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お肉仮面vs.チキン #第三回お肉仮面文芸祭

いやぁ、冬の散歩は汗かかなくて気持ちいいな~

「みぇぇ〜みぇぇ〜」

なんだこの声は……うわっ!

お肉仮面さん!?何してんすかこんなところで!?

「みひん……アクズメさん、どうも。見苦しいところを見せてしまったね」

心なしか肉の仮面はいつもより潤っている。もしかして泣いてたんですか?

「うん。クリスマスにチキンが貧乏くさいだの、もも肉は西洋では犬の餌だの、Xで論争があったんじゃない?それを思い出したらなんか悲しい気持ちになっちゃって……肉に貴賤はないというのに」

でもこの間お肉仮面さんがSPAM以外ランチョンミートじゃないって言いましたよね?

「それとこれとは話の次元が別です。混同しちゃいけないよ」

そうですか。

「はぁ、泣いてたらカロリーを消耗してお腹が空きました。という訳でアクズメさん、なんか作ってください。チキンを所望します」

わかりました。

🐥

最近は冷えるので、みなみの国定番の進補料理である麻油鶏マーヨージーを作りますね。進補とは滋養のある食べ物で体力を付かせることを意味します。

「聞いた感じ薬膳の一種かね?」

分類上はなってますけど、麻油鶏は比較的に素材が少なく簡単に作れます。

まずは鍋に胡麻油を入れて、スライスした生姜を弱火で炒めます。今回は黒胡麻油を使います。

「麻油鶏の麻は胡麻の麻だったか。てっきり麻辣系かと思ったよ」

それはそれで美味しそうですね。生姜に火が通ったら鶏肉を入れます。今回はこの鶏肉でやっていきます。

「わっ、烏骨鶏じゃん!久しぶりに見たよ」

はい、烏骨鶏です。その名の通り皮、肉、骨までいろ黒ですが羽毛が白い個体が多く、そしてふわふわしていて結構かわいいです。

皮はメタリックな青色を帯びている

「そうそう、以前烏骨鶏の写真を検索したことあるけど意外の可愛さにびっくりしたよ。そういえば中華一番に烏骨鶏回があったよね?」

確かにありましたね。

「鶏肉料理専門店が集まる町で、黒羽楼という店がありました。その店は自家飼育の黒い鶏が特徴だが、黒い鶏肉は気持ち悪がられ、店主も黒い鳥の飼育で苦心した末に亡くなってしまったため黒い鳥は『不幸をもたらす凶鳥』として忌み嫌われて、黒羽楼と店主の妹が村ハチされてしまう。そこで通りかかったマオくんが一目で黒い鶏が霊鳥・烏骨鶏であると見抜いて、黒羽楼の汚名を返上するために奮闘する話だったけど、まずあの回に出た烏骨鶏はどう見てもインドネシア原産のアヤム・セマニだよね?」

小川先生がリサーチに怠ったとは考えにくいので、おそらく生きている烏骨鶏はかわいくてマイナスのイメージと結びつきにくいから、あえてシックな外見のアヤム・セマニの皮を被せたんじゃないですかね?まあ中華一番は料理漫画を被ったファンタジーなんで小川先生が「俺の宇宙では烏骨鶏はこれだよ!」って言ったら終わりなんですけど。

「あるいは黒羽楼の元シェフが騙されてアヤム・セマニのひよこを烏骨鶏として買わされたとも考えられる」

もし本当にそうだったら町の料理人のみならずマオくんまでボンコツになっちゃうね。

「でもマオくんが作った鶏の旨みを吸収したご飯は本当に美味そうだったよ。食べてみたいね」

たしかに。あっいけね、料理に集中しないと。

鶏肉を鍋に入れて炒めます。

「肉塊がでかい」

でかいすね。でも鶏肉を骨ごと切断するには技術と道具が必要なので素人の私はでしゃばりません。このままで行きます。

「あいよ」

肉の表面が熟して来たら一旦火を消して、米酒を入れます。レシピ本だと700mlの米酒を2本入れると書いてるけどそこまでガチじゃないので肉を浸れるぐらいの量を入れます。再度火を入れて、アルコールを飛ばします。

「なんで一旦火を消したの?」

どうやらごま油と酒が引火して火事になった事例があるそうです。念のために一応。

「わ、酒のにおいが」

みなみの国は街でこのにおいがしたら冬が来たと実感しますね。

「ここまできて塩を入れていないが大丈夫?」

あ、塩は入れませんよ。その代わりに氷糖を入れます。

「マジか、どんな味になるか想像がつかなくなってきた」

もうすぐわかりますよ。

完成です。召し上がってください。

「いただきます。ごま油と酒のにおいの混じって独特だね。まずは鶏肉からいただこうか……うん、悪くない。塩が全然入ってないのに、生姜の辛味とごま油のコクが鶏肉の旨みを引き立てて淡白でありながら決して虚無ではない。なんかこう、健康的な味だ」

微妙ってところでしょうか?

「次はスープを行ってみよう。ずず……うっ!」

大丈夫ですか?

「酒だこれ!酒が入ったチキンスープではない、チキンの味がする酒だこれ!うわぁ、酔ってしまう……!」

アルコール飛ばし足りなかったかな?私も味見してみよう。あっ。

「どうだった?」

ごめんお肉仮面さん、これは失敗かもしれないわ。

「マジか~」

はい、以前作ったやつと比べて味が薄いしアルコールが大分残ってます。急遽に作ったから煮込み時間が足りなかったかと。

「まあプロじゃないし、こんなもんでしょう。頑張って完食しよう。でないと烏骨鶏が可哀そう」

ですね。

🐔

「ふぅ、食べた。ごちそうさま。おっと、もうこんな時間か」

もうすぐ日付が変わります。てことはもう行くんですね。

「ああ、そろそろ帰らないと。電楽が待っている。この一ヶ月に料理をご馳走してくれてありがとう。楽しかったよ」

こちらこそたくさんのインスピレーションを頂いてありがとうございました。もし来年またお肉仮面文芸祭やるならまた参加させていただきます。

「おう。今度はもっと上手く作ってくれよな?」

はは、精進しますよ。

「ではいつかまた会おう!バイバイ!」

~TO THE NEXT MEAT~




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