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No.10|自転車の走行環境

 今回は趣味でもある自転車に関するノート。写真は出張中に撮影したミラノの自転車レーン。

1.私の自転車通勤

 3月26日以降は一度も公共交通を利用していない。大学の授業や会議が原則オンライン化され、出張がなくなり、学外の会議も延期またはオンライン化されたため、自宅勤務中心生活を送っている。もともとCOVID-19パンデミック前から週1〜2回は自転車で通勤していたので、6月に入って週1〜2回ほど必要があって大学に行くときは、悪天候でもWORKMANの透湿レインスーツ・ストレッチを着て、自転車を利用している。片道約13km・所要時間約40分。徒歩+公共交通で約60分かかることを考えると、健康維持や気分転換の面からも自転車の方が良い。ただし、もともと自転車が好きで(現在、ロード・クロス・街乗り仕様マウンテン・折り畳みの4台を所有)、職場に着替えができて自転車を安全に保管できる個室があるからこそ気軽に自転車通勤できるのかも知れない。

 ところで、国土交通省は、COVID-19の感染リスクを低減するために、鉄道の混雑緩和に向けた呼びかけを行っている。先日、2月25日から6月24日までのピーク時の駅利用状況推移のグラフが発表されたが、これによると、最近の首都圏は呼びかけ前の60-65%程度で推移している。大学の授業のオンライン化も貢献しているのではないかと思う。自転車通勤へのシフトは、実感としては郊外から都心に向かう自転車交通量は増えているが、通勤者総数からすると少ないのではないか。

鉄道利用者の皆様へ(新型コロナウイルス感染症対策の利用者向け情報)

 そもそも週1〜2回の自転車通勤を始めた理由は、運動不足で不健康だったこと、満員の通勤電車が心身ともに苦痛になってきたこと、忙しくて余暇にサイクリングを楽しむことができなかったこと等。東京23区内の自転車走行環境は必ずしも良くないが、道路幅員に余裕があり、アップ&ダウンが許容範囲内で、街路樹・公園・高架構造物などで夏涼しいルートを何パターンが見つけることができた。完全自宅勤務だった4月・5月は、自宅を中心に健康維持・気分転換のためのサイクリングを楽しんだが、多摩湖自転車歩行者道は例外として、公園緑地をつなぐ道路の自転車走行環境の悪さを改めて実感した。

2.東京23区内の自転車走行環境

 しかし、おそらく2017年5月に自転車活用推進法が施行された頃から、東京23区内の自転車走行環境は格段に改善されている。また、今後については、自転車活用推進本部が「新しい生活様式」を踏まえた国の取組と、企業の皆様、自転車通勤をされる皆様へのお願い」において、東京23区内を中心に自転車専用通行帯等を整備推進することを説明している。サイクリストにとっては嬉しい取り組みだ。

 ただ、道路幅員は限られているので、どうしてもバスやサービス車両との折り合いは難しく、なかなかスムーズな自転車走行環境は実現できない。やはり、サイクリストと(自動車の)ドライバーとのコミュニケーションは不可欠で、安全確認や合図は重要。大型車の常時バックモニター、高級車のドアミラーについている後側方センサー、カーナビ画面に映るアラウンドビュー等は、実はサイクリストにとっても、ドライバーが自分に気づいている(はずだ)と認識できるので有難い。ここでも、物的環境の整備+人間の判断+スマート技術によるサポートの組み合わせが重要。

「新しい生活様式」を踏まえた国の取組と、企業の皆様、自転車通勤をされる皆様へのお願い

3.海外都市の取り組み(リンク)

 さて、海外の都市に目を向けると、COVID-19パンデミックを機会に、自転車道の整備が急速に進んでいるように見える。ニューヨークでは東京23区よりも少し広い5区で、パリでは東京・神奈川・千葉・埼玉よりも少し狭いイル・ド・フランス地域圏の自転車道の整備が提案されている。こうした取り組みは、もともとあった環境政策(二酸化炭素排出削減、大気汚染の改善等)を背景に、COVID-19パンデミックを契機とした公共交通から自家用車へのシフトを抑制しようとするものであると理解できる。詳細は以下のリンク先をご覧いただきたいが、全体ネットワークの計画と細部のデザインに注目したい。

The Five Borough Bikeway: Critical infrastructure connecting New York City

自転車道ネットワークで鉄道網をカバー、パリで愛好家の計画を実行へ

Milan announces ambitious scheme to reduce car use after lockdown

4.おわりに

 COVID-19パンデミックからのグリーン・リカバリーの1つとして、自転車走行環境の整備が脚光を浴びているが、職場その他行き先の着替え・自転車置き場など建物内の環境整備、サイクリストの交通ルールの遵守(赤信号を平気で突破する人が多過ぎ)、バス・サービス車両・これから普及するであろう小型モビリティとの折り合い、沿道の緑環境の整備を含む夏の暑熱対策など、関連して検討したいことが多い。

追記:マドリッドモデル

Is it Time for the U.S. to Try the ‘Madrid Model’ of Vehicular Cycling Infrastructure?

 自転車走行環境の「マドリッド・モデル」の解説。自転車「専用」レーンのネットワークを形成する「アムステルダム・モデル」とは異なり、(1)自転車、スクーターなど30km/h以下で走行する乗り物が既存の車道に設定された「低速レーン」を「シェア」すること、(2)低速レーンを歩道のすぐ横に設置するのではなく、より高速の自動車レーンで両方から挟むこと、がポイントだと言う。
 東京では、(2)は片側3車線以上の道路でしかできないので限定的だが、特にこれから様々な乗り物が登場するとなると、片側2車線の道路では(1)を検討しても良いかも知れない。
 朝夕の東京の道路の多くでは、自動車も30km/h以下で走っているので既にシェアしている状態とも言えるが、ひとたび40〜50km/hで走行できるようになると自転車は邪魔者扱いされてしまうので、やはり30km/h制限とそれを遵守する姿勢があると良さそう。
 東京の朝の時間帯はバス専用レーンが(1)の状態に近いが、バスは頻繁に停車するし、サービス車両が停車しているので、自転車では走りにくい。やはり(2)は魅力的、と下記のブログに掲載されている動画を観て思った。

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