MARVEL展
9月上旬、僕は福岡にいた。旅の疲れを癒やすべくホテルでビールやサラダチキンを喫しながらテレビを見ていたとき、MARVEL展のcmが流された。
僕はビール缶を側に置き、cmに集中した。どうやら10月まで福岡アジア美術館に展示されてるらしい。cmが終わり、僕はスーツケースから大事な青いベイマックスTを取り出して、胸にプリントされたベイマックスの楕円型の顔をしばらく眺めた。先週29の誕生日を迎えた僕は流石にもう若くないと思うし、ベイマックスTを着て歩き回るのは少し痛く感じる。MARVEL展なら着て行っても違和感がないのでは?と僕は運命を感じてMARVEL展に行くと決めた。
当日の朝、僕は張り切っていた。風呂に入り、デオドラント塗って、さらに腕立て100回して大胸筋を浮かばせてから丁寧にベイマックスTを着た。出掛ける前にミラーに向かってマッスルポースをとった。ベイマックスの顔が大胸筋の膨脹により横に長く見える。準備万端だ。
アジア美術館は中州というエリアにあり、夜になると実際危ない町だと聞いているが、昼間の間は至って安全であった。地下鉄を降り、ビルの七階にある美術館へのエレベーターに乗っていた間にも僕は興奮を隠し切れず何度をポーシングした。展示エリアに入り、客人を迎えるのはCaptian Americanの創刊号の表紙と数々の産み親であるStan Leeからのメッセージである。奥に進むとIron man suitとHulkの1:1モデルがある、撮影が許される。ファミリー客がここで盛り上がっていた。
次のブロックで紹介されるのはマーベル社の歴史である。Leeを含めてマーベルのお偉いさんがタイムリーコミックス時代からの変革とヒーロー誕生の背景を語ってくれる。ナチスにパンチを食らわせるキャプテンアメリカ、べドコンに監禁されたトニー・スターク、ブラックパンサー党の活発化を巡って誕生した初の黒人ヒーローBlack panther。MARVEL社は常アンテナをフル稼働して時代の奔流からアイデアを見出し、魅了的な作品を次々と産み出した。だがコミックブックスという商売をやる以上、いつまでも順調なわけがない。80年代、MARVELは倒産の危機に瀕していた。当時はSpidermanやX-MENなど人気作の映像化権を売って、映画の力を借りておもちゃやコーンフレックスなどのグッズを展開して辛うじて命を繋げた(因みにこの間はガーディアンズオフギャラクシーとトリトスがあった。スターロードごとクリプラがダイエット中のため食べれなかったとか)。最近となってピーターパーカーが遂にAvengersに登場できた。ファン達はこの光景を何年を夢見ていたのか。僕は陰で努力してくれた人々に感謝し、いつの日かウルヴァリンがAvengersとともに戦う映画が目に映るようと願った。
あとはこのイベントの最も重要な部分。近年映画で活躍したヒーロー達の生い立ちとその衣装が点字展示される。ここは多く語らない。いつか君の住む街にもMARVEL展が来るかもしれない、その時君自身の目で確かめるがいい。最後にLeeから日本のファンへのメッセージと日本の漫画家が描いたイラストのコーナーを越えると、そこは売店だった。Iron manの弁当箱とかが置いてある。展示はここまでと告げられた。ここでおれは重大なことに気づいた。
Big hero 6関連の物がどこにも見当たらない
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Big hero 6、日本ではタイトルがベイマックスそのままだ。最近のmarvel映画の中ではおれが特に気に入いった
舞台は未来都市サンフランソウキョウ。主人公のヒロ・ハマダは飛び級で高卒した13歳の少年、彼は天才的な創作力と理科知識を持っていながら目標が無ければ夢もなく、違法ロボ・ファイトに没頭し、スリルを求めていた。そんな彼の未来を危惧する兄であるタダシは、ヒロを自分が通ってる大学に連れって行き、そこでタダシの級友達の超クールな発明を見せつけられ、ヒロの心に火を付けられ、すぐにでも入学したいと伝えたが、サンフランソウキョウ理工大学は甘くない。タダシの指導教授であるカラハンがヒロの本気を確かめるべく、入学推薦するにはサイエンス・コンに受賞しなければならないという条件をつけた。
