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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン⑥
シャリ、トッ、シャリ、トッ、シャリ、トッ……
厨房の中、センチ美は中華包丁で野菜を切っていた。
『呼ォー、嘯ゥー』
そして炒漢は馬歩姿勢で運功を行い、ヌッべチャーハンで取り入れてしまった湿気を排出している。
シャリ、トッ、シャリ、トッ、シャリ、トッ
『呼ォー、嘯ゥー』
シャリ、トッ、シャリ、トッ、シャリ、トッ
『呼ォー、嘯ゥー』
シャリ、トッ、シャリ、トッ、シャリ、トッ
『呼ォー、嘯ゥー』
シャリ、トッ、シャリ、トッ、シャリ。
忽然、センチ美は手を止めた。
「テツロー、あのさ」『呼ォー、嘯ゥー』「店長の手を破壊したとか、流石にやり過ぎない?」『……ああ』
炒漢は馬歩を解いた。
『チャーハン・レイジに駆けられて、咄嗟に身体が反応してしまった。私がまた炒飯神としては未熟ゆえに……店長に申し訳ないことをしたと自覚している』
(チャーハン・レイジ、また新しい単語が出て来たぞ)センチ美は内心にツッコミながら包丁に張り付いている玉ねぎを指で払った。
『しかし私が炒飯神である限り、まずいチャーハンを提供する事態を見過ごすわけにはいかない。今度もしほかの覇味庵の前に通ったら、またチャーハン・レイジの発作で人を傷つけかねない』
「じゃあ、修行でもすれば?山にこもって、座禅して瞑想でもして、もう怒りに任せられないようにさ」
『いかぬ。こうしている間に、誰かがまずいチャーハンを食わされている。やがて人々がチャーハンに失望したに人々はチャーハンを食べなくなり、チャーハンが作られなくなり、チャーネットの破滅が目に見える』
「いきなりスケールがデカすぎ。そう言ってもピンと来ないよ。チャーネットってテツローしかしらないからさ」
『簡単に言うと、僕が消滅して死ぬ』
「えっ?マジ?」
センチ美の表情が凍った。彼女は実際、テツローが炒漢になって以来の突発的暴力を快く思っていない。彼の友人として、彼が炒漢の力を手放して普通の人にも戻ることを望んたが、まさか彼の死活問題にかかわるだと思わなかった。
『ああ、マジだ。ゆえに根源を叩く』
「こ、こんげん?」
『さっき店長が言った、覇味庵の新社長、祭暮娘々』炒め漢は調理台と床の狭間に隠れて震えているスライムたちを一瞥した。『こいつらをチャーネットにリンクさせ、情報を聞き出す』
「それからは?」
『その時考える』
(とか言って、絶対カチコむ気満々でしょこの人)
「おう、やってるな」700mlビール瓶を手に持ち、店長の厨房に入った。彼はその後どうでもよくなり、店のビールに手を出した。その後ろにトマトンとバイトもついている。
「バイドの兄ちゃんに手伝ってもらうて監視カメラのデータをフォーマットしたんや。これで社会的死ぬ心配はしばらくあらへんで!」
「手際よすぎてちょっと怖いですよこの人……」
「ハハッ!Discoveryの『バレずに失踪する仕方』をよく見とったやからな!ていうかチャーハンにうるさい兄ちゃん、毛染めでもしたかいな?」
トマトンは炒漢の炎めいて揺らぐ橙色の髪を見て言った。先ほどガス不足のコンロから出たみたいな青い髪が運功によって戻の姿に取り戻しつつある。
『ご苦労だった。お詫びと感謝のしるしに、チャーハンを皆に振舞うぞ』
「アー、店の材料な」
店長の愚痴をスルーし、炒漢は店内に一番大きい直径60cmの中華鍋を持ち出して、コンロに乗せた。
『では始めよう。センチ美、スーシェフを頼めるか?』
炒漢の問いに、センチ美はすこし躊躇したあと、エブロンの紐を結び直した。
「……しょうがないな!よろしくね、シェフ!」
『応!』
油を引いて、熱した鍋に、にんにく、玉ねぎを入れる。香りが出ると、刻んだ人参を投入。
