【シン・推し活】オタクが推しを宣伝する時代の正しさと困惑について
「推し活」や「オタ活」という言葉が商業的に使われるようになってから、ずいぶん経ちました。CDを買うとか、イベントに参加するとかそういった行為を指していたはずの「推し活」も、今では多様化しています。
その1つに、実費で推しの宣伝活動をするオタクが増えています。
もともと韓国では、「宣伝の代わりになるから」とライブ中や空港内での撮影が“暗黙の了解”で見過ごされている部分がありました。そして、そこで撮られた写真を交通広告や自作グッズに使用することも、かなり前から一般的でした。
今日は、「推しの宣伝」の変遷を辿りながら、アイドルオタク系YouTuber 兼 広告業界で広報をつとめるぼくが、勝手に感心したり心配したりしたいと思います。
STEP1:サイン会動画を投稿するオタク
韓国では、サイン会の様子を撮影することが可能です。多くの動画は、音声がオフになっており、オタク側が会話の内容を字幕で分かるようにしています。
時には露骨に嫌な顔をしている推しの動画もあるのですが、それはそれで“人間味”を感じられて見入っちゃいます。ぼくもこういったサイン会動画をきっかけに当時BTSにハマりました。
▼詳しい詳細は下記動画を見てください。
サイン会動画での対応の良さをきかっけに、そのグループを知るファンも多いため、最近では日本でも導入され始めています。サイン会動画がTikTokでバズると、「この方は誰ですか?」というコメントもいくつか付き、推しを知らない人にもリーチできるわけです。TikTokの登場により、フォロワーが多くない方でもバズれるようになったことは大きいですよね。
ただ。どこを切り抜かれてもいいように、ずっと笑顔をキープしなくてはいけなかったり、過度な要求を拒否できない子もいたりと、推し側の負担は大きそうです。特典会の映像が、ある種の“証拠映像”になってしまうわけですから。
STEP2:推しで埋め尽くしたカフェを開店するオタク
センイルカフェ(センイルは誕生日の意)を開催するファンもいます。
推しの写真が印刷されたカップホルダー(スリーブ)を作成して、カフェに納品する形式が一般的で、そのカップホルダーほしさに行列ができるカフェもあります。
更にお金をかけるオタクは、カフェを1店舗貸し切って店舗内を推しの写真で埋め尽くします。自作のグッズや大量に購入しすぎたCDを無料で配布したりするのですが、中には店舗と一緒にオリジナルメニューを開発して販売するオタクも。コラボカフェさながらです。
基本的には同じファンダム内に向けて実施している印象があるのですが、本来は何も知らずにカフェに来た方に宣伝にすることが目的です。
▼詳しい詳細は下記動画を見てください。
STEP3:推しの交通広告を出すオタク
駅などに推しの公告を出す文化も韓国から来ています。多くの場合は、複数のオタクが1口1,000円~などお金を出し合って広告枠を買い取るので、広告の隅を見ると大量の名前がクレジットされています。
面白いのは、企画から制作や入金の過程で、ファン同士が一度も顔を合わせないパターンがあることです。とくに日本では、個人で広告を出すことにまだハードルがあるため、ファンが団体組織を作る必要があるのですが、SNS上で仲間を集い、LINEなどのオープンチャットで連絡を取り合い、集金はPayPayを利用という完璧な連携を繰り広げます。
広告の種類は様々で、大きいポスターの場合もあれば動画の場合もあり、新宿アルタのビジョンやニューヨーク・タイムスで流すオタクも。あ、アドトラックを走らせているオタクもいました。
公告は推しが見に来てくれることも?