この後色々あって、ヒロは兄と恩師を失った。部屋に閉じこもって心を閉ざしたヒロの前に現れたのは、ダタシ研究開発した風船めいた医療介護用ロボット、つまりベイマックスだ。ヒロは自分を治療するには、事件の真相を突き止める必要があるとベイマックスに提案し、二人はわずかな手掛かりを沿って、とある廃工場に辿ったのであった。
これから先の内容を語るつもりはない。君が少しでも興味が湧いたら今すぐツタヤやNETFLIXとかでBig hero 6を見つけ出し、ビールを片手に視聴すべきだ。さらにタコスやブリドーを添えば完璧だ。サンフランソウキョウ......それはサンフランシスコと日本的要素を加えた都市だ。山鉾めいた路面電車、高層ビルの上に浮かぶ鯉のぼり形の風力発電機、巨大な鳥居のゴールデンゲートブリッジ......空を駆け抜けるベイマックスの背中から見るサンフランソウキョウの景色は美しく、おれは感動を覚えた。緻密な日本描写はすでに”和洋折衷”の枠を超えている。「こんなのどこが日本的だよ!いい加減にしろ!」とさけんでいるどうしようもない奴もいたが、そいつらはわかっていない。サフランソウキョウはサフランソウキョウだ、”サンフランシスコと東京が融合した都市”では断じてない、おれは東京とサンフランシスコどっちも行ったことあるからわかる。もちろんおれはハリウッド映画によくあるアジア要素をごちゃ混ぜした外国人が想像した日本も大好きだ。
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おれは売店を一回りし、Big hero 6グッズの有無を確かめた。どこにもなかった。さっきまでの興奮と感動が失望感に上書きされ、おれはやけくそにGurdian of galaxyのラバーコインケースを掴んでレジに向かった。
「イラッシャイマセー、1点で493円になります」
「カードで、あとバッグはいりません」
「すみません、今日はテープの準備がございませんのでバッグなしだと警備員に目をつけられたら大変なことになるかと」
「じゃあバッグでいいんです、すみませんでした」
「ありがとうございます、お買いになった商品は此こちらで……」
「あの、すみません。さっきからベイマックス関連な物が一つも見当たらないんですけど、これはなぜですか?」
「……はて?」店員は少々困惑した表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。日本人はサービス業のプロフェッショナルだ「確かにベイマックスはマーベルコミックを元についた映画であり、スタンリーも登場していたが、殆どがディスニーが制作していて、マーベル側の関与は極めて少なかったと聞きます」
おれは訝しんだ、なぜそれを思いつかなかったのかと自分を責めた。
「ねえ、あいつ、なに顔赤くしてんの?」「わっ、ほんまや、RULK並に赤いやん」「てかなんでベイマックスT着てんの?場違いにもほどがあるわ」背後から声が聞こえてくる。おれは己を恥じらう余りに顔に血が上り、デオドラントを塗ったにも関わらず汗が吹出し、ベイマックスTを濡らしてゆく。
「お客さん?大丈夫ですか?」
「何でもないです、ごめんなさい」おれはバッグに入れられたコインケースを掴んで、逃げるようにトイレへ急いだ。
便器を蓋してに座ると、おれはTシャツを脱ぎ、裏返して調べた。本当だ、ディスニーのマークがあったが、MARVELのMの字はどこにもない。即ちこのTシャツはディスニーから承認を得て製造された物だ。
「ハハハ」わけもわからず、おれは笑った。そして汗くさいTに顔を埋めた。闇だ、目の前に闇が広がる。
「どうかしたのかい、坊や?」闇から優しい男の声が聞こえた「顔を上げなさい。私に言ってごらん」
