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ジ・エンド・オフ・コーン・ウォー①

 コーン・ウォー、それはいつ、どこで、なぜ起きたのか、様々な説が飛び交っている。飲み会の席でタコスとブリトーをめぐる論争が銃撃戦になったとか、食品会社がトルティーヤの出荷先をブリトー店に間違えて、仕事できなかったタコス屋が逆上してブリトー店を襲ったとか(逆にブリトー屋がタコス屋を襲った説もあり)……もはや原因などどうでもよかった。一度起きた戦争が地球温暖化みたいに歯止めが効かず、タコス派、ブリトー派、そしてヴィーガンどもが立ち上げた原コーンはに分かれ、メキシコに留まらず、アメリカ大陸各地で争いが繰り広がれたが、中で一番ホットな戦場他でもなくメキシコシティである。
 
 ドラッグ・ウォーが解決されたこの国はこれから大きく発展し、いつか先進国と比肩することは永遠の夢になった。経済が10年ほど後退し、軍人、警察は自分が支持する派閥の戦士になり、政府は機能しなくなった。

 両派から背信者と見なされたタコベルを筆頭とするタコスとブリトー両方扱うメキシコ料理チェーン店は激しい攻撃を受け、カルフォニアにある本社もが倒産した。

 戦争は狂気を呼び、狂気は更なる戦争を生み出す、悪の循環。誰にも止められない、だれ(No man)にも……

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「きたぞ!ブリトー野郎だっ!」「ぶちかませ!」

 BLAMBLAMBLAM!要塞化されたタコス店からバリケード越しに拳銃をぶっ放す武装タコス店員、その標的は64m向こう先から一直線に突っ込んでくる重モーターサイクルとそれに跨っているズボン一着しか履いてない騎手。銃弾が車体を掠め、ライトが破裂。騎手は弾が当たらないように体を極限に沈み、給油口を開け、左手でZIPPOを擦った。

「おい、おいあいつまさか」「離れろッ!」

 給油口にZIPPOを放ったと同時にバイクを捨て、地面に転がる男は目まいに抗いながら横目でバイクがタコス店に衝突して爆発炎上する様を一瞥し、腰に帯びている麺棒ホルダーから黒い重金属麺棒をぬいた。

「おーほっほっほっ!」男は満足そうに笑い、胸から腹にかけて彫られた太陽のピラミッドの上空に浮かんているブリトー型モノリスの陰謀的タトゥーを撫で下ろした。

 これは今のメキシコシティでは日常的な風景である。

(続く)



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