【もののふ】愛国女子紅武士道をみたGAI-JINは大和魂を知りました【の心】
皆さんは信仰を持っていますか?いや、そんなに警戒しなくていいです。別に無神論者か異教徒だからといってあなたを串刺したり火刑をかけたりしません。私は人間が多かれ少なかれ何かを信仰していると考えています。あなたはYoutuberの動画を礼拝のように毎日視聴して彼や彼女を擁護してアンチと戦ったり、何らかのアニメや漫画作品を人生のバイブルと称したりしたことがありませんか?それはもう立派の信仰です。
なぜ急に信仰の話をするかというと、皆さんがご存知あの愛国心を昂らせる愛国女子紅武士道という映画は海を越えて現在みなみの国にて上映中です。そのどストレートなタイトルに興味を惹かれて調べてみると、予告で頭の数が倍増したキングギドラのようなモンスターが出て、これは見なきゃいけないと思ってみてきました。それでは私が覚えている範囲で映画の紹介をさせていただきます。ネタバレしかありませんのでご注意ください。
愛国の目覚め
大和静、22歳、正義感が強く曲がったことが嫌いな大学生。家は剣道道場を営んでおり、彼女自身も全国大会二連覇を果たした実力者です。
ある日の夜、剣道の稽古へ向かう途中で暴漢に襲われるが、武術で容易く撃退。その様子は誰かに撮影されていました。家に帰って、弟と共に父であり師範である大和信現の指導を受け、自分たちの大和一心館はかつて千葉周作をも負かし、北辰一刀流が他流試合を禁じたきっかけとなったと聞かされます。
夕食の時間となって、大和一家はちゃぶ台に囲みます。今日の献立はイカ炒め物とエビ、さかなのフライです。とても美味しそう。私はここで飯テロを食らいます。弟はTVの電源を付けます。ニュースではソドラ共和国が発射したミサイルが太平洋に墜落したと報道されます。ソドラ共和国とは作中に登場する架空の全体主義国家ですが、ほとんど中国です、いやはっきりと中国です。ソドラ共和国近年はミサイルを飛ばしたり軍艦で沖縄をハラメンスしたりするアジアの問題児です。
ミサイル発射事件に対して総理がいつものように「誠に遺憾」と声明し、コメンテーターが「なるべくソドラを刺激しないよう、平和的な対話を……」などの弱気な発言に対して大和父がブチ切れます!
「遺憾、遺憾、遺憾!それしか言わぬか!この国の政治家は大和魂を忘れている!イカの方が貴様らより余程ほねがあるわ!」
「お父さんはテレビよりこっちの方が好きそうだね」と言って食卓にノートPCを開いて配信動画を見せます。NPO法人「日本の未来を守る会」会長の高山悟志の強兵救国を語ります。
「この者は実に正しいことを言っている」と高山を褒めるお父さん。エコーチャンバーの形成によって大和家の食卓は平穏を取り戻します。高山さんの言葉に触発されて、静は愛国的文章を書いて新聞社に投書し、見事に採用されます。
別の日、カフェでケーキを堪能する静に見知らぬ男が声をかけた。彼は芸能事務所のスカウト、静からアクション女優の才能があると言ってオーディションに申し出ます。戸惑いながらもせっかくのチャンスなので受諾するシズ。彼らがやってきたのはNPO法人「日本の未来を守る会」のオフィスでした。
「ここは共同のオフィスで、うちの事務所はこの階段を降りてすぐです。この先はお一人で行ってください」
「あ、はい」
スカウトに言われて階段に降りる静、やけに広いレッスンルームに入りますが、そこにスーツ姿の四人の男たちが待ち構えていた。男たちは問答無用で竹刀を構えて静に襲う!難なく男たちをさばく静。
「さすがですね」驚嘆しながら登場する山高さん。
「どういうつもりですか貴方!?」警戒する静。
そして山高さんは語りだします。自分は日本の未来を守る会の会長であると同時に、神道を極めた真の日本の未来を憂う愛国的組織「日本救済会議」の事務局長であり、前々から静の才能に目をつけていたと、日本は滅亡の危機に瀕していると、静こそ日本を救う選ばれし者であると。
あまりの情報量で整理がつかない静に、高山さんはさらにたたみかける。
「なんか変なビジョンを見ませんでしたか?」
「あ、そういえば」
「それですよ」
実は最近、静は時折変な光景を見るようになっていました。大陸の空を舞う赤と黒の邪龍......都心にミサイルが落ちて、天を衝くキノコ雲......
