【終焉剣闘旅】ゴージャス・ナイト・アット・ほり川(2日目夜)
よっしゃー!ドゥドゥンちゃんの初戦勝利を祝って、今晩は豪勢でいくぞ!負けても豪勢でいくけどね、昨晩に予約ずみだし。
やってきたのは世田谷区にある鮨ほり川。74歳の大将が現役で握っている寿司屋だ。noteもやっているので読者の中でも知っている人が多いではないだろうか。ほり川さんの記事を読んで、いつか行ってみたいと思ってたんだ。
18時55分、予約時間より5分早く入店。L字のカウンターとテーブル席が3つ、決して広いではない店内は大将とウェイトレスの二人、と客である私の三人しかいない。客より従業員が多い状況に緊張感を覚える。Googleマップは月曜日の夜はそこそこ混んでいるって言ったけど、やはり参考にならんね。
L字カウンターの下の棒の右端の席に座り、冷えたおしぼりで冷え汗を拭く。お通しが出される。
トマトともずくのサラダ。うん、トマトともずくのサラダね……トマトはともなく、もずくは以前沖縄に行った際に毎食に出るほど頻繁に食わされていたがおいしく感じなかった。その時の私はまた刺身も食べれないほど味覚がせまいガキだった。今となってもずくもおいしく食べらえる、と思いたい。もずくをごまだれとよく絡ませて、口に入れる。うん、うん、食える。美味しいまではいかないが、余裕に食える。ごまだれが偉大。でもやはりトマトは残させていただきます。店のなかでリバースするなんて醜態をさらしたくないんで。
ビールと共にお通しを楽しむなか、大将がたくさんの海鮮がはいった箱をドンと出してくれた。これは壮観すぎる!今日頼んだ税込み11000円のほり川スベシャルコースはおつまみとしてこの中から三種類のネタを選べる。GAI-JINである私が見慣れない物ばかりで大将が丁寧に紹介してくれる。
サヨリのお刺身。身が引き締まって弾力があり、これまで食べた回転寿司やビュッフェのみずっぽいやつとまったくレベルが違う。
タコのお刺身。丸っこくてかわいい。タコは大きいほど味がいいと大将が言った。触腕は柔らかく、吸盤はコリっとしていて二種類を食感を楽しめる。大将がタコは大きいほど味がいいと仰った。
そして鯨肉。軽く炙ってあって脂がすこい。私はこれで初めてクジラを食べる。自分が地球でもっとも進化した動物だからそこ海最大動物の肉が食べられる。自分が最上級捕食者であることを認識させられる。これからが未知な体験だ。クジラさん、あんたにとって不本意だろうが、お肉を有難くいただきます。
.....なんて不思議な肉か。こんなに脂っぽいのに全くくどくなく、噛めば噛むほど脂がの甘みが滲み出る。これまでは良さげなレストランに行って高い肉を食べても期待していたものとの相違で「うん、こんなもんでしょ」って終わるパターンが多かった。しかしこのクジラは私を失望させなかった。ありがとう海の最上級捕食者。大将の話によるとこれはクジラの顎肉で、結構いい値段するらしい。初クジラはこれでハードルがあがちゃうな。
もう美味しくて酒が進む。
ガスコンロがセットされる。海苔たっぷり入れた鍋が炊かれる。
マツタケ&アワビ。これをしゃぶしゃぶで食べる。マツタケもずっと食べてみたかった。国産ではないらしいが高級なキノコであることに変わりはない。大将が沸騰しただしの中で5秒茹でてスッと上げてくださいと言った。5秒だけ?菌類は完全加熱しないで食べると胞子か菌糸が体内で暴れていろいろヤバいって聞いたけど。
大将の言葉を信じて5秒だけ茹でたマツタケです。耐えろ俺の免疫システム。いただきます。
うん、なるほど。
早朝のキャンプ地、結露で湿ったデントを出て、外はまた霧がかかっていて、朦朧とした景色の中で欠伸をし、苔や土のにおいが混じった空気を肺にいっぱいに吸い込むの時の味がする。フレッシュに「野」を味わっている気分だ。正直この味がうまいかどうか、よくわからない。コーヒーみたいに何回口にすると段々よさがわかってくるかな?
だしも旨い、全部いただく。胃が暖まってきた。いよいよ握りが出る。
いきなり大トロ。こいつはやばい。数回咀嚼するだけで身が溶ける。口の中はもう鮪のリゾット状態よ。美味すぎてわらっちまうぜ!大トロは以前は黒門市場で食べたことあるけど(同行の日本人は明らかに物価に明るいでない外国観光客むけに価格を高めに設定していると)こっちのほうがダントツにおいしい。
ウニ。馬糞だったきがする。濃厚だけど雑味がなくとてもよかった。
車エビ。身が締まっていて味が濃い。しっぽまで美味しい。
溢れんばかりのイクラ。パックではなく丸一個の卵嚢をから取ったやつ。いわば筋子ですね。美味すぎる。500gぐらい食べたい。
焼き台から脂が爆ぜる音。香ばしい匂いが漂う。アナゴの登場。身が干した羊毛布団みたいにふっくらとしている。円満です。
これはよく覚えていない。鉄火巻きであってるでしょうか?美味かった。
セロリの芽だった気がする。植物繊維が大事。
最後はジャイアントマスカットの軍艦。マスカットの抵抗ある歯ごたえと控えめの甘さがわさびとシャリに意外とマッチしている。決してネタ枠ではない。
楽しい……楽しいね!最初に感じる緊張感がすっかり消えて、大将が親戚のおじさんのように見えてくる。完全にリラックスして酒を次々と注文。大将もイワシやフルーツなどをサービスしてくれた。ありがてぇありがてぇ。
大将との会話から彼が日本の旬の食材に強い誇りを持っていることがわかる。彼の理念が料理によく表している。元から良い食材に職人が手を加え、料理として昇華させる。「和食は料理の引き算」と料理漫画はよく言うけど、今日は少しわかった気がする。
旬の物は本当にいい。少し高くても食べるべきだ。ごちそうさまでした。
店を出た私は旬の栄養で心が三倍大きくなり、下北沢駅まえで路上演奏ギタリストのケースにコインを入れた。今夜の私は寛容とWABISABIに満ち溢れていた。
(3日目に続く)
【宣】ぜひ一度鮨ほり川をご賞味ください【伝】