辛い麺メント3.5 #ppslgr
太字で現地言語を表現しています
「最後の一口だ……あむぅ……完食!」「カンショーク!長く苦しい戦いだった……」
苦しんでいるM・Jを放っておけず、最後は俺に麺を少し分けたことでなんとか完食できた。正直、時間を置いて少し冷めた牛脂は余計に脂っぽさが増し、口の中で油で出来た膜みたいなものがくっついている感じがしてきついものがある。早く口直ししたい。
「ふぅ、ご馳走さまでした」
M・Jは空になった麺椀に手を合わせた。律儀なやつだな。この国はそういう習慣ないのによ。
「なあM・Jそいえば、レッドローブ=サンから貰ったマキモノ、持ってるか?」
「ああ、バッグの中にあるよ」
「それに書いてあった店で麺は食ったし、何が変化ないか?」
「見てみよう」
M・Jはマキモノを広げて視線を落とした。
「いや、なんも変化ないよ」
「字が消えたり赤くなったりとか想像してたけど、マジックアイテムではなかったようだ」
「およ?辛い麺行脚のリストじゃないか?お兄さんたちこれに挑戦してるのか?」
会話割入ったのは、初老の店主だった。
「ええ、まあ、そういうことです」
「うちの麺はあまり辛くは無かったけどね。旅の始まりとしてはちょうどいいでしょう。どう?満足できましたか?」
「もう腹いっぱいですよ!相変わらず内臓はいい具合でしたね」
「それはなにより」
俺と店主が話している間に、中国語を理解しないM・Jはただ微笑んで、時々頷いたりした。
「食べ終わったら、その店の辣油で店名に塗るのが作法だよ。こうしてな」
店主は辛牛脂を指で掬い、書道で書かれた小呉牛肉麺の字の上に塗った
「これでよし」
「おいおい大丈夫かよ?」
「わからん……止める間もなかった」
「二人の辛い麺道に幸運と、胃の健康を」
小呉牛肉麺、独断評価
麺 ★★
スープ ★★★★
辣 ★★
肉 ★★★★★
🌶🍜🌶
二人は店をあとにして、近くの観光名所であるサイメン・チョウに来た。休日になると全域が歩行者天国になるこのエリアはこの都市において開発が早かったため、古風な建築と現代の商業ビルが入り混じっている。そして混んでいる。
「ふぅ……重いわぁ……やっぱ食べれる量が年々減ってる」
M・Jは道端のベンチで腰を掛け、胃腸を休ませていた。A・Kはソフトクリームを買いにどっかへ行った。
「ハロー、ハンサム!」「ウェッ!?ハ、ハロ?」
不意に話しかけられたM・Jは少々狼狽えた。ベンチの横に、高校生ぐらいの少女がニコニコしながらM・Jに迫っている。ポニーテールが活発な印象を与える。結構かわいい。そしてなにより視線を惹くのは彼女が穿いているホットパンツだ、超短い。
「アッ、エッ、ソリー、アイキャンスポーク、チャイ……」
「お兄さん、日本人?」
「あ、はい」
「イェーイ、あったりー!」
「い、イェーイ?」
少女は掌を突き出してから3秒ぐらい、M・Jは彼女がギブ・ミー・ファイブを求めていると気付き、掌を軽く叩き合わせた。よくわからない状況だが、相手は日本を喋ったことで少し緊張がほぐせた。というかホットパンツ、めっちゃ短い。
ギブ・ミー・ファイブ(Give me five):ハイタッチのこと。そんなに手を高くしない場合もある。
「私、同じアジア人でも、見た目でわかるんですよ!」
「へー、そうですかァ」
極力少女のふとももを見ないよう努めながら返事するM・J。横目にA・Kが戻って来てないか目を泳がせる。
「ねぇ、ひとりで観光?良い場所知ってるよ。教えてあげます?」
「いや、いいんだ。友達と一緒に来ている、現地人の」
「ふーん。そうですか。実は私、デザイン科の学生でしてー」
少女はふいに話題を変え、提げているナイロン袋を探った。ホットパンツ、鼠径部が見えちゃうんじゃないか?
「学費を稼ぎため、これを作って売ってます。手伝ってくださいますぅ?」
彼女が持っていたのは、合成繊維で作られた、髑髏か狼の頭の刺繡を縫いつけた、いかにも安そうなの小物入れだった。
「へー、これが?」
「はい。自分がつくったんです」も一度の強調。「どうですか?たっだ五百元です」
(五百?円に換算すればどれぐらいだよ?)
