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辛い麺メント IN TOKYO② #ppslgr

「ジュクゴマスタァァー!」「写真を撮っていいですか?
!」「うちの息子を撫ででください!」
「すいませぇん!どいてくださーい!」「マスターは写真と祝福の依頼を受け付けませぇん!」

 新橋の駅前広場でジュクゴの奇跡を披露したS・Gのもとに、握手やセルフィーを求める群衆が殺到!俺、R・V、H・Mの三人が彼を囲い、SPのよう人を退かせて地下道を進んでいた。

「S・Gが派手にやったせいでえらい騒ぎになったな!」
「ごめん、皆が靴を濡れずに済むから良かれと思って……」
「いや、動機はとてもいい。でももう少しやり方とかをね?」

 言われて本気で凹んだS・GにR・Vは何とかフォローを入れた。

「あそこの階段を登ればすぐだ!」先頭でリード役のM・Jが叫ぶように言った。

「よし。H・M、ミートウォールを頼めるか!?」
「ガッテン!ヌゥーン!」

 護衛隊形から脱したH・Mは階段で立ち止まり、筋肉を強張らせフロント・ラット・スプレッドのポーズをきめた。決して広くない階段を、屈強のレスラー肉壁が塞いだ!

「なんだこの男は!?」「これじゃ先に進めない!」「マスタァー!」「抱いて!」

「今だァ!」

 その間に俺たち三人は階段を駆け上がり、駅前ビルの一階に出た。階段を登り切ったS・Gは速やかに筆ペンを振り、左掌に「霧裡看花」のジュクゴを刻んだ。

「これで存在感が薄まり、認識されにくくなったはず」
「本当に便利だな。てかさっきので腹がより一層減ったぜ。M・Jィ、店はどこ……よ?」

 ふと、嗅覚神経が香辛料のにおいを感知した。八角、チョウジ、ウイキョウ……汁なし担々麵に不可欠な要素だ。

「A・Kも感じているだろ?辛い麺の高まりを……」

 M・Jが指さした先に、赤い看板に白い字でTAN・PO・POと書いた店があった。

「ここが今回の戦場ヨーッ!」

 行きつけの店に来ているからか、M・Jいつも以上に興奮しているようだ。

🌶️🔥🍜

 店内は二つのカウンターが並んでTT状になっており、俺たちは二つ目のTの下のところに座った。食券は既に渡した。

「A・Kは遥々みなみの国から来たのに激辛食べないのかよ」
「ああ、明日はもう一度コミコン会場に行くんだ。腹を壊すわけにはいかない」
「ほう、じゃあ今回は俺の不戦勝でいいよな?」
「いつの間に勝負の話になった?」
「この間の白玉辣麺でむせた時は勝ち誇ってたじゃん!あっ俺、麺が来るまでに精神を集中するから」

 と言ったM・Jは両手で蓮花指(中指と親指でわっかを作り、他の指はピンと伸ばす、仏教において座禅する際に取るジェスチャー)を作り、目を閉じた。ここの激辛汁なし担々麵はそれ程の強敵のようだ。向こうでS・GとH・Mがなんか楽しげに話している。俺の右にいるR・Vはすでにnoteアプリで何か書き込んでいる。さすが一日三本更新でやっている奴だけあってモチベーションが違う。

「よおR・V、今日もきっちり三本更新でお疲れさん」
「おう、お疲れさん。そっちはどう?コミコン楽しかったか?」
「まあそれなりね。それよりそのコート熱くない?後ろにハンガーとフックがあるよ」

 そう、彼はその重そうな黒いバファロー革のドレンチコードを着ている。

「そうだな。辛い麺を食べると熱くなるもんだな」

 立ち上がり、コートを脱いでハンガーにかけるその時。

 パラン。

「「あっ」」

 コートの裏側から大きなボウイナイフが鞘ごと床に落ちて、いい声が響いた。R・Vの更に右にいるサラリマンの二人組が箸を止めて、訝しむ目でR・Vを注目した。なにしろ「これからキャンプに行くんです」の言い訳が通用しないほど、一振りでターキーを両断できるほどの大きさだ。

「ご存知の通り、新橋はいわゆるダウンタウンだ」と言いながら、R・Vはナイフを拾い、コートの裏に嵌め直した。よく見たら他に代償様々なナイフが隠してある。ブレード(ヴァンパイアハンターの方)かよ。「ダウンタウンと言えば乱闘、テロ、乱闘しながらのテロなどあらゆることが起こり得ぬ。そして俺は、日本政府からバウンティハンターの免許を貰っている。なので俺が道具を携えても完全合法で怪しくない、いいね?」

