【剣闘日記】喚くと神が降りてくる
前回
ーカードダス時空ー
パァン!地下訓練場のドアが勢いよく開かれ、両手ピースサインしているDOOMがその下に立っていた。
「KILL HARD」
「おう、DOOMじゃないかフーッ!二日ぶりだなフーッ!結局雑誌に付けたカードはフーッ!使えたか?」
総重300キロのプレートを掛けたシャフトでデッドリフトしながら、あやは尋ねた。
「ヴィクトリアム。我の完全勝利であった」
DOOMはピースサインのまま答えた。このポースが気に入ったらしい。
「これでフレンズ実装以来外の奴がずっと持っていた疑問も解決され、とても意味のある剣闘となった。そしてなんと」
ポケットを探り、カードを二枚取り出す。
「六回剣闘でPRガード二枚ゲット!しかもうちの一枚はダイアモンドカードだ!やったぜ!」
「フーッ!めでたいね。でもフーッ!ガチのプレイヤーはすでに全部揃ってるってフーッ!知ってるよな」
「アーヘイヘイ。大変励まし上手なトレーナーなこって」
「それで、外の奴が持っていた疑問とは何だったんだ?」
「強引に話題を変えてくれた!まあいいよ話したいし。前にアイカツカードのリージョン制限について話したじゃん?」
「ああ、日本のカードは別の国の筐体では使えなかったよな」
「ああ。しかし、フレンズVol.1のカードが発売される以降、これまでバーコードの下に書いてあるBARCODE REGION 1がなくなった」
「なんと」
「QRコードはないから日本で使えないだろうけど、でも香港或いは中国大陸なら共通しているようだ。いつか会いに行きてえ、海の向こうにいる剣闘士に」
「外の奴は今年こそ深センか香港に行くと言っていたが結局日本しか行ってない。カンファタブルゾーンから抜け出せない臆病者よ」
「そう言うなって。香港のホテルまで決めて航空券を予約手前まで来たけどスパルタカスの乱が……」
「敏感な話題にウカツ口を出さないのが吉だぞ」
「おっとそうだった。とにまあ忙しくオンパレード四話またなんでGoogle Playで観るわ。最新話一週間無料」
「なあ、ずっと思ってたんだが、千石らきって、外の人間に似ているよな」
「ほう?どうしてそう思う?」
「おっ、あたしも見解に興味あるか?話せば長くなるぜ」
千石らきとプレイヤーの幾つの共通点
彼女がアイカツする目的、それは自分のブランドを持ち、自分でプレミアムドレスをデザインし作り上げること。従来の「憧れのあの人と同じ舞台に立ちたい」「世界一のアイドルになりたい」「二人でダイアモンドフレンズに目指す」「アリーナで神になりローマを転覆する」などと一線を画する。さらに先輩たちステージを見ても真っ先にドレスについてコメントする傾向があるところがまるでプレイヤーの生写しとあたしは強く感じた。
ほら、プレイヤーって実際アイドルではないので過酷なトレーニングを受ける必要はないし、アニメで何度も強調される「観客を楽しませる」とか「気持ちを伝える」とか、どうでもいいことよ。彼らが考えているのは、どれだけPERFECT判定を出せるか、スペシャルアピールを成功させるか、そして一番重要、つまりカード。もちろんPRガードが出たら嬉しいしモチベーションもあがる。もし暗黒メガコーポがオーダーメイドでカードを作ってくれたらもう最高じゃん?
四話になったところで、らきはいまだにスターハーモニーで授業を受けたとか、寮に入ってルームメイトにあった描写は一切なし。「スクールライフ」「友情」「挫折を克服」「成長」を謳歌するアイカツアニメではかなりのイレギュラーだと思う。これから描いていくかもしれないな。
そしてお気づきだろうか?これまでアイカツアニメでは、アイドル達はアイカツする前に、ドアの前で目が闘志でキラキラを輝き、パネルにアイカツパスとカードを設置、ドアが開き中へ飛び込むと、謎の空間が広がりカードをゴースルーしてドレスを装着していく、いわゆる変身シーンがオンパレートになってからはカットされていることを。大部分のプレイヤーもデーダカードダスをやっているときは個の部分をボタンを押してスキップするだろ?
「ふぅー、一気にしゃべってて喉が渇いた。どうよ、あたしの緻密な考察は?」
「うーん、現実の目線で物語を見すぎたではないかな。六十点」
「けっ」
「でもらきはこれから何を成していくのか気になる。確かに実力はあるちゃああるが、このままずっと先輩たちとつるんでいたらクラスメイトへの印象はよくないしなにが契機でBULLYの餌食に……」
「いやそれこそ現実目線だって!アイカツだからもっと夢を見ようぜ!ドリーム!」
「ゆめか……はは」あやは筋肉が纏わりつく大蛇めいた筋肉が浮かび上がっている自分の両腕を見下ろした。「私もかつては夢を持った……」
「ストーップ!ネガティブシンキング!なあ、ベンチやろうな!アタシがアシスタントするから安心して飛ばしていいぞ!」
「……頼もうか」
(おわり)
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