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Encounter with G.P.F

 眩しいな。

 手術台に寝かせた俺は蛍光灯を見つめて、思った。冷房めちゃ効いてるから毛布をかけていても寒い。

「じっとしててくださいね。もうすぐできるから」

 横に医者が左手の怪我を縫ってくれている。麻酔で痛みが感じないが、フック状の針が何度も自分の肉を出入りのは見るに堪えない。

 少し前に、俺はカミソリで左手首を切ったするととぼとぼ湧き出る血液を見た俺は正気に戻り、慌てて左手を輪ゴムで縛り付けて救急車を呼び、そのままERに運ばれて、今に至った。

「Ok、縫合完了。傷口がきれいだから傷痕は目立たないと思いますよ。失血はそれほど酷くないけど念の為点滴しておきますね」

「ありがとうございます……」

「しかし自分を切るとはね、何があったのかな?あっ嫌だったら教えなくてもいいですよ」

「別に、ちょっと飲み過ぎて気が変になっただけすよ」

 俺は無事の左手でポケットからスマホを取り出し、気ごちなく操作してnoteアプリを起動した。せめて誰かにピックアップされたらいいのよな……

「あっ、それって」医者が包帯を巻くてを止めて、俺のスマホ画面を覗き込んだ。「貴方もnote使ってるの?」

「えっ、はい、そうなんすけど」「マジ!?すげえ!私以外の人初めて見たよ!」

 医者が興奮に染まれた口調でそう言い、自分のスマホを俺に見せた。

「私もnote使ってるよ。てかやってるんだ、逆噴射プラクティスとか」

 待て、いま逆噴射プラクティスと言った?

「先生、早くしてください、次の急診患者が待っいてます」「おっと、そうだった。すまない」

 と貫禄のあるナースに諫められた医者は素早く俺に点滴を付けた。

「じゃあ外でゆっくり休んでくださいね。あとで見に行くんで」

「あっはい」

 俺が乗っているホイール付きベッドが広い病室に運ばれ、駐車の要領でベッドとベッドの間に差し込まれた。

「点滴が終わるまでしばらくここで休んでください」ナースが事務的に言いながら、クリップボードで何か書いた。

「はい、ありがとうございます」「いいえ」

 ナースはクリップボードをベッドに付けているたボーチに入れ、歩き去った。包帯に巻かれた左手は未だに麻酔が効いて、動かたびに痺れる感じが不思議で、ちょっと面白い。緊張が解かれたか、突然眠くなってきた。二日酔い上に気が落ち込でいたとは言え、馬鹿なことやってしまったものよ。傷のことはどう説明しても部長の面談が避けられないだろ。両親には……秘密にしておこう。駆けつけてきたらたまったもんじゃない。Lineで課長にいまの状況を報告すると、すぐに「よかった」とバタ子のスタンプが返ってきた。暇かよ。

 俺は携帯を枕の横に置いて、周りを見った。寝かされているのは俺だけではない。頭に包帯を巻かれたパンク姿の青年とその友人らしき者、酸素マスク付けて寝ている老婆、石膏キプスで足を固定された強面のおっさん(睨まれたのですぐ目を逸らした)。年齢、性別が違えど、同じく傷つけれられ、ここに来たわけだ。そう考えた俺は……特に何も感慨もない。苦痛を抱えても、それが他人と分かち合える物ではないし、分かち合ってはいけないのだ。俺は目を閉じ、麻酔がまた効いているうちに寝ることにした。

「さい……おきなさい……」

 誰かが俺の体を揺らしている。なんだよ、もうちょっと夢の中でコロナ飲めたのに……飲めっ。

「おきまさい!」「ふぁ……?だ、だれ!?」

 目を開けると、メガネ男の顔が近くに迫っている。これはびびる。夢のコロナは泡となって散っていった。

「起きたのね。どこが具合が悪い?」「あっ、いえ、特には」

 この声はさっき手術してくれた医者か。あの時はマスクに手術帽を被っていたため顔がわからなかったが、意外と若い、30代前半と言ったところか。

「ちょっと失礼するね」医者がフラッシュライトで俺の目を照らした。それから血圧と血糖値を測ってくれた。

「おめでとう、点滴を外すともう退院できますよ。はいこれ、請求書です。これを持ってカウンターで支払いしてください」

「はぁ、ありがとうございます……」

 請求書に書いた金額は予想以上に高かった。特に救急車の費用が。本当に馬鹿なことやったもんだ。

「帰ったら水と栄養補充してください。鉄分多めに……それでさぁ」医者がイスを取り、隣に座った。「なぜ自分を切ったか、マジ知りたいけど、こっそり教えてくれるかな?」

「いや、それはちょっと……」いるよな、同じアプリ使ってるから勝手に仲間だと認定する人。

「ははーん、そうか。ではこれはどうだい?」

 医者は持っていた水筒の中身を紙カップに注ぎ、俺に差し出した。なんに真似だ?この淡い琥珀色の液体……泡が立って、ひんやりとしている……この香りは……

CORONAだ。

 こいつ、わかってやがるっ!俺はいま何が一番必要なのかを!両手でカップを受け取り、コロナを一気に飲み干した。うまい!舌にほろ苦いホップの味を残し、食道を通し、胃に注いだメキシコ成分が胃液と融合し、分解され、血管を伝って全細胞が喜んでいる!

「アァ……」俺はやや恍惚に溜息して、医者がにこにこ笑ってこっちを見ているのを気づくと、恥ずかしさを紛らわすため頭を掻いた。「で、どこから話せばいいか……」

 俺はここまで経緯を全て話した。

「うけるゥ〜!それだけの事で被害したのかよ!?」

「ちょっ、声が大きいすよ!」

「アーごめんごめん、でもわからなくもないぜ。私も医大の頃、部活で……」

 彼のアカウント名はステディハンド、本職は外科医。普段は医療に関するエッセイ書いてるが、逆噴射小説大賞を知って、数本の逆噴射プラクティスを書いたとのことだった。俺はこの後、たまに彼と飲んだり食事したりするようになったのは、別の話だ。

(終わり)

≪Congraturations ! you've got a GYAKUFUNSHA PRACTICE FRIEND ! ≫

(作中人物の行為を真似したないでください)

(医療に関する内容はすべて作者個人の入院経験とドラマと想像によるものです。現実とかけ離れた可能性があります)

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