彼に従っておれはTシャツから顔をあげた、目の前に一人の男がいた。黒い宇宙めいた空間の中に彼とおれ、そしておれが座っている便器だけが浮かんでいる。男は哀愁ただよう目で便器の上のおれを見下ろす。非人間的な美貌だ。綻びのない中性的な顔たち、程良く鍛えたボディとそれを覆うレザースーツ、苔色のマント、そして何より頭に戴いた神話生物を想起させる曲げた二本角の冠。おれは瞬時に分かった。彼こそが巨人の子、ソーの義兄弟、バトル・オフ・ニューヨークを引き起こした主犯、アースガルスのロキその者であると。
「なぜ悲しむ?私に言ってごらん」ロキの呼吸は熟した果物のような芳香が混じり、その言葉が蜂蜜酒のように甘く、魔的な力が帯びている。嗚呼!この方なら、きっとおれのことを理解してくれる!とおれは思った。そして軽率に口を開けた。
「おれ......おれはアホです。MARVEL展で勝手に盛り上がって、ベイマックスが実はディズニー作品も知らずに勝手に落胆してて、みんなに笑われました」おれは泣きはじめた「こんなの、よくファンだと名乗れるんですよ」
「は……」ロキがため息した「事情は大体判った。でも坊やが何も悪く無いだろう?」ロキは顔を近づけてきた、もう少しでキスしてしまうぐらいの距離だ「"おまえの好きな作品にちょっかい出す奴は全員腰抜けだ。そいつらはどうせメキシコで死ぬ"、そうだろ?」
「なっ!?なぜあなたが、その言葉を⁉」おれは驚いた。彼が今言ったのは、間違いなくおれが尊敬している先生の名言であったからだ「もしや、あなたはメキシコから来た真の男だというのですか?」
「ああ、そうとも。そして私は君を真の男へと導こう。だが、条件がある」「なんだっていうのです?」「舐められたままでいいのかい?」「え?」「笑われて、ベイマックスがMARVEL展からのけものにされた現実に何とかしないのかい?」「え、でもあれはおれの勉強不足でして」「そんな腰抜けようじゃ、ヒロとタダシが許せるかね?」「ウッ、許せない、と思う......」「じゃあどうする」「懲らしめる......」「聞こえんぞ!」「懲らしめます!おれを、ベイマックスを、Big hero 6を舐めやがった連中と利益欲しさに権利を他社に売ったMARVEL社を完膚なき叩きのめして、サンフランソウキョウを成就させます!」
「よくぞ言った!そなたに力を授かり、我が軍勢に加わるとよい!」ロキがマントを翻し、杖を振るった。そしたら杖の先端がら青い光が放ち、おれは目を覆った。次第に光が弱まり、目を開けると、右手の中にはホースシュー(蹄鉄)の形をした金属棒があった。これを見たことがある。エイリアンの武器だ。エネルギー弾を射出し、両端が刃となっていて接近戦もこなせる優れものだ、フランクも使っていた「これでそなたは力を得た」ロキは杖で俺の肩にあてた「そなたも我がスーパーヴィランの一味となった。名乗るがよい!」
「我がなはアクズメ、灰汁を詰めた肉袋、すなわちーー」体の中から高揚感が沸き上がる
「スカム・バッグなり!」
「スカム・バッグ君!試練の時だ。MARVEL展を破壊し、福岡をケイオスに陥れよう!神々を弄ぶ罪をモータルどもに知らしめるのだ!」
「ハイ、ヨロコンデー!」
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闇が消え去り、おれは元のトイレに座ったままだった。右手に蹄鉄銃がある、夢ではなかった。今すぐにも飛び出たい興奮を抑えて、おれはT写真を着直した。その時である。
「客人よ、入ってから随分時間が立ったが、具合でも悪いのか?」
清掃員?あるいは警備員か?にしても態度がでかい。おれは苛立って、こいつを最初の目標にすると決めた。
「それとも何か良からぬことでもしておるのか?」
奴は近づいて来る。おれは蹄鉄銃をチャージモードにし、ドアに向いて構え、トリガーを押さえた。蹄鉄がの裂け目から小さな緑色の光球が現れた。来い、ドアの前に立った途端うち抜いてやる。
