……なんともない。ちょっと手が汚れただけ」「そうか。ではミスター。ここの職員として忠告しておく、もう一度違反行為を発見すれば、退場してお願い頂こう」「けっ、言われるまでもない、今日はもう帰るわ。せっかくの気づかいが台無しだ」
男はそう言い、更衣室に行くことも無く、濡れたスポーツウェアのままに外を出た。
「ありがとう……あんた、はかの腰抜けの連中と違うのね」
ミーシェンの鋭い視線がほかの職員と利用者がこっちへ向けた好奇的な目と合い、逸らさせた。
「当然このことをしたまでだ」「コーチのギブソンだっけ?見ない顔だね。ここで何を教えてるの?」「え」
クールなギブソンの顔が一瞬に狼狽えた神色が浮かんだが、すぐに戻った。
「主にバットリングロープスと体幹トレーニングだな……」「そうか、じゃあ来月は申し込んでみよう」「いや、来月は……はぁ。ところで、あいつの体に何か付いてるかわからない。早めに手を洗った方が良いだろう。念のためシャワーも浴びておいた方が良い」
なぜか知らないが、ギブソンは急いでいる。この会話を終わらせよとしている。残念、彼のこともっと知りたかった。
「わかったわ、そうする。ありがとうね、ギブソンさん」
「いいえ」
ミーシェンはシャワー室へ歩き始め、ギブソンはガラスドアを引いて外に出た。
◆🌯◆
路地裏に、二人の人陰が激しく動いている。一人さっきの赤いスポーツ男、猛一人は全ての光を吸収する黒いボディスーツを着ている。
「噂ほどでもないな半デーモン! 覚醒率80%の俺たちの敵ではがああああ!」
全身に電流が走ったような麻痺感、男は糸が切れた木偶のように倒れた。
「これがテン・マークだ」
黒い男、ダーヴィは残心し、男に近づくと、人差し指で彼の脊椎を数回突いた。
「ほっ!?」男は目が大きく開く、跳ねるように立ち上がった。「体が思うように動く、これは一体……?助かったのか?」
「もう少しで脳まで筋繊維になるところだった」
「助けてくれたのですね!ありがとう!」
握手を求め伸ばしてきた男の手を、ダーヴィは払い除けた。
「まだだ、俺は奴らを眠らせただけに過ぎん、おまえはここに行って、治療を受けるんだ」
男はダーヴィが差し出したカードを受け取った。「お相撲料理 CHANKO」の名刺だ。
「ちゃんこって」「増量しろ。さすれば助かる」「でもここまで鍛えたのにちょっと忍びないていうか……あっ」
顔をあげると、ダーヴィが既に居なかった。
「ちゃんこか……腹減ったなぁ……」
Pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-Pre-cure!
Pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-pre-Pre-cure!
「こうしてジムに平和が戻り、また一人が、ブレーンマッスルの魔の手から救われたとさ。めでたしめでたし」とサミーがコミック本を閉じた。
「おじさん、質問!」と黒人の少年が手をあげた
「はい、Mr.スミス?」「ギブンンはダーヴィの本名だったのは前回でわかったけど、なんでジムで働くようになったの?彼は無職で路上生活しているよね?」
「いい着眼点だね。この本の中では言及しなかったか、彼は『ブラックミストの幻(まぼろし)』を発動していたんだ。これは自分の存在情報を曖昧にして、あらゆる身分に成りすます魔法だよ。外見は変わらないので、あまり目立った行動を取るとバレてしまう。逆にその場に相応しい服装を着るとかでバレにくくなるよ。彼はたまにこの能力者を用いてパーティーに紛れ込んで食事したりした」
「ふーん、ご都合主義じゃん」
「そうでもないよ。この魔法を習得するため彼はコンビニとか自販機の補充とか牛丼屋とかいろんなバイドで社会を学んだよ。この部分は「ダーヴィ・ザ・ヴィジャランティ# 5」に収録されている。時間があれば読んでね」
「面白そうだけど、どこで読めるの?」「まだ書かれてない」「はぁ?」「まだ書かれていないんだよ」
(終わり)