 サラリマンの二人組はR・Vの弁明に納得したか、それとも関わりたくないのか、つまみが乗っている皿と酒が入ったグラスに関心を移した。ここは一応ヌードルショップだが、飲みものなど色々のメニューも充実しているそうだ。

「お待たせしましたー」いよいよお待ちかねの麺が出された。

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 さすが日本。麺、オニオン、そして肉みそ(あと雑草っぽい奴)がきれいに載せている。俺の国の大雑把にブラーッ!とかけるやつとは大違いだ。勿論このままだとは完全とは言えない。箸を持って、麺に突き刺し、下の部分を掬い上げるように混ぜる。

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 そしてこうなった。出された時の面影はもはやどこにもない。ここで俺が気づいたのは、俺の国と違って、汁なし担々麵の文字通り、ほとんど汁がないところだ。箸でつまみ上げるのが少々困難。さて、味はどうかな。

 あむ……ちゅる……

 麻ァーッ!

 花椒が効く!心地よいしびれが口内に広がる。

 辣ァーッ!

 更に唐辛子で食道と胃が温まり、体温が上昇!俺のハンサム顔が汗まみれに!

「どうよA・K、俺が勧めた辛い麺の味は」M・Jは誇らしげの表情で言った。
「ああ、美味い。辛さがちょうどよく、花椒をはじめとしたスパイスが思う存分に暴れ回れる。しかも混ぜたあと汁のほとんどが麺に絡みついてるため、強く啜ってもあまりむせない。そして何よりーー」

 俺はグラスを掴み、水を一気に半分まで飲んだ。

「親切なことに、水がある。負けるはずがあるまい」
「水は大事だよな〜」

「うめ〜、辛いだけでなくマジうめえはこれ!マスクの裏が蒸れるけど」
「精神を奮い立たせる刺激です」

 S・GとH・Mもからも称賛!

「これぐらいならもっと辛くしてもいいか」R・Vは額に夥しい汗が浮かんで、椀に唐辛子をふりかけた。「A・Kもまた辛くするだろ?」

「そんなところだったぜ。サンキュー、R・V」俺は彼から唐辛子の小瓶を受け取り、麺に3回ぐらい振りかけた。

「お待たせしやした!激辛汁なし担々です」
「ホッホ!主役登場ですな!」

 店員から麺椀を受けとったM・J。他の四人が好奇心に駆けられ、その中身を覗いだ。

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「こっっわっ」「マグマですか?」「やべえなこりゃ」「赤黒い」

 その異常な唐辛子粉の量に我々は畏怖した。食べるところか、においを嗅いだだけで気管が焼け野原になりそう。

「ハハハ!これぞ真の辛い麺イーターが主食よ!」と言いながらM・J器用に麺を混ぜ始めた。まるで木星で吹きすさぶ大赤斑のようだ。

大赤斑(だいせきはん):木星に存在する大きな渦、地球におけるサイクロンのようなものと思われる。その大きさは地球の2、3個分である。

「これで良し、イタダキマス!」

 真っ赤に染まった麺を口に入れ、ズッズと啜る。M・Jの目が見開く。そしてーー

「カァーラァァァァーーッイ!!!!」

 一瞬にして顔が茹でたエビにみたいに真っ赤!

「でもうめえー!やはりここの麺が最高だぜぇー!」顔のあらゆる穴から体液を垂らしながらも、麺を口に送り込む手を止めないM・J!その様子を見て俺とS・Gは少し引き気味になった。

「おい、おいM・J、そんなに急がなくても……」
「ズルッ! ズルズルッ! ズルズルーッ!」
「聞いていませんね……」
「まあいいんじゃねか。おれだって目の前に半チャーハンがあれば無我夢中で食べただろうよ」とH・M。
「ズルッ! ズルズルッ! ズルズルーッ!ヴッ」

 あまりにも突然だった。勢いよく麺を啜っていたM・Jは動きが止まり、箸が手から落ちた。直後、胸を手で押さえた。

「M、M・J?」

 俺が話しかけるから一秒後、M・Jは後ろに仰向けるように席から滑り落ち、床に倒れた。

 俺たちの中で、一番早く動いたのはR・Vだった。俺を押しのけてM・Jのそばに跪き、首に人差し指と中指を当てた。

「……っ脈が無いぞ!」

(続く)

⚠この作品はフィクションです。実在する店と一切関係ありません⚠

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