「まさか銃を構えて我のこと待ち伏せしているのか?」
「えっ」おれは驚いた。隣の個室から声が聞こえてきたのだ。
パァン!!木板の壁を突き破り、一本のおれの右腕を掴んだ。待ち構えていたおれは逆に不意を突かれて、トリガーから指が離れてしまった。ZAAAP!エネルギ弾が発射され、ドアを貫通して壁にソフトボール大の穴を残した。
「Shit!」今にも骨折しそうな激痛が走る。掴んできた手を剥がそうとしたが、万力めいた握力で離れようがない。パァン!!もう一本の腕が壁を貫通して、ベイマックスTの襟を掴んだ。嫌な予感がした。このシチュエーションに覚えがある、これの次に起きることといえばーー
「グワーッ!」KRAAAASH!!壁を突き破り、おれが隣りの個室に引き込まれた。壁にぶつかった時の衝撃でおれは前後不覚に陥り、仰向けになり床に倒れている様だ。申し訳ございません、マスター・ロキ。力を与えてくれたばかりにこの有り様です。やはりおれにはスーパーヴィランの才能が無いようです。
奴がおれを見下ろしている。トイレのライトが後光になって顔がよくわからないが、シルエットだけを見ても相当いいがたいってことがわかる。
「やれよ」
「.......オヌシはそうか」奴は右拳を握って、振り下ろした。
おれの意識が途絶えった。
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目が覚めた、体のあちこちが痛くてしようがない、頭にコブもできている。記憶が甦る。僕はトイレでロキに蹄鉄銃を授かられて、MRAVEL展をめちゃくちゃにするつもりだったが、その前に謎のマチョにボコられて今に至った……ナンセンスだ、夢に決まっている。
「気が付いたか」
「ぬぅ……」目まいを耐えながらソファから上体を起こし、周囲を見た。ここは社長室のような広くてオシャレしたオフィスだ。社長机の向うに座っている尊大に男がいた。白人、ブロンドロングヘア、”雷神”の漢字がプリントされた灰色のTシャツを着ているが、男のビルダーめいた筋肉のせいで今にも裂けそうである。下は普通のジーンズ。ビール缶を手にしてオフィスチェアに座っていた。
「あなたは、もしかして……」
「軽率に我の名を口にするでない、凡人。これからオヌシに尋問を行う。大人しく答えるた方がいい」ソーはビールを飲み干し、缶を潰して放り捨てて、右手を伸ばして何かを掴み取るジェスチャーをとった。ビィウン!何かが僕の頭を掠って飛んで行き、ソーの手中に収められた。一本の柄が短いハンマーである。
「オヌシへの対処は我が決める、舐めた真似をしてしまったら貴様の顔にハンマーが飛ぶことになる。わかったか?」
「ヒッ、わ、わかりました」
「よろしい」ソーは2本目のビールをバケツから取り出して一口を飲んだ「トイレで何をしていた、どうやってスクル人の武器を手に入れた?」
「えっとそれを言うのは、ちょっと恥ずかしいていうか……アッハイ、すいません全部話します」
ソーがハンマーを投げる動作を取ると、僕は羞恥心を忘れてMARVEL展に来てからの出来事を話した。
「フーム、スカムバッグか、これは面白い、フフッ」ソーは嗤い、僕は唇を噛み締めた「しかしおまえのようなナード坊主を籠絡するとは、ロキも落ちたものよ。とにかくおまえの容疑が無くなった。殴って悪かった、ほれ」ソーは更にバケツからビールを二本取り出し、一本を僕に渡した。
「ありがとございます……」僕はすぐにを開けず、冷えた缶を額のコブに当てた、遥かにいい。
「相当にBig hero 6が好きだな、でないとそんな年してその服を着れんだろう」
「そうですか」雷神Tについて口を出すのをぐっと我慢した。
「ディズニーはいい仕事した。知っているか?Big hero 6は元々日本を代表として作られたヒーロー団体だったが、人気が無く、数人がX-MENに抜擢されたあと出番がなくなり、MARVERにすら忘れられた存在だった」酒が回ったか、ソーが饒舌になった「まあ、無理もない。ベイマックスは当初リザートマンめいたデザインだった。あれは人気が出られん」