「おい待て。ちょっと量が多くない?ニンジンだけだ丸一本あるでは?」
『無論だ。8人分で炒めるのだ』
炒漢は追いオイルしながら店長の質問に答えた。
「8人分のチャーハン同時に!?ありえねえ、できるはずがない!」
『できる。私は炒飯神だ!スーシェフ、卵を』
「はい、いっくよォ!」
混ぜた卵が10個分が入ったボールを傾けて鍋に流し込む。熱した油に触れた途端、卵液がジューと音を立てながら泡立った。
『これからが正念場だ!スーシェフ、ライス!』
「はいよ!ホイホイ、ホイッ!」
センチ美は三回に分けて八人分の白米を鍋に投入した。中華鍋の中は今、八人分の米と具があり、鍋を含めたその総重量はおよそ15㎏上下。最早人間が振ってチャーハンを作れる質量ではない!鍋を持っている炒漢の左腕に力が漲った。
豆知識:世界記録において、数人が馬鹿でかい鍋を囲んで長いショベルみたいの杓で4tのチャーハンを作るという挑戦があったが、その内の150キロが不正処理されたことでギネス認定が不合格になりましたとさ。チャーハン作りのセオリー大きく反したしきっと不味いよそれ。
『呼ォーッ!嘯ゥーッ!ゆくぞ!翔龍!』上腕二頭筋が切れる!瞬発的な半円運動で鍋の中身が慣性に連れられて、鍋の縁に沿って舞い上がった。その勢いが滝を登る昇龍の如く!
「アカン!量が多すぎや!こぼれてしまう!」トマトンが両手を頬に当てた叫んだ。
『そうはさせん!虎掌ッ!』炒漢が右手で杓子を繰り出し、空中で円を描いた。すると空中の米粒は杓子の軌跡を追従するよに鍋に戻していく。そして再び左腕で鍋を振り、米を翻し、杓で戻す。翻し、戻す。
「すげえ……こんな大量なチャーハンを、一気に……!」店長は驚嘆した。彼の目には、鍋と杓をを持った阿修羅が映った。
しかし炒漢の調理技術は筋力で物言わせるだけではない。炒漢の両手に、渾厚の内力が溜まっている。もう一度鍋を振り、米が跳ねた。すかさず炒漢は両手を広がり、馬歩を踏んだ!ターンス!床のタイルがひび割れた!
『忿ッ!刹ァァァァーッ!!!』
咆哮と共に内力が解き放った!8人分の米と具が精密に設定された噴水ショー、或いはドラム式洗濯機に入った衣服みたいに円を描いて、螺旋に捩じりながら循環する。これは炒漢が持つ108の炒飯技の一つーー
炒飯神技
炒 飯 奔 流
(CHAR-STREAM)
「魔術……ウィッチクラストや……いや、そんなやましい物やない。もっと正気(せいき)にみちあふれた、神聖的な……」
「こんな作り方、みたことない……」
トマトン、バイトがそれぞれの感嘆を述べた。そして店長は口を堅く閉じて、炒漢の調理を一瞬でも見逃さないと心を決めて、目を凝らした。炒漢は次の行動に移った。コンロの横、調味料が入ったボウルに杓を伸ばした。塩、醬油、胡椒、味覇を次々とチャーハンの流れに投入。半熟卵と米と調味料が流れの中で混ざり合い、白いだった米が徐々に黄色に変色していく。炒飯奔流の回転が段々遅くなり、直径が縮む、やがて鍋の中でチャーハンのボールが回転するようになった。
『うむ。上出来だ』
炒漢が杓子にチャーハンボールに触れると、気の均衡が崩れて、チャーハンボールが鍋の中に散らばった。炒漢はそれを掬い、皿に「叩ッ」と盛りつけた。半円に整った、蒸気を立てて食欲を唆せる淡黄色のチャーハンを見た炒漢以外の者は唾液腺が疼き、唾が口内で広がる。厨房はいい匂いに満ちた。
叩ッ、叩ッ、叩ッ、叩ッ、叩ッ、叩ッ、叩ッ。炒漢は熟練した手付きで、あっとういう間に8つのさらにチャーハンを盛りつけた。
『炒漢特製、蛋炒飯です。賞味せよ」
炒漢が左手に2つ、右手に3つの皿を持って、皆にチャーハンをすすめた。
炒漢のファンアートを頂きました!
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