君たちは明日から二度と皮肉を言うことができなくなってしまう
君たちは
明日から二度と
皮肉を言うことができなくなってしまう
その呪いの起源は中国は夏王朝の時代まで遡る
夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないある道士が
「皮肉」という人類史とともに歩んできたとも言える偉大なるレトリックを憎み飽き飽きたのだった
怒りに任せて放たれた皮肉というもののなんと愚かしいこと
何が愚かしいって大抵全然面白くないのにみんな言ってやったって感じになってるってこと
そしてその愚かしさを嘆き怒りを鎮めたまえなどとのたもう者のなお愚かしいこと
何が愚かしいってそいつはお前みたいなやつにこそ怒ってるんだってえの
しからば夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないその道士
皮肉というものが一つ世にこぼれるたびに
天を衝く塔の上に置かれた大釜の中に
小豆が一粒こぼれるようにまじないを込めた
小豆が大釜になみなみあふれるころには大釜はその重みに耐えかねバラバラに割れて
空からは腐った小豆が降り注ぎ
世界は腐った小豆まみれになってしまうだろう
どうしてそんな迂遠なまじないにしたのかはよくわからんが
それもやつなりの皮肉だったのかもしれないね
全然面白くないし
で
おれは今朝方その大釜を見に行って
釜になみなみと溜まった腐った小豆を見たよ
明日にはこの大釜はバラバラに割れて
世界は腐った小豆まみれになってしまうんだなと思ったよ
その足でおれはここに来たよ
大人の喧嘩をする君たち それを見て手を叩く君たち
かつて賢かった君たち かつて賢かった君たちをバカにしていた君たち
賢いので先回りで嫌味をいう君たちと影で君たちの嫌味を言うもっと賢い君たちと
日向で君たちの嫌味を言うもっともっと賢い君たち
そして本当は最初からバカだったおれたち
呪いは明日成就するのだ!
君たちがこの世界を腐った小豆まみれにしたければ
世界最後の日のために最高の皮肉を考えておくんだな
そして君たちがこの世界を腐った小豆まみれにしたくなければ
君たちは明日から二度と皮肉を言うことをやめて...
いや君たちがこんな話を信じるとは思えないから
やはりこの世界は明日腐った小豆まみれになるんだろう
やっぱりこの世界は皮肉な最後を迎えるってことになるんだろう
ということはつまり
どちらにしたってつまり
君たちは明日から二度と...
(2018年8月19日 ポエトリースラムジャパン2018東京Bのために)