それこそが霊視の能力で、選ばれし者の照明だと高山さんが説明。静は事務所のさらに奥へにある畳敷きの奥ゆかしい部屋へ案内されます。部屋の中は荘厳な神道的飾りを施されて、檀上には天御祖神と書いた板がありました。
高山さんの説明によると、天御祖神こそが日本の祖たる神であり、日本の本質は奇跡の宗教国家であると。仏教の悟りの概念を融合した神道が素晴らしさを讃え、神道を忘れて無神論に走る今の日本人を嘆きます。
そしてもう一つ衝撃の事実があります。ソドル共和国が軍事的全体主義に走るのも、周辺国家に侵略するのも、ジェノサイドを行うのも、全ては四次元に存在する黄泉大魔神という悪しき存在の仕業であると。その黄泉大魔神を討つために日本救済会議のもとで修業して、日本の救うもののふになってほしいと。
静は受諾しました。
愛国は一日にしてならず
正式に日本の未来を守る会のメンバーとなって愛国活動に励む静。そして黄泉大魔神に抗うために新しい同志たちが登場します。父が台湾人でソドルの脅威に敏感な才華さん!日本の未来を守る会に連なる芸能事務所に所属しているタレントの実千さん!家庭の事情がちょっと複雑な遼太郎くん!合わせて愛国四人衆!日本の未来は彼らに託されている!
黄泉大魔神を倒すべく、本格的な修業が始まります。あぐらを組んで瞑想します。なんと静は一発で幽体離脱に成功しました。さすが選ばれし者と言ったところです。
青白いオーラを纏った霊体静は天に登り、武家の鎧を着込んだもう一人の自分に出会います。彼女こそが守護霊様です。守護霊様からこの美しい地球を、日本を救ってほしいと言い渡され、静はより一層決心が固まります。
修業シーンといえばモンタージュです。高山さんの指導の下で幽体離脱できた愛国四人衆。訓練が次に段階へ進みます。なんと、肉体の枷から解かれた霊体はより高次元な精神に触れて、様々な超能力が目覚めそうです。高速移動する神速と目から黄色い光を放つ神の目を体得した実千!シャウトで衝撃波を発生する神音を披露する才華!霊体状態で剣道稽古する静と遼太郎!遼太郎は特に超能力がないようです。
俗世における愛国活動も疎かにしていない。街頭スピーチの中に異議分子の暴漢が鉄パイプを持って襲撃してきても静が武術の才を発揮して難なく撃退!これが愛国女子の力だ!インターネット配信番組にもコメンテーターとして出て軟弱な非戦主義者と舌戦を繰り広げます。忠実とした愛国な日々......
反日の逆襲
しかしある日の夜、静はビジョンの夢にうなされまていました。夢の中で都心にミサイルが落ち、天を衝くキノコ雲を背景に、2.23の文字が浮かび上がります。黄泉大魔神の哄笑が聞こえてきます。
『ワーッハハハハ!今度こそ日本が滅びる!』
「やめてぇぇぇ!」
ベッドから飛び上がる静はこの件を高山さんに報告します。こちらの愛国パワーの増強に相手は焦りを感じて強引手段を打ってでたでしょうと判断する高山さんは2月23日までに黄泉大魔神を討ち取ると決断します。作戦はこうです:静、実千、才華の三人で幽体離脱して霊界に入って直接黄泉大魔王を叩く。遼太郎は官僚を説得して、軍事的手段でミサイルの阻止を図ります。一介大学生の遼太郎にとって荷が重すぎませんか?でもこれは彼しかできない任務です。なんと遼太郎のお父さんは総理補佐官でした。遼太郎は大和魂を忘れて保身的になっていた父親に嫌気を差して愛国活動に没入しました。そしてお父さんは息子が宗教に熱心の息子はバッシングの材料にされることを危惧して、宗教をやめてほしいと願っている。親子の溝が深い。しかし日本は滅亡の危機に瀕している!メンツを構っている場合ではありません!父親に電話をかける遼太郎。
「もしもし、父さん聞いてくれ……2月23日にソドラ共和国の核ミサイルが日本に落ちる!」
『……なにわけの分からんこと言ってるんだ?切るぞ』
ヘタクソ!遼太郎くんヘタクソ!そんな言い方じゃ信じるやつはいないでしょう!三人の愛国女子は幽体離脱して霊界にある黄泉大魔神の根城にやってきました。霊体の静はいつのまにかかっこいいサムライスーツ(剣心が着るやつ)に着替えて、日本刀を腰に帯びています。カラテ家の才華は白いカラテ道着にカラテグローブを追加されます。合気使いの実千は外見の変化が特にありません。背中を合わせて警戒する愛国女子たちに、グールじみた醜悪な闇の怪物が襲い掛かる!イクサが始まります!しかし愛国心を高めた女子たちを侮るなかれ。
