【剣闘小説】万聖祭り、IRONの死闘 4
(ヤバ)
死の予感を察知した弩木は防御を解き、バックステップ回避するが、幽鬼腕力を加わった薙刀のリーチより生じた破壊力が予想以上であった。ダーン!縁をぶち破って、盾の中央まで切り込まれた!グレネードでも防げるほど頑丈な強化樹脂盾が!
「ウオッ!?」
衝撃が左腕を通して、体感を揺さぶった。よろける弩木。「キョッホ!」ライコが薙刀を引き、頭上でスピンしてから腰に構えて踏み込む!突刺!
(突きか!?ならば)
弩木は踵を軸に回転をかけ、横向きになった。ショルダーパッドに覆われていない腹部に刃が通って、浅く切ったが、串刺しは免れた。突刺を予測していた弩木は薙刀の柄を左足でふみつけ、地面に叩きづけた!
「イョッホ!?」
「これを待ってたぜ!」
トリガーを押し、バチチチっと、先端に白い電流は走るショックバトンを、隙を晒したライコの胸に突き刺す!ZTTTTTTT!
「ゲレロロロロローッ!」
痙攣するライコ!ワイルドハントたち身体から冥界の冷気を発しているために体温が常に-196℃であって電流がよく通る!超電導現象だ!
「ウグレレレレレーッ!」
「このまま、くたばりやがれオラァ!」
弩木はバトンをさらに押し付ける!
「ほう、突きを見破ったうえで、柄を踏んで主導権を奪ったか。長物対策のオーソドックスだが、ライコ相手にやってのけたとは、中々の女よ」
腕組姿勢のソーが感服そうに言った。
「……感心している場合じゃないよ!」少年幽鬼が電撃を受け続けるライコが心配になって声を荒げた。「助けに行ってよ!おっさんが加勢したらあんな人間、瞬殺だろ?」
「あぁ?」ソーはだめな奴を見る目で少年を視た。「おぬし、本気で言ってるか?一騎討ちに水を差す、無粋の極みぞ。助けたければ自分で行け」
「くっ……!」
「まあまあ、ソーちゃんはそんなこと言って~」少年をなだめるように、ヘラクレスは両手を彼の肩に添えた。「ただ女同士のいがみ合いが楽しいからもっと見たいだけじゃないの!」
「バレたか!ハーハハハッ!」ソーも豪快に笑う!
(こいつら……自分で楽しむことしか考えてない!)肩に掛かっている要る重量を耐えながら、少年は考えた。(神が元ネタの連中はこういう自己中ばっか!)
「まあ心配するな、少年」上からヘラクレスの顔が近づいて、もみあげと一体化したボリューミーの髭が少年の頬に触れた。(うぇぇぇぇ……)霊体膚が立つ少年!
「オレらほどではないが、ライコは魂の格が高く、強い。見ろ。今だ」
「ウグレルルル……キョウホッホッホーッ!」
震えてる手で柄を掴んで、振り上げる!
「ヌオッ!?」
弩木が跳ねのけられ、転ばぬように5歩下がって、足を踏ん張った。
「フフフ……よき電流マッサージざました」
リラックスした立ち姿のライコは首を回して、ぽきぽき鳴らした。いや、それだけではない。見よう!ライコの霊体に白い電流が走り、髪の毛がヘッジホッグの針みたいに逆立っているではないか!
「おかげ様で、よりぴんぴんでありんす」
「電撃を吸収した?マジかよおい」苦笑い、冷や汗が服が濡れて、背中にひっついてる感触、不快。「こいつは相当やべえ、なァ!」
電池残量0のショックバトンを手放し、盾だけを持って迷宮じみたUFOキャッチャーコーナーへ走った!
「わちきの長物じゃ狭所で発揮できない算段かえ?良き判断ありんす」薙刀を構えなおす、「ならハンデつけて遊んでありんしょう!いざッ、グッドハンティング!」
ライコも走り出す!帯電バフされているためいつもより足が速く、追いつけた!
「うそだろッ!?」
「ハンデもまるで無意味ざますな!キョーホッ!」
薙刀を水平に繰り出す横斬撃を、弩木が前転で回避!CRAAAASH!!横にUFOキャッチャーが破壊され、中からプリキュア缶バッチが噴き上げた!
「クソ!被害がッ!」
「この期におよんでショップ商品の心配とは、従業員の鑑みでありんすな!キョーホッ!」
薙刀を振りかざすからの縦斬撃を、弩木は右へ急カープで回避!CRAAASH!!正面にあるUFOキャッチャーが破壊され、中に一杯入った腹ばい姿勢の煉獄安寿郎ぬいぐるみが飛び散った!
「アーッ!いま一番売り上げのいいやつが!」
「だったら逃げ惑わずにわちきと真剣勝負でありんすね!」
ライコは追いかけを止め、中腰姿勢で力を蓄えた。電光が勢いを増し、薙刀刃が白く光った。その際に放たれた電磁波を受けて、筐体の爪とハサミなどが誤作動し、ハサミがホロガイスト現象めいて開いたり閉めたりする!
(何か仕掛けてくる気だ……!)
大技を予測した弩木はコーナーの隅に逃げ込み、警戒を取った。ライコとの間にUFOキャッチャー4台が挟んでいる。弩木はそれが障害物になってくれることを期待した。今更もう店の損害を気にしていられない。
「キィォォォー……ホァアアアアーッ!!!」
ライコは踏み込み、解き放たれた矢の如く薙刀を突き出した。白い稲妻と化した。経路上にのUFOキャッチャーを次々と破壊!1/18の初音ミクフィギュア四散!山積みのKITKAT溶解!竈門炭治郎フィギュア無惨!暴走機関車の勢いで障害物を突き破りながら弩木へ迫る!
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「なぁソーちゃん。ライコと従業員がよそに行ったからデーダカードダスのところが空いているぞ」
「ああ、そうだなへー君」ソーは一列に並んでいるデーダカードダス筐体を見やった。「今ならやれるな」
「うん」
「ではやるか?」
「やろうぜ!オレがアイカツオンパレードから!」
「アッ!待て!吾が先にやろうと思ったぞ!」
「ちょっ、おっさん!どこいくんだよ!?」
少年幽鬼を無視し、二人は競うようにアイカツオンパレード筐体へ走った。
「へへヘ、一年ぶりだからな、まずはこのコーデで……うん?」
「あっ、えっ、その」
未だにデーダカードダス筐体の陰にうずくまっていた少女がヘラクレスと視線が合った。
「ど、どうも?」少女は気まずそうに言った。
「娘っ子だ」
「娘っ子」
「しかも若い」
ヘラクレスとソーは互いを見、淫靡な笑みを浮かべた
「「娘っ子ッ!」」