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献血話

最近献血の話題が盛り上がってんね。俺は毎年ニ、三回、500mlで献血している。体内の血液をリフレッシュ(要検証)できるし、絶対的善行だからね。今年になって献血前に書く「この一年間危険な性行為していましたか?」「B型肝炎患者ですか?」の用紙が何とipadになっている。進歩。

用紙を書きおわったら次は面談だ。針で指先をぶちと刺してサンプルを取る他に、ナースさんがいろいろ聞いてくる。昔は「この一年間同性間の性行為をなさいましたか?」の質問に対して「無いです。性行為したことすらありません。童貞です」と答えたら「あっそうですか。そこまで教える必要がありません」と返されてめっちゃ恥をかいた。それ以降はyesとnoだけで答えている。

それが終わったらようやくナースさんに導かれてソファに座り、刺されたい方の腕を差し出す。慣れた手付きで縛る、消毒。肘裏に血管が浮かび上がる。原始的恐怖を催する長い針が顕になる。

「それじゃ入れますねーはい息吐いてー」

 すこし緊張になってきた。スゥー、フゥー針はそんなに怖くないが身体に異物が入って来るところはやはり見るに耐え難いものだ。このときはいつも目をそらして深呼吸する。スゥー、フゥー……ウギィ!やっぱいてえ!

「はいではすこし休んでねー」「はい」

チューブを通して俺の熱血が血液袋注がれていく。赤黒い血を見て、ちょっとおぞましい気持ちになりつつも、ちょっと腹が減ってきたりもする。

「手を握って放ったりしたら血流がもっと早くなりますよー」「すみません、もしかして流速遅かったですか?」「うん?どれどれ……いや、むしろ早い方ですよ」「そうですか。ありがとうございます」「ほかに目まいとかありませんか?」「大丈夫です」「はい、もしなんかあったらよんでくださいねー」

俺は血の流速がついつい気になるのだ。その原因は数年前、献血に行った際ナースさんに「流速遅いすっね。水分補充してるんですか?」と聞かれた。

「いや、ちょっとね……」「ダメじゃないすか。早く手を握って放してください、あとで水1L補充することね。ティーとコーヒーじゃだめすよ」「……はい、すみませんでした」

という恥ずかしい経験ができたでござる。どれぐらい恥ずかしいいかというと、夜の営みの際、妻に「ちょっと早すぎない?やる気あんの?」と言われるぐらいは恥ずかしかった。俺に妻ところか性経験すらないので想像力で何とか恥ずかしげた。

恥ずかしげる:恥ずかしがるの可能形。

「ご苦労さまでしたー」ナースは慣れた手つきで針を外し(この時はもう一度ウギィ!した)、包帯を巻いてくれた。「今日一日は重い物を持つことと激しい運動を控えてくださーい。バスの後ろに飲み物とクッキーがあるのでゆっくりしてどうぞー」

「ええ、ありがとうございます」

これで俺の熱血はまた誰かのために役立つ、すごくいい気分だ。献血バスの尾端にある休憩室でコーヒーを淹れ、クッキーを三袋を開封した。大学の時は金がなくて飯も食えない時は献血センターをよく利用したな。勿論代償は血で払った。献血のあとのクッキー、善良の味がするぜ。

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