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辛い麺メント IN TOKYO⑧ #ppslgr

『やっと出てきたかA・K。次はどうする?あの女魔法使いでも呼び出してみるか?』
「いや。レディの手を煩わせるまでもない。新橋を火の海にしたくないしな。この俺が決着をつけてやるぜマラーラー!」

『ほう、イマジナリーフレンドに頼るばかりで自身の戦力がほぼゼロのお前が、このアイキル・ドーの達人に挑むというのか?面白い!』

「Dude、無茶を……」俯きに倒れているダーヴィが心配そうに見てきた。ブルタルモードで異常肥大していた筋肉は穴が空いた風船みたいに萎れてもとに戻っていく。

「心配ないぜダーヴィ。こいつに力では勝てないこと承知している。だから大人らしく、話し合おうではないか」

『話し合いとな!辣ァーハハ!』マラーラーは心底愉快そうに笑った。『絶対強者のこのオレが、弱者のおまえに耳を傾ける必要は微塵もないが、同じく辛い麺・ドーを目指した同志のよしみで一句ぐらい言わせよう』

「……いいぜ。度肝を抜かれるなよ。M・Jィ!」

 スゥー……俺はゆっくり息を吸った。やべえよ、マジやべえよ。王子に証明してやると言って出てきたけど、思い返してみれば相当無茶だ。膝が震えている、ダサい。でもこれ以上引き下がれない。やれ、やるしかないんだよ!やってやる!俺だってパルプスリンガーだ!聞いてくれよM・J!お前に初めて褒められた記事、その中に出た歌だ!

 パッチ、パッチと指を鳴らし、つま先で地面をタップしてリズムを作る。

『あ?』

 マラーラーは頭を傾けた。畜生、ちょっと可愛いじゃないか。さあ行くぞ。

「ツクターン!デ、デレデーレレ、デレデーレレー、ワォオオオ〜ン、ツクタァズンクタタタッ!」

 イントロ良し!行くぜ!

「光る、雲突き抜けFLY AWAY〜、FLY AWAY〜 体、中ぅ、うーに、広がるパノラマ〜」
『なんの真似だ?』と妖狐が問う。歌ってんだよ!見りゃわかるだろあほが!
「顔を、蹴られた地球が怒って〜、怒って〜 火山ん、を、爆発させるぅ〜〜」血が顔に登り、心の中で羞恥心と高揚感が拮抗すしている!
『なぜ急に歌いだした!?』
「溶ォけたこおりのなーかにー、恐竜がいたら、玉乗りしこ、みたいね〜〜」
『バカにしているのか!』マラーラーがクリムゾンベレットの銃口を向けてきた。『グォン!?』一本の矢が飛んでクリムゾンバレットを射ち落とした。俺の横に王子弓を構えて立っている。王子は俺の目を見て、頷いた。もう一度、深く息を吸う。テンション上げるぞ!

「「CHA−LA! HEAD−CHA−LA! 何が起きても気ぃ分はァ、へのへのかっっぱァー!!」」

 王子も歌っている!俺の平凡オタク声にヴィタスじみた美声が重なる。デュオ!

『やめろォ!これ以上は歌うな!えい、離せ!』歌を阻止すべく粗暴に歩み出すマラーラーを、ダーヴィが足をしがみついて阻止!

「「「CHA−LA! HEAD−CHA−LA! 胸がバチバチするほど〜 騒ぐ元気玉ァ〜〜」」」

 顔を覆う靄を解除して、鼻字を垂れながらも獰猛に笑い、ダーヴィの厚っぽいが歌声が斉唱に参加。トリオ!

『ふざけるな!こんなことして何の意味がある!真剣に戦え!』

 吠える妖狐に、俺は挑発的に指をさした。

「意味はあるんだぜ!マラーラー!現にお前は歌に気を取られて周りに気づいていない!」
『なぬ!?』

 ヌッと、ルチャルド仮面を被った大男がパイプ椅子を掲げてマラーラーの後ろに立っていた。

「ーーSPARKING!!!」『カラッハァ!?』

 マラーラーの後頭部にめかけ、H・Mがパイプ椅子をフルスイング殴打!

「イーヒヒッ!初手で毒霧とサミングのダブル外道技野郎に鈍器不意打ちを決めたぜ!気分爽快!」

 両手を上げて、脳内の存在する観客にアピールするH・Mに狼狽えていたマラーラーは向き直った。

『キサマ!ゆるせんぞ!カイイェン!ハパネロ!』

 肩鎧の狐を模した飾りの目がピカッと光った!金属が軋んで変形!二匹の護法獣が軽やかに着地。「アォォォーン!」「ギャウルルルッ!」吼える護法獣!

『ゆくぞ!ケルベウフォックス!』

 剣形態のクリムゾンバレットを再生成して構えるマラーラー、一人と二匹がH・Mに攻めかかる!その時、一陣の電光が夜の街を裂きながら馳せて来た。

「アォォン!?」真紅の護法獣、カイイェンが凄まじい勢いでアスファルト地面にぶつかり、めり込んだ。前半身が埋まっているその姿はまさに雪に頭を突っ込んだキタキツネ。

「ギャルエーッ!?」橙色の護法獣ハパネロは尻尾を掴まれて、空中で数回転したあと放られて空の彼方へ飛んで行った。これすべては一秒ないの出来事。マラーラーの前に、橙色の仏僧服を纏った坊主男は超然に立ち、胸の前に合掌した。彼の両腕に「風馳」「電掣」の漢字が青白く光っている。

風馳電掣:中国の四字熟語、凄まじく速いの意味。

『ハバネロ!カイイェン!おのれS・G!高くつくぞ』

「やめたまえ」S・Gはブッタめいた穏やかの表情でいった。「私が来た以上、もはや貴方は勝機を失せた。快く、成敗なされよう」

『一度は倒れたのによくほさぐ!もう一度はオレの辣毒を味わうがいい!忍法、赤霧ーー』口を開いて毒霧を吐き出さんとするマラーラー!

「赤空疾駆、唸り吼えろ剣山刀樹!」

『グワーッ!?』

 マラーラーの周囲に忽然、刀剣の如く鋭利な葉と枝を備えた樹林を構築された!マラーラーを切り刻みながら拘束する!10メートル離れた場所に、夜に溶け込む黒ずくめ服を着たR・Vが長ドスを地面に刺して能力を行使していた。

「済まないなA・K。蕎麦屋でテロしながらの乱闘に遭って時間がかかった。でもこれからが問題」

 R・Vは長ドスを抜き、時代劇みたいにヒューヒューと二回転して鞘に戻し、サムライのようにベルトに差した。

『ガ……ガォォォ……』剣山刀樹に苛まれて、唸っているマラーラーを見やる。

「M・Jを元に戻す手段、この中に持つ者はいるか?」

(続く)

本文に言及した記事はこれのことです。



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