馬人間、ウマン(逆噴射プラクティス)
ウマンは馬人間である。
馬人間とはいえ半人半馬のケンタウロスでもなければ耳と尻尾が生えて走りが得意な美少女でもない。頭蓋骨が縦長く、両目が草食動物のように左右遠く分かれ、さらに人中もとても長く、馬じみた容貌以外は普通の人間と大差はない。あとマンなのでオスである。
ウマンは何処から来たのか誰も知らない。政府の禁忌の人体実験による改造人間とか、禁忌の異種交配から産み落とされたたミュータントとか、禁忌の黒魔術で召喚された異界の魔物とか、単なるブサイクとか諸説あるが、どれも憶測でしかない。ウマン本人は身の上を話したがらない。
ウマンとてもユニークな存在、しかしその特別性ゆえに彼を悩まされている。
「えいっ」
「ぶわっ」
長い顔面にスーパーマン・パンチ(飛び右ストレート)を受けて、ノックダウンされたウマンに不良二人が囲んで暴行を加える。
「オラァ!醜悪物陳列罪で実刑実行だあ!」
「顔がきもいんだよっ!」
雨のように降り注ぐ靴底。ウマンは体を丸めて凌いだ。往来に人がたくさんいるが、咎める人はいない。
「ふぅ、いい発散になった」
「明日もよろしく頼むぜ、ウマン」
満足して去っていく不良、その背後にウマンは立ち上がった。
「フン」
彼は体がばんえい馬のようにタフだが、飼い慣らされた家畜のように気が弱い。その性格と外見に相まってよくリンチに遭う。
(僕は何をしたというのだ?どうして皆いじわるするんだ?)
殴られることに慣れているが、殴られて嬉しいわけがない。ウマンは悔しい思いを抱いて帰路についた。
翌日、同じ場所。
「えいっ」
「むんっ」
「うぎゃああああ!?」
不良は開放性骨折した右腕を抱えて、涙目ながらのたうち回る!他ならぬウマンの仕業だ。
「あわわっ」
仲間がやられた様を見てもう一人の不良が青ざめた。ウマンはかつてない威圧感を放ちながら彼に詰めた。
極度ストレスの中、ついに覚醒した。ウマンの中に眠る第二の人格、武術の達人《武マン》。
(続く)
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