「ねぇ、買ってくださいよハンサムで親切な兄さ~ん。」
しかしM・Jに思考の時間を与えず、少女は畳みかけた。前かがみ姿勢、座っているM・JはTシャツの襟口から彼女の胸が見えたり、見えなかったり。
「まあ……そこまで言うのなら、買わないてもない……」
財布を取り出すM・J。その時である。
「何をしている」
両手に一本ずつのソフトクリームを持っているA・Kは厳めしい表情で仁王立ちしている。
「そのどっかの工場で作ったゴミはいらん。友人をから離れろ詐欺師どもめ」
「チェッ、邪魔が入ったか。もう少しのところを……」
少女は商品を乱暴バッグに詰めて、後ろに下がったと同時、二人の男が入れ替わったようにM・JとA・Kに対峙した。一人は身長180cm超、太めで坊主頭、黒いTシャツの袖からタトゥーの模様が見られる。もう一人はツーブロックで身長は170㎝近い、無地の黒いTシャツ、柄が悪い。
「なあ、A・Kこの状況って」
「後で話す。やれるか?」
「えぇ〜」
しかし小説の人物による説明はテンポを悪くするのでここでちゃっちゃと済ませましょう。どこの国にもある、ストリートの押し売りはこのサイメン・チョウにも横行している。若者が学費を稼ぐとか、家族のだれが病気だとかと称して、色仕掛けしたり苦肉計で100円も満たない物を10倍から100倍まで法外な金額で売りつける。商品の質は粗悪。このインチキ商売は大体上にギャングが絡んでいる。物価がわからない外国人と気の弱そうなナードがよく狙われる。
※これから一部の言葉は翻訳するとパワーが失うため、あえて原語で放送します。ご了承ください。
「啊現在是啥洨情形?本來說要買現在又不買係啥洨?跨挖小妹係跨免錢哆係啊?」
切り出したのは坊主頭、唸るような低い声に相まってまるで黒グマような威圧感だ。しかしA・Kは臆ぜす相手を真っ直ぐ見返す。正義は自分にあると確信しているから。
「啊按怎啦?林這騙肖誒,係當作挖拱誒係願姆?扛揆好好嗯作,騙呷騙喝,係姆驚報應係姆!?」
「惦惦啦!眸咖你供為好嘸!」
「挖朋友係日本聽瞴台語厚!」
剣幕!
「巷?瞎米情形?」「阿喜咩相打係姆?」
騒ぎに聞き付けた野次馬は集まりスマホで撮影し始めた。
「おいAKこれはまずいのでは?」
「もうちょっとだけ。按!吝哪北爽,後,釘孤支啊!來啊!」
「幹!信唔信林北打齁二耶利變豬頭!」
大男はそう言い、Tシャツの袖を巻いた。両手に彫った関羽と関平のタトゥーは上腕二頭筋と三頭筋の強張りにつれて蠢く。
「OK、M・J先生、お得意のアイキドーでやっちゃってください」
「えっ!!?おれぇー!?」
「当然だろ。こっちは両手がアイスで塞がっているし」
真顔のA・Kに告げられたM・J、流石に困惑!いきなり喧嘩?ここは法治国家ではなかったのか?通報して警察に仲裁させるべきではないのか?しかし考慮の時間はなかった。
「死啦ァーッ!」
タックルを仕掛けた大男!瞬間速度時速30km/h、速い!しかしM・Jのアイキドーブラックベルトは伊達ではない!タックルを踵の回転で舞踏めいて回避するさまに右手で大男の脇に差し込み、タックルの速度を借りて、「アイキ!」投げ飛ばした!
「ガァアア!!?」
5フィートぐらい飛び、左肩から着地した大男は関節がやられたか、空を抱えながら悶絶!その様を見たゴミ売り長女ともう一人の黒Tは互いを見、脫兔のように人混みの中へ逃げ込んだ。
「やったぜ!はい、勝利のソフトクリームよ!」
「アッハイ、ありがとう。ていうかそいつ大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないかな?喧嘩ぐらいここじゃあチャメシインシデントだし。でもはやくずらかったほうがいいよ」
「本当に大丈夫だよね?外国で前科作るのは嫌よ!」
A・Kからソフトクリームを渡され、二人もまた急ぎその場から離れた。
翌日、二人は空港の出発ホールにいた。
「ふわ~結局昨日は警察がホテルに来ないかってびくびくして眠れなかった」
「そう?俺はよく眠れたぜ」
「そら直接手を下したのはおれだからな!責任を追及したらおれの方が重い!」
「はは、心配性だな。正義はこちらにあるっての。大体ああいう奴も警察のお世話になりたくないし、通報とかはしないはずだぜ、多分」
「多分かよ」
「そんなことより日本の辛い麺楽しみだな~どんな店に連れて行ってくれるんだ?」
「それは着いた時の楽しみだ。日本の辛い麺はマジ辛いぞ。覚悟しておけ」
「おう!胃薬はパッチリだぜ!」
二人は話しながら、荷物チェックゲートに向かった。次回の辛い麺メント、舞台は東京へ……!
(続く)