一旦カメラを俗世に戻ります。総理のオフィスにソドラ共和国が2月23日にミサイルを発射し、その弾道は日本の上空を通過するという報告が入ります。(息子が言ったことは本当だった?)と動揺するお父さんに、遼太郎は官邸に押しかけて土下座してみせます。息子の必死の願いに感化され、お父さんは総理にミサイルの撃墜を進言します。
一方、霊界での激しい戦いが続いています。神速の愛国合気道はグールを転ばし、神の目が輝いてグールを退け、愛国シャウトは黄泉大魔神へ至る道を切り拓く。しかし超能力のエネルギー消耗が激しく、実千と才華の霊体は変身時間が切れたウルトラマンのように光となって散ります。一人で黄泉大魔神と戦うこととなる静だが、彼女は怯まない。彼女は現代のもののふ、真の大和魂を持つ愛国女子ですから。
愛国の夜明け
ダンジョンの奥へ進むと、そこで黄泉大魔神が一人で待ち構えていました。黄泉大魔神は黒いフード付きのローブを被っており、露出している顔は赤い皮膚に黒いペイントが施されてどこかダース・モールに似ています。
柳葉刀(青龍刀の正式名)で静と斬り結ぶ黄泉大魔神、ラスボスだけあって静を劣勢に追い込み、そこでローブを脱ぎ捨てて第二形態に入ります。胸筋と腹筋に4つずつの割れ目から蛇の尻尾めいた触手が飛び出る!いきなりのジャパニーズHENTAI!触手に締め上げられる静、絶体絶命!
『日本は昔ほかの国を侵略したから嫌われても仕方ないよ』『敗戦国はわきまえるべきだ』など腰抜けた言葉が静の脳に流れ込む。黄泉大魔神は反日的思考を己の力に変える能力があるのだ!
(どうしてそんなこと言うの?生まれた国を愛するのは間違いなの?)と絶望しかけて静。このままでは霊体が持たない!言い忘れましたけど、霊体が負った怪我はそのまま物理肉体フィードバックします。つまり致死レベルダメージのを受けたら霊体が消滅し、肉体も機能停止しまいます。ジョジョのスタンドみたいなものです。
静のピンチに高山さんが駆けつけます。裂帛の勢いでカタナを振って触手を切断!
『ほう、プリンスの登場か?』
余裕ぶる黄泉大魔神。黄泉大魔神の卑猥触手の先端から刃をせり出し、高山さんを貫きます。光と化して散っていく高山さんは最期の願いを静に託します。尊敬する師であり、真の愛国者である男は消えましたが、その志を継ぐ者がここに居ました。
すべての雑念を断ち切って、地球神に祈りをささげる静。彼女の愛国心を応えるように、エクスカリバーの如く岩に刺刺さっている両刃剣が現出します。
「これが、天叢雲剣」静は瞬時に理解して天叢雲剣を引き抜く静。これまでの間は黄泉大魔神は空気を読んで何もせず待ってくれていました。天叢雲剣を構える静。黄泉大魔神はついに動き出します。残り三本の触手で一斉攻撃を仕掛けるが、静は完璧なタイミングで斬撃を繰り出して触手を切断!攻撃手段を失い無様をさらす黄泉大魔神!時が来た!FINISH HIM!
「黄泉大魔神よ、未来永劫、汝が神国日本を侵すことを赦せんッ!」
渾身の唐竹割が黄泉大魔神を両断!SIZUKA WIN、 FATALITY。切断されたの体から赤と黒の邪龍が飛び出て、光の粒子となって散っていく黄泉大魔神の体は再構築され、8つの頭を持つ龍が現れました。黄泉大魔神の正体、それは古来より日本を守護してきた神獣、ヤマタノオロチだったのです。静の愛国心で元の姿を取り戻したヤマタノオロチは俗世へと飛び立ちます。
同時刻、ソドラ共和国西部の砂漠地帯からミサイルが発射されます。それを迎撃すべく洋上の自衛隊船艦もパトリオットミサイルを発射します。ヤマタノオロチが顕現してパトリオットミサイルの弾道を修正します。護国神獣の加護を得た正義の愛国弾頭と邪悪の反日弾頭が衝突!DOOOOOM!!上層圏で大爆発が起こりました。大和魂を持つ若いもののふたちの努力によって悪しき反日の企みが潰えて、日本は守られました。英霊になった半透明高山さんが誇らしげに微笑みます。
黄泉大魔神が起こした騒乱が一段落つき、大学卒業の先日に茶室では静が奥ゆかしく茶道を楽しむ大和親子。静は信現にお茶を供し、卒業後は道場なった留まり、次世帯の若者にもののふの精神を教えたいと伝えます。神国日本の未来が明るい......
