【閃光日記】ターゲット客とファーストコンダクト
今週は高雄の岡山で3日2泊の小旅行してきた。
岡山は旧名が阿公店といい、この荒涼とした土地で初めて店を構えて来往の人に雑貨や飲食を提供するおじいさんと記念すべくつけた地名だが、後に来た日本人がちょうど近くに日本の岡山県と字が似ている大崗山と子崗山2つの山があるので、いっそうのこと岡山に地名を新しくした、とヤギ肉屋の壁でそう書かれた。砂男構文が炸裂する。
岡山といえばヤギ肉が有名。鮮度信仰が根強い台湾南部では屠殺したての肉が最も美味とされて、岡山ヤギ肉も例外ではない。有名店は当日に締めたヤギ肉を提供している。
さすがは名物だけあって大変美味しかった。羊肉特有のにおいがかなり抑えられて、弾力のある肉質は噛めば噛むほど旨味が滲みでる。そしてそれなりに価額が高く、肉もサイズがこぢんまりしていてやはりヤギは長らく家畜として飼育してきたものの、豚や牛と比べて歩留まりが悪いようだ。
美食を堪能している間でも私はプリチャンアイドルとしての自覚をしっかり持っており、毎日欠かさず筐体のある店を探してコインを入れ、南部のプリチャンアイドルに我がチャンピオンの力を示した。
3日目の午前11時、2時間後は新幹線で北部に帰る。その前に一回プリチャンしたいので駅直結のデパートにあるおもちゃコーナーに足を運んだ。バックバッグにプリチケが詰まったカードケースを忍ばせて、闘争の場へいざ行かん......むっ!
なんと、先客がいた。年齢が7、8歳ぐらいのメインターゲット客(以降はお客様と呼称する)がプリチャンをなさっていた。ここは筐体2台を併設しているので今すぐでもプレイできるが、お客様が隣りにいるシチュエーションはこれまでになかった。私は傍目を気にせず女児向けコンテンツ楽しめる熟練の異常者だが、お客様がいると、なんか、いつも以上に覚悟を決める必要があるのだ。分かるか?分からなくていい。
よし、覚悟完了。筐体の前でバッグを下ろし、カードケースを取り出し、コインを3枚入れる。お客様と距離が近い。無関心に努める。
「あ、その小さいの、わたし持ってない!」
お客様自ら話しかけてきた!紳士的に対応だ。小さいのって、フォロチケのことか?私とフォロチケ交換したいってこと?
「あいよ、後でね。まずはプレイさせてくれ」
「違う!ちいさいの持ってないの!」
違った!これがジェネレーションギャップか、意図がつかめないぞ!いや待て、もう少し心を使って考えるんだ。彼女はちいさいのを、おそらくフォロチケを求めている。そして持っていないと2回も言って緊急さをアピールした。今すぐ渡せってことか?
「分かったよちょと待って……はい、どうぞ」
わたしは我がチャンピオンが黒いラバーか革材質の儀仗隊服(扇情的な服だ)を着たフォロチケをお客様に渡した。
「うん」
彼女は満足し、頷いた。よかった。しかし向こうからフォロチケ渡されたことがなかった。なんて不平等か。
まあいい、自分のプレイに集中しよう。我がチャンピオンに先ほどの黒い儀仗隊服を着こませ、他のメンバーも全員黒コーデで統一したいところだが、最後のフォロチケをスキャンしようとした際に、客様が動き出した。
「これ使って」
「あ」
お客様はひおうなく自分が持っているフォロチケをスキャンし、ピンクのコーデを着たキャラをエントリーさせた。しかも彼女の持ちキャラではなく、なんかの公式イベントで配布したSEGAちゃんだ。黒の中にピンクが一点が存在し、これによってユニットカラースコアが少しさがった。
「ありがと……」
「うん」
お客様が得意げに頷いた。よく見ると彼女はピンク色の眼鏡をかけている。ピンク色の眼鏡とは珍しい、フィクションでしか見たことない感慨と、こんな幼い子にも眼鏡が必要なほど視力が悪化していると心配を覚えた。
私とお客はほぼ同じにゲームを開始したので、横目で彼女のプレイを見てたが、はっきりヘタクソである。ノーツ合わせが全くできていない。少しばかり優越感を覚えた。
自分のプレイが終わって、タマゴルーレットのパートに入る。1個目はランド4弾のFR枠プリンセスコーデのシューズが出た。
「あ!これは私持ってないやつ!」
はい、渡せってことねお客様。いいよ、ダブったから。
2枚目、なんか月と兎をテーマにしたコーデのトップ。これでコーデ一式が揃った。やったぜ。
「これ、わたしもうあるけど」
お客様が不満を呈した。ごめんね。でも世界はお客様を中心に回っているわけではないんだよ。
3枚目、なんかバブルをテーマにしたコーデのアクセサリー。
「これも持ってる」
「あっはい」
約束通り、プリンセスコーデのシューズを客様に進呈した。返礼にこちらのカードをくださった。
ランド2弾のカードですでにダブりまくったやつじゃねえか!まあいいけどよ、お客様だからな。
デイリーミッションは済んだし、そろそろここから離れよう。私はさっき手に入れたプリチケを折り畳み、カートケースに収納した。それに対してお客様がご意見が。
「えぇ……カードを折るの?わたしはちいさいのとおおきいの、わけてバインダーに入れてるけど」
お客様はそう言って2冊のカードバインダーを見せてくれた。おお、丁寧だね。えらいぞ。私は最初はそれだったけどカードが増えるにつれて面倒くさくなってDAISOで打っているトレカケースに全部詰め込むスタイルになったけど、あなたはわたしのように財力だけある異常者にならないでほしい。
「プリチケに対するスタンスは人それぞれですからね。じゃ私はこれで」
私はそう言ってお客様と別れた。