実際に掲載された広告やセンイルカフェには、オタクだけでなく推しが見に来てくることがあります。なんなら、推しの親がわんこの散歩がてら観に来ることもありました。
至るところにある広告やカフェを半日かけて全て回り、SNSに写真を投稿してくれる推しもいます。
逆に、推しが見に行きやすいように事務所やレッスン室の近くに広告を出すオタクも多いので、事務所近くのバス停広告は日本・韓国・中国のオタク同士で取り合いになっています。
▼韓国では、広告の前でちょっとした撮影会が発生していました。
ただ。韓国では、メッセージを書いたポイ(ポストイットの略)を広告に貼る文化があり、一部では問題視する声も上がっています。推し自らが貼ってくれることもあるのですが、あまりにも人気だとポイが広告枠からはみ出たり、集合体恐怖症にはキツい見た目になったりするからです(検索する際は要注意)。
推しの交通広告が過熱化した理由
一般化した理由の1つに、「PRODUCE 101 JAPAN(通称 日プ)」という、101人の参加者から、ファン(国民プロデューサーと言う)の投票で11人を選ぶオーディション番組の影響が考えられます。
放送期間中にオタクたちはSNSを駆使して投票を呼びかけるため、同じクラスの子や親だけでなく、元バイト先や元恋人にまで投票の依頼をするオタクが現れるほどです。
番組自体が、韓国発だったため、既に韓国で行われいた広告文化がそのまま流入され、主要都市の駅だけでなく、推しの出身地や学生時代に使っていた駅に広告を出すオタクもいました。
▼公式側が素材の提供も行っています。
番組が終了したあとも応援広告の文化は残っています。推しの誕生日とライブの開催日が近いときは、最寄り駅からライブ会場までの道のりに広告が掲載されています。
伸長する屋外広告市場
「日経クロストレンド」さまの記事で、OOH広告(OOH=Out-of-home advertisingの略で、屋外広告の意味)が伸びているという文章を発見!
▼以下より引用
企業が出す推しの広告もこれからどんどん増えそうですね!
▼推しが広告に起用されたときにオタクがやるべきことはコチラを参照
ちなみに。累計100万部を突破している漫画「多聞くん今どっち!?(白泉社)」では、主人公がアイドルということもあり、応援広告を模した広告が公式側から出されました。
(実は、ぼくが2巻の帯コメントを担当しています✌)
宣伝になっていない(?)宣伝
広告を出す本来の理由は「推しの宣伝」です。企業が広告を出す場合は、掲載期間内で売上が伸びたのか? 検索数は上がったのか? 公式サイトの来訪者数やSNSのフォロワー数は増えたのか? と様々な指標で広告施策の評価を行います。
しかし、オタクは広告を出すことが最大の目的でありゴールなので、宣伝効果があったかは気にしない方も多いです。むしろ、広告を出せる財力を見せつけるマウント要素になることも。トラブルになりたくないという思いから広告を出した知人は、自分が出したことを推し以外には言わなかったそうです。
さらに、運営側の視点で見ると、本来運営やアイドル側に入るはずだったお金が広告に消えてしまうので、本当に意味があるのか? は考えなくてはなりません。
形はやや変わりますが。
推しのお誕生日にデカいフラワースタンドを会場に飾る界隈もあるのですが、オタク間でのマウント合戦になることや、本来運営に流れるはずのお金が外部に使われること、オタク同士の金銭トラブルの観点などから禁止にする界隈も増えてきています。
また、企業が出す広告の中には、イシュー(社会課題)を捉えた斬新なクリエイティブやコピーが話題になって、SNS上で拡散され、認知向上や売上につながる事例もありますが、オタクが作れる・作っていい範囲には(そもそも使える素材的にも)限界があるため、やはり外に向けた宣伝というよりかは「ファン同士が楽しみ合うもの」といった印象が強いです。
今後、応援広告に関しても、規制や新たなガイドラインが設けられるかもしれません。「推しは推せるうちに推せ!」なんて標語もよく見かけますが、「推しの広告は出せるうちに出せ!」ですね。ただ、応援広告を謳った詐欺も多いので、くれぐれもみなさん注意してください!
それでは、みなさんも推しと推しあわせに~!
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