感想
いかがでしたでしょうか?愛国心が高まりましたか?私は一生分の「愛国」を言った気は気がします。ではこれから素直な感想を述べさせていただきたい都心と思います。
すぅー……Ok、俺だ。
愛国する手段がたくさんある中、我が国に対して悪い企みを持つ敵国の悪い外国人をしばくのが一番シンプルで手取り早く、古今東西いろんな作品が使った手法だ。カンフー映画だって外国人に虐げられていた若者が機縁でいい師夫に巡りあい武術を並び、鍛えられた技と不屈の闘志で西洋人と日本人に立ち向かうやつがよく売れた。お互い様である。今作は本当に叩きたい相手を直接に名指しせず架空国家に置き換えたので中国の抗日劇と比べてまたぬるさを感じる。作中は非戦的なコメンテーターに対して静が「本当は問題から逃げているだけではないか?」と発言したが、これもまたある種の逃げとが言えなくもないでしょうか。
俺は如何なる宗教に対してもリスペクト、ノータッチ、ゲダファックオフのスタンスを貫いているのでここで教義について語るつもりはない。スピリチュアルの部分は突拍子ではあるが、あっはいそんな考え方もありますね程度でやり過ごせて嫌悪感がなかった。俺が信仰持ちの両親に振り回されて行きたくもない集会に連れていかれてうたので宗教に対する免疫ができてるからからか。
しかし右翼思想と宗教要素を抜きにしても、この作品は映画として上手いとは言えなかった。とくにカメラワークがヘタ。例えば会話シーンはまず会話するキャラ二人の顔を交互に映って、そしてセリフが進むにつれてキャラの顔に徐々にズームインする手法を多用していた。そして意図的なのか、役者のメイクは薄い。どんどんズームインしていく結果、役者の顔の痣とニキビの類がはっきりで見えていた。もののふだから過剰な化粧がけしからんとか?霊体離脱の修業シーンはもっとひどかった。まず静の顔を映って、そして才華、実千、遼太郎の順にカメラを回して、最後に高山さんが頷くところをアップする。この繰り返しは三回ぐらい使われていた。尺稼が露骨でイライラするぜ。愛国心がなければ耐えれなかった。でも黄泉大魔神の造形は好きだな。胸と腹に着けている女性器のような割れ目から触手、R-TYPEに登場するコマンダーを思い出させる。ちなみに黄泉大魔神は特殊メイクが厚いため肌が一番きれいに見える。
大学の時、理哲学の授業で講師の老教授はこう言った。「おい禽獣ども、どうせおまえら頭の中は論語のことを現代にそぐわない腐った説教本でしかないと思ってるだろ?笑わせる!自分が気付いてないが、すでに孔父子が示す道がおまえらの中で根を張っている!そう簡単に道から逃げれると思うなよ!」今となって教授の話がわかる。創作でことごとく論語などの経典を引用して読み上げるキャラってすごく知性が高そうに見えてかっこいいもんな。もし論語が中華思想の中心であれば、愛国女子紅武士道が全編通して強調する大和魂もまた日本精神の核と言えよう。ならば日本人は全員愛国女子紅武士道を観て大和魂を知るべきだ。好きだろ?大和魂。素直になっていいよ。無神論者と唯物論者のふりをして、どうせ外国人が大和魂を誤解したり貶したりしたら怒るでしょう?じゃ実験しようか?Ymatodamashi is suck。どう?イラっときた?
そういえば本作の感想を色々漁るなかで、エンドロール後、原作と製作総指揮の大川隆法氏が映画を見に来てくれたもののふの皆さんに愛国剣法を伝授するそうだ。俺は愛国心が足りずしびれを切らしてエンドロールに入った途端シアターを出たので見れなかった。感想を書いた人によると大川隆法氏は奇声をあげてへなちょこ剣法を披露したそうだが、そこはへなちょこって言わないであげて。だってほら、演劇や撮影のためにカッコ良さと派手さを追求する殺陣と実戦的な剣法は全く違うものではないか。だから少々ダサく見えるのも仕方ないって。しかし奇声をあげてへなちょこな剣を振るうおじさんか……想像するだけで面白い。見たかったぜ。BD買って愛国しようかな。AmazonでBDを買うためのサポート、お願いします。