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タピオ・カーン RISING

「おいおい、見ろよこの列ぅ〜」「バッカみてえ!」

 メガネとセミロングの若い男性二人組が列を成しているタピオカミルクティーショップの前でスマホをかざして生配信していた。並んでいる客の顔が処理されず直接youtubeのLiveに流されている。立派なプライバシー侵害だが流行り物を叩いて自分の優越感に浸っている彼らにとってそれすらスリルを増すスパイスである!

「そもそもさぁ、タピオカはキャッサバという芋から作られた、いわば澱粉の塊だぜ?それをくそ甘いミルクティーに入れるってんだ。こんなもん飲んだら体脂肪が爆上げっしょ。それを知って並んでいるのか女子ども」

「ほーんと、いつもダイエットダイエット喚いて米を食べないで家族を困らせるのに、流行りものには無抵抗だよね。ダブルスタンダードとか女子サイテー」

 差別的発言!しかしこれも視聴数とコメント数を稼ぐための故意的行為である!二人は益々テンションが上がり、発言が悪辣になっていく、おお、もやは彼らを止める者がいないのか?

 その時である。

 ドゴーーーン!!!

 雷鳴と共に、さっきまで晴れだった空をネズミ色の雲が遮った。また午後四時だがもう七時のような暗さ。

「うわっ、びっくりした」「急に天気が変わったぜ、雨が降りそうか?」

 カメラを空に向ける眼鏡。

「おい、あれを見ろう!」

 セミロングが眼鏡の肩を叩き、カメラの向きを変えるようと促した。眼鏡がセミロングが指さす方向にカメラを合わせた。

「ん?なんだありゃ?」

 道路の向こう、小ぶりの馬とそれに乗っている騎士の黒いシルエットが現れた。

「コスプレ?」「痛いやつだぜ、ちゃんと映ってるよな?」「ああ、突発インシデントだな、これ以上おいしいネタがない……」

 眼鏡が高性能スマホカメラをズームインする。モニターに写っているのはなんと、モンゴル帝国式鎧を纏った、見事な黒ひげをたくわえた騎兵と、彼が跨っている黒いモンゴルナイトメイアであった!騎兵の瞳のない目が白く輝き、ナイトメアは鼻孔から炎の息を吐いた。

「タピオ……」

 騎兵が腰に帯びている柄に黒真珠で飾り付けた湾刀に手をかけ、そして。

「カーーーン!!!」 

 一気に引き抜くと、ナイトメアに拍車をかけて走り出した!

「タピィーフィーンヒヒヒーーン!」

 モンゴルナイトメアも雄々しくいないた。

「おい、剣抜いたぞ!銃刀法違反じゃん!」「こっちに向かってきてね!?」

 本能で危険を察知した二人は配信を中断し逃走!しかし時既に遅し、時速68㎞に達した騎兵は右側に体を乗り出し、右手に握ている湾刀を水平に繰り出し眼鏡の首を刎ねた!そしてすかさず手を戻し、今度はセミロングの背後から湾刀を突き出し、胸部を貫いてそのまま持ち上げた!

「ゴホォーッ!?」

 肺を破壊されて吐血するセミロング!

「タピオ!カーン!」

 モンゴル騎兵は満足げに串刺しされた戦利品を見上げ、残忍な笑顔を浮かべてそのまま去っていった。

ータピオカのある場所にタピオ・カーンがあり。彼はタピオカを侮辱する者を許せないー
≪澱粉と神話:タピオ・カーンの章 より≫

(続く)

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