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イカスミスパゲッティ生物【映画VENOM】
『やあ、僕だ。これは最後のスマホ配信になるかもしれないからよく聞いてほしい』
画面にいつもお馴染みのLAのナードくんが映った。彼は前回ゴーストに腹を蹴られて内臓破裂死したと思われたが、どうやら無事のようだ。いや、無事ではない!なんか顔色が悪いぞ!
『僕は今朝、VENOMの映画を観たあと、どうしてもイカスミスパゲッティをが欲しくて近くのイタリアレストランに行った。出されたスパゲッティが妙にくねくねしていて、ウェイターに尋ねると、「鮮度が抜群の証ですよ!」と言われた。スパゲッティにも鮮度ってあるのかと感心した僕は迷いなくそれを平らげた。ここまで食べたイカスミスパゲッティよりちょっとほろ苦い味だったが、それはそれコクがあって旨かった。でも家に帰って、ネタバレ記事書こうとしたら、変なことが起きた』
彼はダラダラ流れる額の汗を手で拭き、一呼吸を置いて、また喋り出す。
『はぁー……わずか数行をタイプしただけで、猛烈な空腹感が僕を襲った。チャウダースープの缶詰め二つ、生のプロッコリー一個、冷凍サーモン……全部食べても、空腹感が収まらない。ゴミ箱に昨日捨てたサンドイッチを見つけてかぶりついたが、腐ったマヨネーズに耐えられなくて吐いた。恐ろしいことに、さっきまであんなに食べたのに、吐いた物は全部、イカスミスパゲッティみたいなにくねくねしていた。それだけではない……』
苦しそうに俯き、数秒のちんもく。
『信じられないよな、これを言ってしまうと、僕が狂ったと思うだろうけど、言っちゃうよ。イカスミスパゲッティが僕に話しかけた。もっと肉をくれ、とな。あぁ……実際、見せた方が早いか。すこし待ってくれ』
スマホを地面を立たせた彼は二歩下がり、 四つん這いの姿勢を取った。
『では行くよ。フゥー……ヌッ……! アがっ! ハァー……!ハァー……! オゴアアアア!』
悲鳴とともに、無数イカスミスパゲティめいた繊維がナードくんの体から浮かび上がる!
『コホッ、ケホッ!……なあ、見えるか。もし見えたならコンメト欄に書いてくれ、僕は頭おかしくなったか……』
『おい、何撮ってんだ?』『うおッ!?』
イカスミスパゲティが纏わりつき、束ねて、邪悪な顔を作った。輪郭は人間に似ているが、たまごが2つに割れたような瞳孔のない白い目は常に顰めて怒りの形状している。大きく割れたの中に長く鋭い牙が生え揃い、口元は人間の無知と無力を嘲笑うように吊り上げている。
『これ、まさかネットに繋がっているのか?』
『そ、そうだよ! それがどうしたていうんだ!』
『場所がバレちまってんだよバカチンが! まあ、これはこれで都合がいい』
KABOOOM! 爆発音が響き渡り、画面が一瞬ノイズが走った。
『うわああああーッ!』『来たぜ! 肉が!』
イカスミスパゲティ生物がナードくんを覆うように纏わりつき、一秒後、そこに筋骨隆々の黒い巨漢がしゃがんでいた。
『ターゲット発見!』『射殺許可出ている! 撃て撃て撃てーッ!』BRATATATATA! 銃弾がヴェノム体を掠める!
『おっと危ねッ』ヴェノムはスマホを拾い、自分の顔をカメラに収めた。『よお、フォロワー! お前らの住所教えてくれ! 気が向いたら直々行って食ったやるからよ! 俺みたいなかっこよくてバッドアスなスーパーヒーローに食われるのが本望だろ?』
『フォロワーを脅すなーッ!』一瞬ナードくんの顔が浮かび、訴えるように叫んだ。
『ハハハッ!』
画面が真っ黒になり、放送が中止された。
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