【剣闘日記】8月17日、激動の日
8/17、日本でアイカツの大きいイベントがあるらしいがKAI-GAIに住んでいるおれには無縁の話だ。目の前の戦いに集中すると決めたおれは再び女トロール亭に訪れた。今日はレッスンイベントの日だ。
早めに店に来て選手登録を済ませ、近くのコンビニでしばらく時間を潰して2:40頃に再入店、レッスンの日によく見かけるブルーフードの少年をその父親がいた。相変わらず凄いプレイを見せてくれている。しかし少年、真夏でフード付きジャケットとは熱くないのか。画面を見てみると既にアイカツフレンズVol.2のカードでコーデを作っている。10枚入りのカードセットを買ったのか、流石ガチ勢。そいえば今日はダブったカードを交換目的で幾つ持ってきた。レッスンまで時間があるしここで交渉を試みるか。
「よお、第二弾やっと出たか?第一弾のカードはもう全部集めたのか?」
「うん、まあね」少年は頷いて見せた。そうか、全部集まったか。じゃあ交換しようがないな。
「すごいじゃない。おじさんはこんなにカードをダブっちゃってさ……そこの君、カードを交換しないか?」
さり気なく隣に居る少年に話しかけた。返答は頭を左右に振るだけ。そうか……初めての剣闘交渉は苦い思いで終わった。こんな時は剣闘だ、剣闘より現実を忘れさせることはない。
「おじさんの番だよ」「ドーモ」
一回やるなら三枚コイン。ワーミンアップかてらにMove on nowの最高難易度を選んだ。使用するカードはパープルリンクとスパイシーアゲハの組み合わせ、蝶繋がりで相性がいい。
「一番選手のアクズメさぁん、アクズメさんがいますかー?」
『一緒に遊ぶアイドルを選んでね!』のところでフード少年の父親に名前が呼ばれた。もうレッスン開始か。
「こめん。今プレイ中なんで二番の人に回して!」
ここで一つ説明を入れよう。女トロール亭にはアイカツ筐体が二体あり、イベントをやる際は一台だけで行う。二番目らしいおばさんが隣の台に座った。ほほう、ダイアモンドカード揃っているか、羨ましいものだ。さてどれほどの剣闘士なのか横目でお手並み拝見と行こうではないか。
『アピール失敗……!』
嘘だろ?
『アピール失敗……!』
嘘だろ!?スペシャルアピールの中で強力の割にパーフェクト判定が極めて簡単なフレンズマーチを二回も失敗した!?おばさんも気まずく苦笑している。しかし流石はダイアモンドドレス、二回アピール失敗にもかかわらずFEVERが出せた。一枚持てばゲームバランスが崩れる禁断なアーマーだわ。ちなみにおれは二枚持っているが滅多に使わない。
しめやかに退場したおばさん、つぎは俺の番だ。今日のステージは個×個、属性はPOPだが、二日前に剣闘アニメ19話で「ステージに惑わされるな、持ち味を生かせ」のインストラクションを受けたためエゴが強化されている。今日はシュガーメロディを主にCUTE属性のコーデで行く。
ーローマー
剣闘シザー(scissor)、最後に「S」が付いてないのでハサミではない。歴史上様々な武器の中でもとても印象的な外見を持つ、主に剣闘において使われた武器。弦月のような刃が鎌のように相手を切り裂き、あるいは斧のような広い曲刃で突いたりする。柄と一体化した前腕を全面に覆う筒状のガントレットで防御性の備えている。重心が後ろに置かれることで振りが速く、殺傷力が高く、防御もできる「僕が考えた最強の武器」の出来上がりだ。もっと詳しく知りたければこちらに参照してください。
「ヘイッ!フッ!ヒャァーッ!!」「ヌゥー!」
繰り出される三連シザー斬撃を、ドゥームが強靭なコアマッスルで腰をひねってギリギリ回避。ここでマイカの表意をついた踏込からの左手盾打撃!
「グワーッ!」右顔が殴りぬかれたドゥームは三歩飛び下がり、踏み止まった。口をもごもご動かし、「ペッ」と血液が混じった唾を飛ばす。
「蝶々のような軽いパンチだな。『ブルタルフライ』の異名は以外に大したことないじゃないの?」
「そちらこそ、ストラウベリー様の一番弟子と聞いたが、とんだ期待はずれだわ」
油断なく武器を構えながら舌剣の応酬。これもまた剣闘の一部である。
「言ってくられらぁ。こっちはまた本調子じゃねえよ」
と言ったドゥームは剣と盾を手放した。マイカは目を細めた。相手は奇策を走るタイプだと聞いていたからだ。
「なんの真似だ?手ぶらで私に敵うとでも?」
「おうよ。言っておくが、お前は何も分からずに負ける」
余裕をぶってホッピングしながら不敵に言い放つドゥーム。しかし安直な挑発に乗るマイカではない。
「なめるのはハチミツだけにしとくんだな。何も知らずに心臓に穴をあけるのは貴様だ。かかってこい」
「ああ、じゃあいくぜェェェー!!」
身を沈めて全力ダッシュするドゥーム!
(バカめ、一直線に突っ込んでくるとは)筒城のガントレットに隠されているシザーのグリップを握りしめるマイカ。タイミング計らって、必殺の一撃を繰り出す!
これからはドゥームの読みが一枚上手でシザー突きをスライディング回避、そして腕挫十字固に似た技でマイカの右腕を極めて無様にギブさせたつもりだが、「二次創作において過度なメアリー・スーは自殺行為に等しい。家が原作ファンに焼かれる」の教えを思い出したのでこれ以降の内容は割愛。とにかく勝ちましたということで。
ー現実ー
「はい。証明書とカードね」「どうも、ありがとうございます」
フード少年の親父から標品を受け取る。もはやここに用がないおれは早々店を出た。ちなみに親父はこの店の店員ではなくお手伝いに熱心なだけ。
今日の戦いはこれで終わりだ。あとは大発表とやらを待つだけだ。ワクワクだよな、ローマ編だったらいいよな……
同日、夜
「ワッダ……オンパレード?新シリーズだと?エンジニアのお姉ちゃんからもらったアイカツパスで時空を越える?」
情報の洪水がの酒で弱ったニューロンを打つ。
『アイカツスシテムには無限の可能性が潜めている』
昨日の【幻の剣闘】でココに言わせたセリフが脳をよぎった。ローマではないとはいえ、タイムスリップあるいディメンションシフトの部分が当てた。これは剣闘シンクロニティとしか言う他ない。
情報を元に思考を整理し、twitterアプリを起動し、素直自分の気持ちをぶちまけた。
そしておれのアイカツメンター、ウメダのトゥーフーからメッセージが届いた。
オンパレートは多次元展開!つまりAIKATSU:INTO THE IDOL VERSEなのだ!
アイカツに潜めた無限な可能性!酒で緩めた精神がモンスターエナジーを点滴注入したかのように覚めた。今のおれ胸は正義の剣闘パワーに満ちあふれている。
オンパレートは10月から放送開始。データカードダス筐体もバージョンアップするだろう。スターズを飛ばして今年からフレンズ導入したおれの国ではオンパレートをプレイできるかどうかまたわかってない。でも信じていれば、たとえ現実残酷であっても、夢は潰えることない。斬り倒され、血でアリーナの砂が潤うまで、剣闘士に休息がない。
あっ、なんかポエットなこと言ったね。ふふっ。
それにしても、お姉ちゃんは一体何者?