「その代わり、あなたはいいすね。すっどコアなキャラだし、映画も三作目出るし」
「おまえ……」ソーが厳つい表情となって、僕は緊張した「酒を飲まないとは何ことか。我が三本目進んだぞ」
「あ、すいません」慌ててビール缶を開けた
「CHEERS!」
「ち、チアース!」二人がビール缶を高く掲げたあと一気に飲み干した。ソーはまたビールを取り出した。
「今日は久々人を殴れることができて気分がいい。幾つが教えてやろう。もしディスニーがなければBig hero 6は未だに資料室の何処かで眠ったままだ。おまえがベイマックスの服を着るとこもなかろう」
「わかる……気がします」
「おまえはこうして上司との飲み会のような状況に置かれているのは誰のせいでもない、おまえ自身の心の弱さゆえだ。おまえを笑った奴とおまえを惑わしたロキも悪いが、おまえが最初からタフでいれば、ベイマックスを見当たらないぐらいのことで動揺しなかっただろうし、店員に指摘されることもなかろう」
「その通りですね」
「我がタフでおられる方法を伝授してやろうか」
「是非ともお願いします」
「ウム、ならば心して聞け。まずは体を鍛えろ。体力と筋肉を付ければ自信も付く。おまえは……」ソーは僕を見た「ベンチ何キロだ?」
「アシスタントが居れば、90ぐらいです」
「及第点というところか、これからも精進せよ。筋肉と自信もつけたのはいいが、おまえがヒーローみたいに振る舞える訳ではない。ヴィジャランティ気取りになり路地裏でチンピラと殴り合ってみろ、おまえは喧嘩慣れの悪人に敵う筈もなく、ナイフで刺されて哀れな死体となるだろう。幸いおまえは比較的に善良な市民であり、おまえにとって戦場はストリートではなく職場だ。相手といえばセクハラ上司や嫌な先輩、あと得意先ぐらいだろう。そういう連中は大体うらなり野郎か豚野郎でマッチョのおまえより弱い、筋肉をアピールしながら相手を絞め殺す態度で挑め。だが犯罪になるから殺すな。連中はおまえの鋼めいた肉体と歪みない精神を見て従来の態度を改めるだろう」
「そんなにうまく行くのでしょうか?」
「少なくとも我はそうしてきた。そして実質上無敗を保ってきた」
僕は訝しんだ。ソーは性質上、多少やられても死に至らないタフなキャラのため、新ヴィランが登場する度よく噛ませ犬役を買わされてにボコられるからだ
「その目、我の言葉を疑っているのか?」
「いえ、そんなことは微塵も」
「我を信じるな」
「ええ!?」
「筋肉があれば全てがうまく往くなど、コミックの中だけだ、現実が甘くない。タフになる方法は人それぞれだ」ソーは立ち上り、窓ガラスから中州の街並みを眺めた「だからおまえは旅を続けろ、自分が納得の答えが出るまで探すがよい。もし道を踏み外してまた闇に落ちたら、我の仲間たちがおまえをとめる」
ソーが言ったことはめちゃくちゃかつ跳躍的で、胡乱に極まりなかったが、確実に僕の心を響かせた。僕もソファから立ち、90度のお辞儀をした「大変お世話になりました!これからもよろしくお願いします!」
「何?また会おう気なのか?それとも闇落ち前提か?まあよい。お前もそろそろゆけ、ここから出ろ」
「先生!ありがとうございます!」もう一度お辞儀し、僕はかばんを拾いドアに向かった。
「出る前にもう一つ」
「はい、なんでしょう」
「Might Thor: RAGNAROK、11月3日、日本上映だ。もちろん映画館で見てくれるだろうな」
「それは……」僕はソーの教えを思い出し、不遜に彼を見返した「知りませんよ、僕日本人じゃないし」
「おまえ……」ソーは目を見開いた「親切してやったのにその態度はなにことか……」ハンマーを持っている手に力がこもり、ハンマーに電流が走って青白く光る!「絶対に!見ろおおお!」
僕はドアを閉まり、廊下を逃げるように走っていった。
ア・ミステリ・エクスペリエンス・オフ・マーベル・コン END
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