【剣闘小説】はじめてのフレンズマーチ
『アイカツカードが下から一枚出てくるわ。忘れずにとって……』
画面上の霧矢あおいがまた喋り終わっていないうちに、おれは既に排出口からカードをキャッチしてチェックに入った。ピンクリングブーツ、ダイアモンドフレンズのカードだ。
(ぬぅ、このタイミングでRカードが出たか。ちょうどいい、こいつで試してみよう)
というわけで今日はこのコーデにした。いざアリーナへ。フレンズとしてかつての同志、氷上スミレを選んだ。曲はBelieve itで、難易度は激むず。何気に気に入ったよねこの曲。
-カードダス時空-
「久しぶりだなフローズンレイク。最後に会ったのはローマ転覆手前だった頃か。懐かしいものよ。全国を巡って強え連中と戦ってよ……あと少しで皇帝を殺せたところでフレンズシステムに飛ばされたのが悔しいが」
「お久しぶりDOOMちゃん、皇帝を殺すだの物騒なこと口走って、相変わらず剣闘士大好きだね」
「ああ、他人が何を言おうとアイドル=剣闘士説は真実だからな。これからもアリーナの神を目標にしてやっていくつもりだぜ」
「(おもしろい子)フフ、そうだね、個性は大事だね」
「今、あたしをバカだと思ったな?良いだろ、この新しいAmorの力を見せてやる」
DOOMはさっき手に入れたカードで即席に組んだコーデを見せつけた。
「いや、今日は協力プレイだから」
「まじか」
-現実-
正直対抗モードが怖くていまでも手を出していない。Love&Peace、平和は一番。
しかしやはりBelieve itはいい曲だ。緩急、歌詞、聞きやすさ、そして適切な難度、心地のいいプレイだ。できれば日本の縦長筐体でやってみたいものだ。この間はDolly Devilの激むずステージに挑戦してはじめて不合格を食らった。本当にデビル級の難しさだったぜ。超短いドーナツはまさに鬼畜……おっとそろそろこっちのスペシャルアピールが出る頃だ。集中集中……んあ?
画面中に、氷上スミレとDOOMが突如に現れたジャンプ台を踏んで高く跳躍!そして空中で交錯する途端に♡状のレールが出現した。これはッ!みたことあるぞ!あっやべ、予想以上に矢印が来るのが早っ。
-カードダス時空-
(なんだこれは!?)
(フレンズマーチよ、DOOMちゃんやったことないの!?)
(ねえよ!カードが集まんねえからッ!)
説明しよう。アイカツ中の熟練したアイドル同士は互いの肢体、表情、眼球の動きで相手の思考を読みとり、意思疎通できる。言葉要らずとも瞬時に大量な情報を交換が可能なのだ。原作にそんな設定はない?でも剣闘小説には一般常識だ。わかったか。
(あ、こめん、これ無理かも)
(DOOMちゃん!)
「ほわっぷ!」
DOOMは不慣れのスペシャルアピールに対応できず顔面着地!一方スミレは軽やかに緩衝をつけて三点着地に成功し、DOOMの様子の伺うべく振り向いた。その時DOOMはすでに床に向かって打開めいたダブル掌底を放ち、跳ね上がった上半身を卓越したアイドルコアマッスルの力で立ち直った。鼻血が垂れているにも介せず、獰猛な笑顔でスミレに向き直った。
(続行だ!次はやれる!)
(さすが)
スミレは優雅に微笑みで返した。
-現実-
穴があったら頭を突っ込みたいな気持ち、だがおれは大人だ、アピール失敗の悔しみに耐える精神力を備えている。おれは内心の動揺を隠し、ポーカーフェイスでプレイを続行した。にしてもフレンズマーチが出るとは想定外だった。てっきりいつものCute Smileだと思ったわ。だって公式コーデではなかったし……これは検討が必要だ。さあ、二回目のスペシャルアピールが来るぞ。
-カードダス時空-
「「ハッ!」」
DOOMとスミレ、二人が突如に現れたジャンプ台に向かって跳躍、踏む、飛ばされる!そして空中でX字に交叉し、向こう側のジャンプ台にもう一度踏み、高く弾かれるが、こんどはアイドルパワーの高まりから生じた謎の引力によって二人が螺旋を描きながら上昇し、最頂点に達した途端に手を握り合わせ、満面の笑顔でポースをきめた!アピール成功!
Lv.7 Friends March!
(やったぜ!)
(やるじゃない!)
-現実-
やったぞ!二回目でみごとにPerfect判定でアピール成功した、やはりおれにはアイカツの才能があるってわけだ!
ボタン連打してフィーバーを終え、おれは興奮で湧き出た額の汗を拭いてカードを片付けた。今日はおれとDOOMに剣闘の新たな一ページを書いた記念すべき日だ。
そいえばなんかしなきゃって思ってたんだけど、なんでしたっけ?思い出せねえや。まあいい、フレンズマーチ見れたし、今日は勝利の美酒に酔うぞ。
-カードダス時空-
控室にて
「カードのカテゴリーの横によくご覧、Friendsと書いてあるでしょう?」
「へー、これはもしかして、Friendsと付けたカードが三枚あればフレンズマーチが出せるというのか?」
「そうだよ。というかカードをスキャンするとき出るんじゃなかった?使えるスペシャルアピールの名前が」
「あっそいえば」
「出たんだね」
「出てたよなぁ~いつも通りスキップしたからよく見れなかったハハハ!」
「もう、ラフだから」
「いやわりぃね。勉強不足だったわ。でも結果オーライだったな」
「まあそれもあなたらしいというか……」
スミレはバッグパックを片肩で背負って立ち上がった。
「久々に組めて楽しかったわ。また機会があれば一緒にやろ」
「おう、今日はありがとうな」
「こちらこそ」
二人は手を伸ばし、拳を叩き合った。
カードダス時空とは?
カードダス時空、それは現実とローマと現実の中間にある平行世界。そこにアイカツの登場人物(剣闘士ではない)たちが存在している。DOOMも剣闘士ではなく、毎日剣闘士剣闘士と呟いてるちょっと変な子だ。この時空はこれから人が死んでほしくないときに書く。これからも剣闘小説を楽しんでください。