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スレイド・オブ・グラディエーター【我が身を苛む邪炎】

俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。

「……」

 新たに登場した剣闘士の紹介を終え、暇を持て余したエンペラー・グレイウォーターは休憩室内で聡明な魔法石版を手にし、市民用魔法創作掲示板「脳図」を閲覧していた。しかしいつも楽しく、時に笑い声を漏らしながら脳図を見ているグレイウォーターは顔をしかめ、石板に穴をあけるほどに目を凝らしめた。

 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた
 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた
 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた
 俺の家にーー

 最近はこればかりだ。誰かの軽率な一言で始まった、聖火安置コンなるイベント、圧倒間に脳図上に嵐を巻き起こす、市民の誰も彼も競い合うように聖火を家に安置された文章を書き始めた。

 それがグレイウォーターを大いに不快を感じさせた。聖火安置コンが盛り上げるほど、彼は心の中で怒火もまたごうごうと燃え上がっている。

 怒りで震えている指先が石板の表面をスワイプする。

 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた
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 俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置、俺家聖置……

「アアアアアアアーーッ!!!」

 グレイウォーターは発作的に絶叫!石板を水平に持ち上げて、膝で蹴り入れた!石板両断!

「アアアアアアアーーッ!!!」

 二つの破片を重ねて、身体を大きく反り、ヘッドバットを叩き込んだ!四分断!

「アアアアアアアーーッ!!!」

 さらに四つの破片を重ねて地面に置き、小ジャンプからの瓦割りパンチ!CRAAASH!聡明な魔法石版が粉々破壊された。

「アアアアアアアーーッ!!!イヤーッ!イヤーッ!

 壁に飾った槍を掴み、発狂演武!下段突きでビール瓶を破壊!エールの甘い匂いが広がった。

「セイッ!」

 横薙ぎを受けた裸のアボロン像が床に転倒して破砕!

「シアーッ!」

  石突を地面に刺し、棒高跳びからの飛び蹴りでフォルトゥーナ像の頭部を飛ばした!当然横倒れ破砕!ファックオフ運命!

「イヤー……ふん」

 突きで盾と剣を持ったマルス像を破壊しかけたグレイウォーターはその直後に冷静に戻った。さすがにマルスにまで無礼を働いたら罰に当たると思た。

「何があったんです!?はっ」

 破壊音を聞いた世話係奴隷のヤーがノックなしで休憩室に入り、中の狼藉と槍を持ったグレイウォーターを見て、息を呑んだ。

「ヤァアアアアくぅぅぅんん!!!」

「ひぃぃぃ!?」

 目が再び狂乱に戻った剣闘王が槍を構えなおし、ヤーに飛びかかる!腰を抜けて尻餅したヤー。白い槍先が彼女の顔の前、あと5㎝で刺さったところで止めた。

「答えよう!ヤー!なぜあの軽率胡乱コンが我の金を出す剣闘文学トーナメントより盛り上がっている?!」

「知名度の問題です!」恐慌の中で、ヤーは言葉を濾過する余裕もなく、素直に見解を吐き出した。「初めて聖火安置を書いた望月さんはミューズの寵愛を受けたかのように次々とバズるネタを量産する存在で、そのフォロワーが四百人にも及ぶ。そしてネタを広めたドントさん、去年の逆噴射小説大賞から頭角を現し、最終選考まで生き残った強者です。王との実力差は一目瞭然でアッ」

 表情が凍り付いたように固くなったグレイウォーターを見たヤーは口を噤んだ。

(まずい、馬鹿正直に考えたこと喋ってしまった!)

 グレイウォーターの腕の筋肉に緊張が走る。ヤーは目を閉じた。瞼裏の暗黒に今朝食べた干したナツメヤシを挟んだパンが浮かび上がった。

「すまなかったな、ヤー。面をあげよう」「えっ」

 自分が処刑されると思っていたヤーは訝しんで、目を開いた。グレイウォーターは彼女の上腕を引き上げて立たせてやった。

「おまえの真摯な言葉が私を気付かせた。本当の滅すべき物がいずれかを」

 王は何かを悟ったように穏やかな口調で言い、槍を持ったまま休憩室を後にした。

🔥
🔥 🔥

 夜のコロシアム、てっぺんの聖火台に燃え盛りの炎が辺りを仄かに照らし、中央に立っているグレイウォーターの背後に長い影と作った。

 見栄えのため彼が自ら設置した、大きな火鉢のような代物。今となって見ると憎くてたまらない。槍を握った右手に握力が漲って白くなっている。

 やることが単純だ。火鉢の底に槍をねじ込み、テコの原理で器を覆してオイルをこぼさせる。聖火が燃料を失い死に絶えていく様を見届ける。このイベントに対して何の建設的利益もない、だたの気晴らし。しかしグレイウォーターはこのとこによって自分の心が安らげると信じている。

 右手を肩の高さに、槍投げの構え。腰を落とし、スプリントの準備。男は息を吸う。

「スゥー……パァァティアアアーーン!」

 シャウトととに地面を蹴り、グレイウォーターは走り出した!ペルシア神王に特攻を仕掛けるレオニダスのように!一躍で2.5メートルの壁を飛び越え、観客席に着地、再び走る!一歩で四つの階段を踏み越える!

「ぜぇ……!ぜぇ……!」

 肺と心臓がもはや破裂寸前!やっと聖火台が目の前に現れた。グレイウォーターは脚力を振り絞って跳躍!火鉢と台座の間に狙いさだめ、肩と背中に筋肉が大蛇のごとく蠢く!この一投にすべてを賭ける!

 しかし槍を投げるその直前、横から何かが放たれたバリスタの矢みたいに飛んできた。

「イヤーッ!」「グワーッ!?」人影が放ったジャンプパンチはグレイウォーターを撃墜!グレイウォーターは階段に落ちた。一回バウンド、二回バウンドして、さらに10メートルぐらい転がってやっと止まった。落下ダメージで満身創痍のグレイウォーターは痛みと目まいに抗いながら、近づいてくる人影がを見た。聖火の光を背にしるため、シルエットがはっきり分かる。切り裂き団のフォースキャプテン、キャロェンである。

「フォースキャプテン、なぜ……?私の邪魔を」

 苦しげに言葉を絞り出すグレイウォーターを、狩猟女神ディアーナを模した真鍮仮面を被った女は傍に立ち、見下ろした。

「申し訳ありません。不届き者が聖火台にちょっかい出すと思いまして決断的に阻止にかかったが、まさかエンペラー・グレイウォーターご本人とは。ですが何ことがあっても催事の進行と安全を守護せよとご自身が仰ったゆえ、あしからず」

 仮面の覗き穴の奥に、キャロェンの青い目が怪しく光った。その光に、グレイウォーターは畏れた。目の前にいるのは人間の女の皮を被った怪物、ニンジャだ。ニンジャは紀元前から存在している。当然ローマにもニンジャの影がいた。ローマの開国神祖ロムルスはニンジャだったという説もある。

「さあ、お休みになりましょうか」

 キャロェンが伸ばした掌はグレイウォーターの顔を覆った。

💀

 これはなにものでもない。ただのお気持ちnoteだ。あしからず。それとは別に。

 もうすぐ〆切ですよ。軽率に書いて、軽率に投稿してください。お願いしますよ。

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