【逆噴射プラクティス】斧闘士≪アックス・バトラー≫

やってしまった。

俺としたことか、伐採に集中するあまりゾーンに入ってトロールの接近に気づかなかった。

トロールは瞬殺した。しかし咄嗟のことで斧圧調整にミスしてしまい、奴の体が爆散し、その反動で斧が手から離れて川に落ちた。

斧を回収すべく俺は川へ走った。そして川の中から女がひとり現れた。

白いドレスを着た金髪の美女だ。凍える冬の川水に浸っているのに身震いもせず、濡れた薄地ドレスは豊満な身体に引っ付いて、白い肌とほか色々が透けて見える。

「正直者の樵夫よ、貴方の苦労ずっと見ていました。斧を落として大変でしたね」

女は目を閉じたまま微笑んで、両手に持っている金と銀の斧を持ち上げた。

「貴方の斧は残念ですがもう見つかりそうにありません。代りにこちらの羽根のように軽く千回切っても切れ味が落ちないミスリルの斧と、刃から五千度の熱を発しすべてを焼き切るオリハルコンの斧を差し上げましょう」

「そのなまくらを下げるんだな、ご婦人」

俺は腰の左右に差しいるトマホーク手を付けた。サブウェポンだ。

「俺の斧は氷結龍が支配する万年凍土から採った寒砂鉄を、炎の精の腹を活かしたまま裂いてその燃え盛るはらわたで溶かして鍛造し、さらに修道女の処女18人を性的絶頂を迎える瞬間に頭を割り、聖なる穢れ血を吸わせて呪力を高めた。来年の《斧闘》に備えて、大事に拵えてきた道具だ。愛着もある。それにお前さん、セクシーな格好に目が奪われがちだけど、よく見るといい体しているじゃないか?」
「……」
「僧帽筋や上腕三頭筋の盛り上がりがさ、お前さん、斧使いだろ?姑息な手を使ってまで俺の斧が欲しいか?自信付くね」
「くっ、くくく……本当に正直……おバカだこと」

女は笑い、目を開いた。金と銀色の目は妖しい光を放った。

「正直に我が提案を受ければいいもの……ならば惨たらしく刻んでくれよう!」

女は両手の斧を構えた。俺はその眉間にめがけて左手のトマホークを投げた。

(続く)


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