見出し画像

【剣闘日記】The End of Decal war

 これは俺の剣闘活動、グラカツ。怒涛のDecal war記録である。

 Decal War、それはローマ行政が去年の11月末、アイカツフレンズがVol.2からVol.3に変わる間際に開催した卑怯なイベントである。

 そして今年一月に入り、Vol.2カードを排出する台が減りつつあることにつれて、シール集めも厳しくなった。カードつき台を探すため、俺はたくさんのアリーナをめぐり、たくさんのコイン使った。でもシール付きが出る確率は決して高いわけではない。10枚のなかで2枚ぐらい出ればラッキーの方だ。一枚も無かった時は人生について考えてしまう。諦めよう。これはローマ行政による搾取行為だ。一式のイベント限定プレミアムドレスのために費やしてきたコインは他のプレイヤーから通常プレミアムドレスを何セットも買えたか。

 台の前で嘆いていた俺に優しい剣闘の女神が声をかけてくれた。

 低迷していた士気が大幅に上げた俺は密かに誓った。彼女の思いを応えるためにも、絶対にシール30枚集めてプレミアムドレスを手に入れようと。

 そして二月、状況が更に厳しくなった。未だにVol.2を排出する台は俺の活動範囲内で減り続けて、とうとう一台しかなくなった。とある小学校の真正面にある文房具屋だ。黄昏のアリーナとでも呼んでおこう。ここはデーダカードダス筐体を数台置いてあるが、普段電気節約のため、放課時間の前は電気を消している。なのでここで剣闘することは少なかった。伝染病で冬休みが延長されたおかげ(せい)で、アイカツフレンズの台が昼から電源が入れている。これは多分最後のチャンスだ。俺は決断的に台に座り、連コインした。そして無邪気な少女トレーナーの質問に身悶えた。

 意外とシール付きの排出率がよかった。未所持のPRガードも出て嬉しい。でもこれ以上やると仕事に支障が出るので明後日また来ると決めた。

 数日後、同じ店で剣闘していた俺は背後から殺意を感じた。振り向くと、右後ろ、ナイフを持っていれば確実に俺を刺せる距離に少女剣闘士がいた。その手にはカードケースが持っている。

「……きみもやるのかい?」俺は問う。少女は答えず、ただ頷いた。知らない人と話さない、いい警戒心だ。

 俺のターンが終了した。剣闘三大原則の「並んでいる者に席を譲れ」に従い、椅子から立った。

「ドーゾ」「うん」

 俺は後ろに周り、スマホをいじるながら横目で彼女の剣闘を拝見した。カードは……揃えていないようで、同じカテゴリーのコーデをかろうじて組んでいる。見た目じゃ小学生みたいだし、その経済力からすればこれが精一杯だろ。

 プレイが終わった彼女が立ち上がり、プラスチック椅子に指さし、目で俺を促した。クールだね。

「ドーモ」席にケツを下ろした俺は再び連コインを開始。ぬ、、排出口から妙に金箔が存在感をアピールしてくる。これは!?

 シェイキングパーティートップスのカードじゃないか!

 やったぜ!九ヶ月の時を経て、これでやっとプレミアムカラフルショックが出せる!

 俺は上機嫌になり、さっそくカードの威力を試すべくこれまでにダブりにダブったシェイキングパーティーコーデのカードを台に並んだ。

「……」

 ヌゥーッ殺気!横目で見ると、少女剣闘士はダガーめいた目つきで俺のカードを睨んでいた。

 でもそれぐらいで動揺する俺ではない、殺伐としたアトモスフィアの中でスペシャルアピールを三回決まって勝利を収めた。俺の心は尊いものに満たされていた。カードバインダーからトレード用に取っておいたシェイキングパーティースカートとスニーカーを取り出し、少女剣闘士にこう言った。

「これ持っている?」
「……いえ」
「あげるよ」
「ありがとう」

 割と迷いもなく俺からカートを受け取った少女剣闘士であった。

「いいのか?軽率にPRカードを渡してしまって」

 俺の背後に、長い金髪をツインテールに結び、大振りの石弓を背負った剣闘士、“ビッグシスター”エマージェントが言った。彼女はイマジネイションの高まりにより出現した、俺にしか見えないイマジナリーフレンドだ。

「この気まぐれたの善意は本当に彼女のためになるのか?」
「気まぐれでも、善意は善意だ。シスター」カードを溝に挿してスキャンしながら俺は言った。「俺はアイカツ・イクォール・グラディエーター概念を他のプレイヤーに押しつけるつもりはない。カード不足で苦しんでいる奴は俺一人だけでいい。そして」

 ひと呼吸を置く。

「アイカツおじさんは全員キモオタで犯罪者予備軍ではないことを知ってもらういいチャンスだと思った」
「なるほど。イメージ作戦か」

 ランキング画面が終了し、俺はアイカツパスをバインダーに収め、立ち上がった。そろそろ午後の仕事に行かねばなるまい。少女剣闘士に会釈して黄昏のアリーナをあとにした。

 なんかハイクを読みたくなってきた。

アイカツを/やるおじさんは/化け物に非ず

 字余り。

 2月23日日曜日、ニンジャスレイヤー222への投稿を終えた俺は最後の戦いに打って出た。疫病で始業が遅れた新学期が月曜日から始まるため、黄昏のアリーナが本当に黄昏の以後しか稼動しなくなる。今は最後のチャンスだ。月曜日だけあって人が多い。僅かなおこづかいを握る少女剣闘士の群れに混じって、俺は地獄めいた連コインで大人の強みを見せた。そして本日の13枚目が出たところで、30枚のシールが揃った。


-ローマ-

「これで30……よし」「やり遂げたな」

 最後のデカールを布に縫い付けた。ドゥームが30枚のデカールが並んだシートをテープルに広げ、ストラウベリーと共に感慨深く眺めた。

「長く苦しい戦いだったぜ……あとは飛脚に頼んで工房組合に送って貰えばいいよな」
「そのためにお前の身元を記入と配送先を記入必要がある。物書きできるか?」
「ほう、あたしを肉を生でかじる野蛮人だと思ってるな?なめてもらっちゃ困る。オーキッドに文字を教わった。見ろよ」
「あっ、おい!」

 ストラベリーが止める間もなく、ドゥームは左掌でナイフを撫でた。切口から湧いた血液に葦ペンをつける。

「インクぐらい使え……」
「この方がワイルドでタフだろ?」
「無駄に怪我を増やすな。子供か」

 呆れるストラウベリーを構わず、ドゥームは血を吸った葦ペンを布上を走らせ、『ストラウベリーの家のドゥーム、レジェンダリーチャンピオンストラウベリー邸』と書いた。

「よぉし」余った血をべろべろと舐めとり、ドゥームはシートを巻き軸場に巻いた。「行こうストラウベリー。飛脚のところへ!」

 シートは送った。間違いがなかったら14日後アーマーが届くはず。果たしてドゥームは望み通りのプレミアムアーマーを手に入れるのか?それともまた卑怯なローマ行政翻弄されるのか?待て、次回!

「しかしデカールに夢中で新しいアーマー全然集めてないわ」
「このままだとあのシくススムーン姉妹にはとても敵わないな。どうする?」
「そらぁ、工房合作売店に金を注ぎこむしかないだろ……」
 新たな戦いが既に始まっている!



当アカウントは軽率送金をお勧めします。