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温泉、サウナ、キョン肉

日本旅行に行く際はよくドーミーインを利用する。熱気浴こそ入ったりするが、水風呂はスルーしていた。入る勇気がなかったのだ。ファッキンコールドだもん。指先を入れるだけで生命の危機を感じる。ゆでたてですぐ冷やすのはざるそばだけでいい。

しかし、サウナの楽しみをnoteで発信するライオンマスク氏の文章に感銘を受けて、俺は本気でサウナに挑むと決心がついた。

雨が降る中、バイクで山道を駆けて一時間、温泉街の烏来に到着。仕事で何度も来ていたけど、温泉目的でプライベートで来るのはこれが初めてだ。

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今回お邪魔になる名月温泉。露店式の大浴場、サウナ、スチームバス、水風呂が全部備えて入浴料はたったの390元で実際安い。

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エレベーターに乗って五階のサービスカウンターに上がる。チケットを購入して、階段を降りて二階の男湯へ。

衣類をロッカーに詰めて一糸まとわぬ姿に。客がそこそこ入っているが見る限りビール腹のおっさんや皮膚が油揚げのようにシワついたじいさんや腕にタトゥーを入れているけど胴体がこけしめいて凹凸がない貧相な若者ばかり。俺の鍛え上げたクリス・ヘムズワースボディが場を制圧する。

シャワーを終えて、まずは温泉に浸る。アーイイ、2年ぶりの温泉だ。外を仰ぐと霧雨に包まれた山が見える。読者にビューをシェアできないのは本当に残念だ。

身体が十分に温まったところで、蒸し焼きと行こうかね。まずはスチームバスへ……熱さ以前に退屈の方がよほど辛い。話し相手がいないし、スマホで時間をつぶすわけにもいかない。どれぐらい蒸気を受ければいいんだ?俺に道を示してくれよよサウナマスター……

とか考えているうちに心拍が早まって、息が少し苦しくなってきた。たぶんこれでOKだろう。スチームバスを出て水風呂へ。指先で水面を触る。Oh my goodness, it's fucking cold。えい!これを克服するために来たんじゃないか!大丈夫だ生前契約はサインしてある。なにも恐れることはない。行くぜ……行くぜ行くぜぇー!

右足!左足!ファッキンコールド!歯を食いしばって、ゆっくり座っていく。胸まで浸かる。ファッキンコールド!3秒、5秒、10秒経過!耐えた……俺は耐えたぞ!

アルコール摂取と似た心地のいいめまいがよぎる。あれか?これが「ととのい」だというのか?水風呂に入って1分が立つがあまり苦を感じない。もしかして?もしかしてすると?入門したっていうの?にしてもスチームで蒸されて数分でこれだ。熱気を当ててさらに炙りあげたら、もっとすごいことになるのでは?

楽しくなってきたぞ。筋トレで己の限界を探るときと似ている。好奇心が俺を駆り立てる。でもまず外気浴。チェアに体を預けてビューを楽しむ。先より雨の勢いが増し、山がより一層朦朧にになって神秘的に見える。そういえばヘルメットをバイクのフックにかけたままだった。これは中が濡れたな。

いよいよ熱気風呂に入る。アウチ、ヒノキが熱くてケツが焼けそうだ。退屈と忍耐の時間が始まる。とりあえず五分間座ろう。こういう時はもしもう一人が入ってくれれば我慢比べが成立して、闘志が燃えてちょっと長くいられるかもしれない。今何分?3分ぐらい?時計がないからわからない。外の打たせ湯の音が終わったら外に出よう。いや、皮膚が灼熱してきた。今出よう。

水風呂にIN。一気に……肩までッ!くおお……さっきより強いめまいが襲い掛かる!そしてふいに、体と水の境界線が消えたと感じた。とても落ち着いて、安らぐ……言うならば、休日の午後になにもやる気がわかず、毛布にくるまって、ストレートのウイスキーを啜りながらサウスパークを観る、そんな気分だ。冷たいはずなのに暖かい。気持ちよさに自ずと口角が上がる。これはととのってるかどうかわからんが、Feel so goodだけが事実。そして至福の時が過ぎ去り、錯覚ではなく本当の寒冷が手と足の指先から登ってきて上がり時を知らせてくれた。

いやぁ、すごかった。サウナにハマる人がたくさんいるわけだ。新しい世界に触れて、新しい嗜好ができた。きっかけをもたらしてくれたライオンマスク氏、設備をそろってくれた業者、そして温泉を湧いてくれる地球に感謝。

キョン肉

そのあとはもう一回炙って冷やして、少し疲れた。疲労を取るために温泉に入ったのに逆に疲れるのなんで?サウナはで肉体に負担をかける行為だから?そいえば昼食もまただった。名月温泉を出ると飲食店が林立する烏来老街が目の前にあるので食事に困ることはない。今日は景気づけにジビエを食らうぞ。

「あいらっしゃー!おっ、イケメンさんだネェ!お一人?」

キョンの頭で作ったアクセサリーを頭に被っている快活なおっちゃんが店先で呼び込みしている。泰雅八莱美食店のオーナーだ。この間のキョン剝製の写真もここで撮った。

キョンやムササビを手ごろな価格で提供する店。前から気になっていた。

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醬爆キョン肉 250元

初キョン肉。もっと獣々しく血の味や臭みがすると思ったが、そんなことなかった。肉自体は脂が少なく、弾力のある豚ロースみたいな歯ごたえ。筋の部分はやや硬くて噛むに時間がかかって何となく牛肉っぽい。美味いけど、驚くほど美味いわけでもない、安定した味。まあ醬爆で食材本来の味を消し飛んだ可能性もあるけど。普通の家畜肉をジビエに偽ってアホな観光客に食わせる案件も結構あるそうで、これが本当にキョン肉かどうかわからんしな!

キノコと馬告のスープ 100元

自分が思ったより腹をすかしていたようで早くも完食。とても有意味な休日だった。

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