視力回復手術を受ける番外編 網膜レーザー焼き
一次診察の時、医者から網膜裂孔がいくつあると伝えられた。
網膜裂孔はその名の通り網膜に穴が開いていること。強度近視の人によく見られるらしい。網膜に穴が開くとどうなるかというと、視界に羽虫やアメーバのような斑点が見えて、いわゆる飛蚊症を引きおこす。そして症状が進むと網膜が剝離して最悪失明になるそうだ。
即時のレーザーによる処置を勧めた。網膜裂孔は一度生じたら今の技術では直すことはできないが、レーザーで焼くことで裂孔の拡大を食い止めるらしい。それにこの手術は一般診療の範疇なので料金は医療保険がカバーしてくれる、お得だと。
本番前の予習を兼ねて少しでもレーザー慣れた方がいいと思って、私は処置を承諾した。点眼麻酔を受けて、レーザーが出る眼科機器の前に座ると、医者がまず私の右目に開眼器をはめて、逆の目を眼帯のような器具を被せた。
「少し眩しいけど我慢してね」
そう言って医者が施術を始める。カチッと乾いた音と共に熱を帯びた眩しい光が目に射し込む。視神経が焼かれるとはまさにこのこと。反射的目を閉じようとするが開眼器がそれを許さない。
「目は前を見てじっとしてね、がんばって」
医者に励まされ、私はがんばって耐えた。レーザーが通るたびに眼球内の光学的構造で光りが屈折し、不思議の光景が見えてきた。ある時は虹色の塊が花火のように拡散し、またある時は眼球の血管が照らされて、その枝のような形はまるで目の中にテンダービームが放たれているようだった。
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麻酔されたとはいえレーザーされるたびに針に刺されたような痛みがあるし、なにより眩しいのが耐えがたい。とっくに乾き切った私の涙腺が目を潤うべくフル稼働して涙を分泌している、それにつられて鼻が詰まる。余計なことすんなよ身体よ。
「はい、右目はこれで終了。がんばったね。もう一息よ」
苦難の半分が終わり、また半分が始まる。何気に毛髪が焦げる臭いが漂っている。焼肉を食べたくなってきた。
両目とも処置が終わって、クリニックを出た私は散瞳剤と麻酔が引き始めたの二重苦に苛まれた。瞳孔が開いて曇りでもとてつもなく眩しいし、一時的に老眼で何も見えないし、とにかく眼球が全体的に痛い。涙が止まらない。くそっ、COOL GUYで徹してきた私がどうしてこんな目に……目だけに……
その後は食べ放題しゃぶしゃぶに行って心の平穏を取り戻した。網膜が焼かれた甲斐もあって、先日回診に行ったら裂孔が広がっていないと伝えられた。よかったよかった。